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■エピソード4「襲い来る不安感と、襲い来る『ネットの悪意たち』」

「家族は全員、無事だった。延焼も無かった。それだけで幸運じゃないか。」何度も、そう思い込もうとしていました。……しかし、ぼく個人で失ったものが、余りにも多過ぎた。

混乱していた頭が徐々に整理されて来ると、次に襲い掛かってきたのは、強烈な罪悪感と自己嫌悪と喪失感でした。不眠と欠食続きで気が狂いそうになり、「このままでは圧し潰されてしまう」と、心療内科の予約を入れ、カウンセリングを受けて精神安定剤を処方して貰いました。
……しかし、処方された薬を飲んでもトラウマは治らず、日が落ちて来ると強烈な不安感に襲われ、普段見ないテレビを点けてもバラエティ番組から流れる「燃えるー!」「お前が悪いんや!」等の単語にビクッと反応してしまい、不安感がフラッシュバックして相変わらず、拒食と不眠の日々が続く事になります。
「ああ……睡眠剤、処方して貰えば良かったな……」と思いつつ、不安を紛らわせる為にホテルの自販機でストロングゼロを買い、無理やり意識を混濁させて気絶するように眠りに就くも、それでも睡眠時間は、良くて4時間でした。そして相変わらず食欲はゼロ。買い貯めたブラックコーヒーを煽り、フォロワーさんから送って頂いた差し入れのカップラーメンを1日1食流し込むのが精一杯でした。こんな日が続く中、ホテルの部屋に映ったぼく自身の姿を見て、ギョッとしました。髪の毛は明らかに薄くなり、ゲッソリと痩せこけて目の下は隈だらけ。完全にノイローゼ状態なのが自分の目で確認出来た事に、よりショックを受けました。

不安の種は、もう一つあり。ただでさえカツカツで生きている経済状況の中で、ホテル暮らしをしている事で大量に出ていくお金達。貯金の残高は限界に達しようとしていました。「この先どころか、今現在、すぐに破綻してしまう。金銭的にも、精神的にも。」ちなみにネット通信手段は、たまたま持っていたスマホだけ。絶望に打ちひしがれていた時、SNSで知り合った「仲間たち」数人と連絡が取れました。何でも話せる、気の置けない仲間たちだったので、電話で現在の状況を伝えると「それ、一大事じゃないですか!! このままじゃ、みぐぞうさん死にますよ!!」と驚かれ、「すぐさま支援のプランを立てます! 一度、電話切りますね!」と言われ、仲間たちはクラウドファンディングを考えるも、クラウドファンディングは詳細な目的と目標額、リターン(返礼品)が必要な上に審査が厳しく、加えて、結構な額の手数料を差し引かれる事がネックとなりました……。それに何より、着の身着のままで焼け出され、通信手段はスマホのみの状態で、そんな悠長な事なんて、とても出来ませんでした。

そこで友人たちが考案した次のプランは「もう、こうなったら、みぐぞうさんの大ピンチの状態を今すぐ救うには、恥も外聞も無く、ありのままの現在の状況とカンパ口座をツイッターにアップして、支援してもらうしか無いですよ!!」と言われ、「……けど、個人情報を出してカンパを募るなんて、気が進まないなあ……」と渋っていると「じゃあ、このままだと餓死かノイローゼで自殺ですよ!? 名誉と命、どっちが大切なんですか!? これから家族を養っていかなくちゃいけないのに!!」と強く言われ、必死にスマホで「カンパツイート」を投稿しました。一抹の不安を感じながら……。
そして、いつもの眠れない夜が明けました。夜中中スマホの通知音が鳴りっぱなしでした。いわゆる「バズッている」状態でした。通知すら追いきれなかったのでリプライのみを表示してみると、励ましの声を沢山頂いていたのですが、その中には予想していた通り「非難の声」がチラホラと紛れて来るようになりました。避難の内容は「子供の写真を使ってカンパを呼びかける神経を疑う!」「カンパを呼び掛けるなら、被害総額と使途詳細と返礼の詳細ぐらい書け!」といったものから、酷いものになると「焼け太りの豚w」「乞食w」「ざまぁw」「飯がうまいw」といった誹謗中傷がガンガン飛び込んで来ました……。ほら、こうなる事は薄々予測出来ていたんだよ……。その罵倒の数々は、ぼくをより不眠・拒食へと追いやりました……。

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