[DET]躍進のシーズンを振り返る〜捕手・内野手編〜
ご無沙汰しております。ロックアウトに入りMLBの話題もすっかり減ってしまいましたが、引き続き2021年の選手たちの活躍を振り返っていきたいと思います。今回は捕手・内野手編です。少し長くなってしまいましたが、読んで頂けると嬉しいです。
エリック・ハース
CLEでは毎年マイナーで優秀な成績を残すも、ヤン・ゴームズ、ロベルト・ペレスという高い壁に阻まれてメジャーではほとんど出場機会を与えられず。昨年加入したタイガースでも僅か7試合の出場で、オフにDFAとなって3Aに送られていた。
開幕後もしばらくはマイナー暮らしだったが、5月に昇格すると長打を連発。怪我もあり98試合の出場に留まったが、チーム2位タイの22本塁打を記録し、無名の存在から一気にブレイクした。ランニング3ランやマエケンの勝ちを消す同点グランドスラムなど、印象に残る一打も多かった。
打球角度やハードヒット率も優秀で、平均以上の走力も備えているが、何でもかんでも振り回すスタイルのため出塁率は壊滅的であり、改善必須。
守備にはやや難があり、フルシーズン戦う体力も疑問視されているため、来年はトレードで加わったタッカー・バーンハートとの併用が見込まれている。
↑また、こちらの記事に詳しく書いてあったが、ラプソードなど最新鋭の機器を練習に用いて投手王国を築いていたCLEと、そのようなものを使わず原始的な練習を続けていたDETとの違いにカルチャーショックを受け、首脳陣やフロントにデータの重要性を説き、投手練習の改革を進めてくれていたらしい。ファンとしては本当に頭が上がらない存在であり、昨年DFAになったとき彼をクレームする球団が現れなくて本当によかったと思う。
ジェイク・ロジャース
生え抜き大エースのジャスティン・バーランダーとのトレードでHOUからやってきたプロスペクトの一人。
デビュー当時は守備は高評価ながら打撃がお話にならなかったが、今年は長打率が飛躍的に向上し、少ない試合数ながらOPSは.800を超えた。彼もまた出塁率に難があり、今年からタイガースに「低打率・低出塁率・高長打率」の捕手を育成するメソッドが確立されたのかもしれない。肩も強く、座ったまま二盗を刺す場面もあった。
ハースと併用される形が続いていたが、9月に右肘を痛めてトミー・ジョン手術を受け、シーズン終了となってしまった。来年はシーズンの大半を欠場・もしくは全休が予想されている。
少しずつではあるものの着実に成長を見せているが、バーランダーの見返りとしてはあまりにも物足りなさすぎるのが辛い。
ダスティン・ガーノー
昨年オフにマイナー契約したが7月に一度リリースされ、COLとマイナー契約。その後、8月にハースとロジャースが共に故障離脱という緊急事態が起こったため金銭トレードで出戻りし、即昇格してスタメン起用された。前述の2人と同様四球を全く選べなかったが、わずか20試合ながら長打率.581を記録。少ない打席数でキャリアハイの6本塁打を記録するなど印象的な活躍を見せ、来年の契約を勝ち取った。
グレイソン・グレイナー
アマチュア時代は大学野球アメリカ代表に選ばれるなどエリートだったが、メジャーでは強打者なら許される守備と、守備固めでも許されない打撃を併せ持つ控え捕手に成り果ててしまった。今年は打撃が僅かながら改善されたが、ハースとロジャースより優先して使うほどのものではなく、マイナーへ降格。終盤に両者が怪我で離脱という絶好のチャンスが訪れ再昇格したが、ここでもスタメンの座を新加入のガーノーに奪われた。オフに前述のようにバーンハートが加入し、それに弾き出される形でリリースされた。
ウィルソン・ラモス
2度のオールスター出場やシルバースラッガー賞受賞など実績はあるものの近年は不振で、単年$2Mの格安契約で加入した。
開幕当初は正捕手として起用され、最初の9試合で6本塁打を記録したが、その後は完全に当たりが止まってしまった。背中の怪我による離脱や、元々の守備難も相まって徐々にフェードアウトし、6月にDFAとなってリリースされた。この後同地区のCLEに拾われたが、8月末の試合で守備の際に左膝前十字靭帯を断裂してシーズン終了。不振と怪我に苦しめられ悪夢のような一年となってしまった。
ミゲル・カブレラ
ミギーの愛称で知られる言わずと知れた大打者。加齢による衰えと年々増していく右膝の痛みに苦しめられ、4〜5月は打率.184と不振だったが、徐々に復調し、6月以降は打率.286と持ち直した。そして、8月22日のTOR戦にて史上28人目、ベネズエラ出身選手としては初となる通算500本塁打の大記録を達成。500本塁打クラブの仲間入りを果たし、名だたるレジェンドたちからも祝福された。
9月には試合を跨いで9打席連続安打を記録するなど全盛期さながらのヒットメーカーぶりを発揮する場面もあり、最終的にはなんとか打率.250、OPS.700をクリア。キャリアで初めてbWAR、fWARが共に−となるなど、全盛期を知っているファンからすれば悲しい成績ではあるが、チーム2位の75打点を記録するなど、38歳という年齢を考えれば十分貢献してくれたと言えるだろう。来年は達成間近となっている通算3000本安打 (残り13本) に加え、昇格が予定されている未来の主砲候補スペンサー・トーケルソンとの競演にも期待したい。なお、引退については今年8月に「あと2年 (2023年まで) は現役を続ける予定」と発表している。
日本の至宝大谷翔平がお気に入りのようで、試合中にしばしばちょっかいをかけている姿が見られた。
ジョナサン・スコープ
在籍2年目の今年はキャリアで一度も守ったことがない一塁へコンバートされた。相変わらず出塁率は低かったが、今年も持ち前のパワーを発揮してポイントゲッターとして活躍し、特に6月はゾーンに入ったかの如く打ちまくった。安価な単年契約のためトレード候補とされていたが、本人の強い希望もあり残留した。その後、TDLから数日後に2年$15M (22年オフにオプトアウト可能) で契約延長。前述のように本人が強く残留を望んだ事、ヒンチ監督やアビラGMが彼のリーダーシップを高く評価していたことが決め手となったらしい。
契約延長時の取材で記者に「FAになって他球団と交渉することは考えなかったのか」と問われた際には「スコット (代理人) にはここに残りたいと伝えたよ。これ (契約延長) が俺のやりたかった事なんだ。今すぐできるのに、なぜオフシーズンまで待つ必要があるんだ?」と答えており、今の環境をかなり気に入っている様子でファンとしても嬉しい限り。後半戦は疲れからか長打が激減してしまったが、最終的には打率、安打、打点でチームトップだった。来年も打線の中核として期待したい。
レナート・ヌニェス
マイナー契約で加入。31本塁打を記録した2019年並の活躍を期待していたが、4月に昇格するも不振で同月中に早々とDFAになり、3Aへ降格。8月に再び昇格したが、ここでも結果を残せずDFAとなってリリースされた (正直もう少し様子を見てもよかった気がするが) 。3Aでは中軸として活躍していたが、スコープの一塁コンバートにより昇格する機会が大幅に減ってしまったのが悔やまれる。その後、オフに日本ハムと契約。昨年のブランドン・ディクソン (楽天) に続き、2年連続でタイガースからNPB助っ人が誕生した。
ジェイマー・キャンデラリオ
長年伸び悩んでいたが、昨年に短縮シーズンとはいえようやくブレイクすると、今年も安定した成績を残して三塁のレギュラーを完全に手中に収めた。
6月に身内の不幸があり一度ドミニカへ帰国したが、それ以外はほぼフル出場。主に5番を任され、リーグトップとなる42本の二塁打を記録した。コンタクト能力や出塁率も高水準で、bWAR、fWARは共にチームトップだった。ただし守備範囲の狭さはリーグワーストクラスであり、16本塁打という数字もやはり物足りない (キャリアハイは2018年の19本) 。在籍年数もミギーに次いでチーム2番目の長さとなり、来年はチームリーダーとしてさらなる躍進を期待したい。
イサーク・パレデス
去年デビューし、今年の開幕前はMLB.comのプロスペクトランキングにて球団内6位にランクインしていた。
本職は三塁だが、メジャーではキャンデラリオがレギュラーに定着していたため、経験の浅い二塁を守った。これが攻守共にリズムを狂わせてしまったようで、メジャーに定着できず23試合の出場に留まった。とはいえ三塁守備は高評価で、選球眼も優秀であるなどポジティブな要素も少なくない。プロスペクトランキングからは除外されたが、来年で23歳とまだ若く、伸び代はありそう。今後は二塁守備に適応できるかが鍵となる。
ニコ・グッドラム
二遊間ドングリーズの総帥で、ミギーの球団史に残る畜生発言の被害者でもある。2018年に16本塁打を放ってプチブレイクしたが、それをピークに成績は下降。今年も攻守ともに粗さが目立ち、昨年のMVPホセ・アブレイユと乱闘未遂を引き起こしたのが数少ないハイライトとなった (動画0:39〜) 。
オフのノンテンダー筆頭候補とされていたが、その前にマイナー降格となり、これを拒んでリリースされた。成績面では中々結果が出なかったが、ミシガン州で水害が起こった際には自ら被災地に出向いて大量の支援物資を寄付したり、毎年オフに地元で野球教室を開くなど素晴らしい人格者であり、今後も応援していきたい。足は速く複数ポジションをこなせるので、バックアップ要員としては意外と需要はありそう。
ウィリ・カストロ
現ロッテのレオニス・マーティンとのトレードでCLEから獲得した小兵で、前述のグッドラムとプレースタイルが酷似している (顔もそっくり) 。
ルーキー資格を持っていた昨年は異様に高いBABIPの力を借りて規定未到達ながら.349の高打率を残したが、今年はBABIPの魔法が解け、見事に化けの皮が剥がれてしまった。打撃も守備も散々だったが、特にパワーレスが深刻で、昨年は140打席で6本塁打だったが、今年はその3倍以上の450打席を与えられたにも関わらず、9本塁打と微増にすぎなかった。この後紹介する2人にも言えることだが、オフにFAでスーパースターのハビアー・バエズが加入したため、今後は控えに回されることがほぼ確定。守備を磨いてバックアップとして貢献してほしい。
ディスってばかりも悪いので一応活躍したシーンも。実は今年大谷からホームランを放っている。
ハロルド・カストロ
もう一人のカストロで、こちらは二遊間メインにしつつ、一応内外野全般を守れる (ただし足が遅く、守備力は平均以下) 。
今年は主に二塁でW・カストロと併用された。コンタクト能力は優秀だったが、同時にリーグ最悪レベルの選球眼も併せ持ち、打率.283に対し出塁率はたったの.310。率を残せるという点は魅力的だが、それ以外がお粗末なため貢献度は低かった。
ザック・ショート
今年メジャーデビューし、「ショートを守るショート」として少し話題になった。マイナー時代から高評価だった守備はまずまずだったが、打撃は確実性が異様に低く、とにかくバットに当たらない。既に若手とは呼べない年齢であり、打撃を改善しないとこの先のキャリアはかなり厳しそう。
画像引用元
最後に
今回は捕手と内野手の活躍をまとめてみました。二遊間組の伸び悩みは残念でしたが、ミギーの大記録達成や無名だったハースのブレイク、キャンデラリオが初めてフルシーズン戦力になれたりと、比較的明るい話題が多かった印象です。次回は外野手編、もしくはオフの動きについての記事が書ければいいかなと思っています。
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