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これが私の生き様

This is myそば style

夜8時過ぎ、私は上野駅の新幹線口から一番近いであろう、そば屋に向かう。
途中の弁当店や少し先に見えるお洒落なカフェなどは無視だ。
これは戦いである。
NewDaysなんかに入ろうものなら間違いなくチョコレートを買ってしまうだろう。これがどういう事か分かるか?そう、必ずコーヒーも欲しくなり、いつのまにか両手にハッピーセットが出来上がってしまうのだ。そうなったら私の負けは確定だ。
鍛え上げた己のメンタルに守られて、そば屋に到着する。すると店の外にあるタッチパネル式の券売機の前で悩んでいるサラリーマン風の男性がいた。
ええい!どけ!とは言えず彼がカレーセットの食券を満足そうに手に入れるのを見守る。欲張りさんめ。
ようやく私も券売機の前に立つ。そして迷う事なく『かけそば290円』をタッチ。かけそばのボタンの場所を完璧に把握しているからこそできる芸当である。支払いはもちろんモバイルSuicaだ。すかさずiPhoneをピッとかざし食券をとる。
店内へ入り、人の良さそなうな店員に食券を渡しつつハッキリと告げる。「そばでお願いします」と。ここは大事なポイントだ。声がボソッとなってしまうと「うどんですか?」と聞き返される。そうすると不思議とうどんでもいいような気がきてしまう。だが、それでは駄目なのだ。なぜなら私はそばを食べきたのだから。余計な気持ちを抱かないためにも一言の注文で済ませるのがスマートだ。
生死を分けるような気持ちで注文を終えた私はセルフサービスの水を一口飲みそばを待つ。先ほどのサラリーマンがカレーを受けとっているのを真顔で眺める。1分ほど経ち遂に「かけそばのお客様」と呼ばれた。一瞬返事をしそうになったが、さきほどのカレーの客のものだった。セットなんか頼むなよ。欲張りさんめ。
おそらく注文してから、そばを受け取るまでが最短1分。かけそばだからなおさら早い。
ついに、わたしのそばも出来上がり、受け取るとすぐさま後ろの席に場所をとる。七味唐辛子を10回くらいふりかけ箸を手にとり手を合わせる。「いただきます」立ち食いそばでも食事のマナーは怠らない。それがプロというものだろう?
ここまで来れば私の勝利は確実だ。無心でそばをすするのみ。表情ひとつ変えずにすするのだ。気づいたら食べ終わっている。めんつゆは飲まない。
ここは立ち食いそば。長居は無用。器を返却口に返しつつ店員さんに「ごちそうさまでした」を言い、颯爽と店を後にする。

戦いは終わった。あとは電車に乗り帰路につくのみだ。ありがとう。これが私の生き様だ。