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20世紀のインターネットとインターネット的なもの回顧

これは、昭和真っ最中に生まれた人が、昔のネットを懐かしむだけの記事です。


月ノ美兎の配信「あなたのインターネットはどこから?」を見て感じた違和感

いまさら4年前の配信の話になるのですが、VTuber月ノ美兎の配信「あなたのインターネットはどこから?」を見ました。

ここで紹介されていたサイトが次のサイトになります。

どれもあんまりピンと来ないぞ?そう、これは全部ゼロ年代または10年代に流行ったサイトばかりです。月ノ美兎は女子高生(という設定)であり、インターネットを始めたのが21世紀に入ってからであるのに対し、私は昭和真っ最中の産まれで初めてインターネットに触れたのは20世紀。世代が違うのです。

たとえば「ニコニコ動画」について書いてみます。KADOKAWAがサイバー攻撃を受けた影響でニコニコ動画が縮小運営になり、期間限定でゼロ年代後半に流行った動画しか見られなくなったりした際には、かつてリアルタイムで動画を見ていた人が集まって懐かしむという場面も見られたようです。

豪血寺一族。今見ると何だこりゃという動画ですが、当時はものすごい人気だったのです。

こちらは東方Project最盛期の動画。といいつつ、私は東方をほとんどよく知らないのですが…。この動画も、あっという間にネット上で広まったような記憶があります。アイン、ツヴァイ、グーテンモルゲン。

ただ、これらはすべて、月ノ美兎世代の方々にとっては「初めてのインターネット」に近い体験のはずなのですが、私にとっては全く「初めて」ではないのです。

世の中の「インターネット老人会」で語られるのは主にゼロ年代に関することが多く、それ以前のインターネットについて触れられる機会はぐっと減ってしまうように思います。私自身はインターネット古参を主張するつもりは全然なく、極めてライトなネットユーザーだと思っているのですが、あまりネット上で語られることのない前世紀のインターネットの思い出を少しだけ書き残しておこうと思います。

私にとっての唯一の入り口:ahoo! ナビゲーター

私が初めてインターネットに触れたのは、1996年のことでした。大学の共用PC(UNIX)でMOSAICと呼ばれるブラウザを使って所属していた大学のホームページを見たのを覚えています。
しかし、あのころはまだGoogleは日本でサービス開始しておらず、面白そうなページを見つけることが極めて困難でした。大学の回線も貧弱で、ちょっとした画像を読み込もうとするとすぐに「stalled」とかいうメッセージが現れて、そこから全く動かなくなった覚えがあります。

そのため、私にはインターネットの面白さがよくわからないままで、唯一友人から教えてもらった「ahoo! ナビゲーター」というページ(リンク集)を頼りに面白そうなページを探し回るくらいしかできませんでした。
(さすがにページがなくなっていたので、internet archiveにリンクを貼っておきます)

98年8月4日に更新すると予告されていましたが、この後二度と更新されることはありませんでした

いくつか、当時見て回って面白いと思ったサイトを紹介します。(ほとんど全部オリジナルのサイトは消滅しているので、Internet Archiveになりますが)

インターネット・バベルの塔

ahoo!ナビゲーターからのリンクはほとんどが消滅していますが、唯一生き残っているのがインターネット・バベルの塔。アクセスされるたびにビルの階が1個ずつ増えていくというページです。しかし、現時点では何度リロードしても25035階から増えないので、おそらくはもう死んでしまっているのでしょう。

「住専処理に血税を使うの反対」というのが時代を感じます

手動サーチエンジンはやぶさ

繰り返しになりますが、当時はGoogleなんてものもなかったので、情報を検索すること自体が非常に困難でした。そこで登場したのが手動サーチエンジン。検索したい内容を入力すると、はやぶさの中の人が手動でいろいろ探して回答してくれるというものです。
もちろん、これはジョークサイトなのですが、Google以前の世界でしか通じないジョークでもありました。

末期には回答までに要する時間が年単位となってしまい、完全に崩壊していました

奥様冷蔵庫バトル

これは冷蔵庫の中の汚さを争うという企画です。
ガラケーで撮影した写真の画質に時代を感じます。あの当時はこうした投稿型のサイトが人気でした。画像アップローダーなんてものはないので、みなさんメールで画像をやりとりして、サイト運営者が手動で頑張って貼り付けていたのです。

画質に時代を感じます

うしろ向き泳ぎ入門、ペットフードのおいしい調理法

当時の個人サイト(あのころはホームページと言いました)には、こうした一点突破型の豆知識をまとめたものが散見されました。
「うしろ向き泳ぎ入門」「ペットフードのおいしい調理法」いずれも25年以上前に見て以来、試す機会が無いままです。

リンク先を見てみると、たしかに理にかなった泳ぎ方が解説されています。ちょっと試してみたくなります。
こちらは残念ながら画像リンクが全部消えてしまっています。あんまり試したいとは思わないですが。

Google以前の世界における情報検索

Googleが日本に上陸したのは2000年のことでした。これは検索窓に単語を入力すると、本当に検索ワードに関連したページが表示されるという画期的なシステムでした。
それまでも検索サイト(よく「サーチエンジン」という単語が使われました)は存在したのですが、検索ワードと関係のないサイトが大量に表示されるような代物だったのです。
早稲田の学生が開発した千里眼、Yahoo!に買収されたAltavista、東大院生が開発したODIN、NTTがInktomiと呼ばれる米国企業の技術を使って運用したgoo、京大が開発して一瞬だけ話題になった対話型検索サイトmondou…。
このあたりの歴史については、下記サイトがわかりやすいです。

私はこの時代、検索結果として関係ないサイト含めて5000件が表示されたとすると、その5000件を全部見るという恐ろしい力技をやっていました。
これも今では信じがたい話ですが、1999年に「donut」というタブブラウザが発表されるまでは、ブラウザには「タブ」という概念がありませんでした。そのため、ブラウザ一つにつき一つのページしか開くことができなかったのです。しかし、タブブラウザの登場により、5000件の検索結果をたとえば「ctrl+左クリック」で100件ずつページを開いて「ctrl+W」で次々と関係ないページを閉じていくという作業が可能になりました。これは私にとっては革命的な出来事でした。

ISDNにより、電話とネットが同時に使えるようになる

当時の一般家庭でのネット回線は電話と共用であったため、ネット中は電話が使えないという問題がありました。それ以前の話として、インターネット使用時にはわざわざ電話線を電話から引き抜いて、パソコンにつなぎ変えるという作業が必要で、家族に迷惑がかかるためにあまり長い時間ネットができなかったのを覚えています。
私がネットにはまっていくのを見た両親は、当時始まったばかりの「ISDN」サービスを申し込んでくれました。これはとてもありがたかったです。電話回線64kbps、ネット回線64kbpsが同時に使えるという優れものです。これでも当時の一般家庭向けとしては最速のネット回線でした。電話回線ではなくADSLや光ファイバーなどのいわゆる「ブロードバンド」が一般家庭にも普及するのは、21世紀に入ってからだったのです。

私の今のネット環境。980Mbpsくらいなので、ISDN当時の1万倍以上の速度です

インターネット以前の「インターネット的」なもの…アナログ文字放送

そもそも、私が初めてインターネット的なもの、つまりは何らかの通信を使ってインタラクティブに画面に表示されるようなメディアに触れたのは、1990年ごろにアナログ文字放送を見たのが始まりだったような気がします。
アナログ文字放送、ネットで検索してもあまりたくさんの情報が得られないのですが、一つだけ動画を見つけました。

この動画は一切音声がないのですが、簡単なBGMもあったように思います。文字放送対応TVのリモコンの進むボタン、戻るボタンを押すと、ページが遷移できるような仕組みでしたが、実際には通信が遅すぎてほとんど役に立たなかったような気がします。

文字放送では、ニュース、天気予報、株価、スポーツの結果や途中経過、そして地域の催しのお知らせや占いが主だったのですが、個人的にはフジテレビの文字放送で放映されていた「回文こんぶいか」というコーナーが好きでした。
これは視聴者から募集した回分の中で秀逸なものを紹介するという番組です。「珍味!鶏とワニ、ミンチ」とか、そういう回文がずらずらと表示されたのを覚えています。ネットで検索しても全然出てこないのですが…。覚えている方だれかいますでしょうか?

まとめ

20世紀のインターネットの思い出をつらつらを書いてみました。共感していただける方がいるかどうかはよくわからないのですが、結構似たようなネット経歴を持っている方は多いはずだと信じています。
そもそもgifアニメをサイトに貼り付けることすらハードルが高かった時代を思うと、今の動画全盛のネット環境は隔世の感があります。

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