遠雷と翡翠① CREDO QUIA ABSURDUM 3
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チャルノ川へ面した古い倉庫街を照らすのは、月の光と、水面に反射したその破片だけだった。湿度の高い夜の闇には埃と黴、そして海から上ってきた微かな潮の香りが混ざっている。とぷり、とぷりと護岸に打ちつける音は、巨大な両生類が唾液の溜まった口を開け閉めするかのよう。
暗幕のように分厚い夜のしじまを震わせたのは、水平二気筒のドロドロとしたエンジン音と、男たちの甲高い声。サイドカーつきのモーターサイクルたちが、微睡んでいた闇の精霊たちを蹴散らしていく。
若者たちだった。十人