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【たべもの九十九・る】ルッコラ〜遠き異国の食べ物たち

ルッコラってお野菜をご存知ですか?
イタメシ(これはもう死語⁇)ブームが来て、当たり前のように本場イタリアさながらのイタリア料理が食べられるようになった今の日本ではポピュラーな野菜になりましたよね。

ちょっと苦味があって香りの強いルッコラが入るだけでシンプルなグリーンサラダがグッとグレードアップするような感じがします。

私が子供の頃にはなかった異国の野菜たちが、今は本当に溢れています。
タイ料理に欠かせないパクチーも初めて食べた時は強い香りに驚きました。

ロシアの代表的なスープ、ボルシチの赤い色は赤紫色のビーツがなくてはできませんし、空芯菜とか中国野菜もあっという間に日本で市民権を得ていますね。

私の食べることへの飽くなき関心は、父からもらったギフトだと思っています。
食べたことのない料理は、絶対食べてみたいもの。

そんな食いしん坊親子の思い出話をひとつ聞いてください。

時は1991年5月。
当時私は仕事でニューヨークに住んでいました。駐在期間が終わって帰国する前にと、両親がゴールデンウィークを利用してニューヨークに来てくれました。

私も一週間休みをとって両親をおもてなししました。そのうちの一つがオーランド旅行。
フロリダ州のオーランドには、ディズニーワールドほかいくつものテーマパークが集まっていました。
自分が行ってみたいという理由でオーランドに決めたのですが、当時50歳くらいだった両親も初めてのディズニーランドを楽しみ、スペースマウンテンにも果敢に挑戦していました。

宿泊したホテルには、周辺の観光地のパンフレットがいっぱいあり、その中の一つを見て(英語はわからないので写真を見て)父が「ここに行きたい」と言い出しました。

その場所は。

はいここ、ゲーターランド。
ワニ園です。

調べたら、ゲーターランドは今もあって、フロリダの野生動物が見られ、アトラクションもあるなかなかの観光スポットになっているようなのですが、当時は本当にただのワニ園。

園内にたくさんのワニが飼われていて、そこを遊園地によくあるタイプの小さな電車に乗って眺める。
一番の見どころは飼育員がワニに餌を与えるショー。
竿の先に丸ごとの生チキンをぶら下げると池の中からワニがジャンプしてそれを食べるというものでした。

「なぜここに?」と思いましたよ。
そしたらね、パンフレットの裏側にある写真があったのです。なんだと思いますか?

こんな感じ。この画像はネットで探した参考写真。

「ワニの唐揚げ」です。これが食べたいと。

行きましたよ、ゲーターランド。
雲ひとつない青空で、夏のように暑い日でした。子ワニから大ワニまでいろんなワニを見て、餌やりショーを見て、最後にカフェテリアでビールを飲みながらワニの唐揚げを食べました。

ワニの唐揚げは、チキンよりも淡白な味わいでした。
初めての食べ物を前にして目を子供のようにキラキラさせていた父の顔を覚えています。

ガラッガラの園内ではワニと写真が撮れるコーナーがあり、せっかく来たのだからと記念にワニを抱いて写真を撮りました。

と、その時、ワニがオシッコしちゃって父の服が濡れてしまい、私と母は大笑い。スタッフも苦笑しつつ、「sorry」と言って写真代を無料にしてくれました。

結局、ディズニーワールドはじめいろいろなところに行ったのに、そちらの有名どころより、ゲーターランドで過ごした時間とワニの唐揚げが一番記憶に残っているんです。そんなものなのかもしれませんね。

父はルッコラは食べたことあったのかなあ?
この旅行から1年半後に事故で他界してしまったので、たぶんルッコラは食べていない気がする。

私が未知の食べ物に出会い、嬉々としてそれを食べている時、父はふわふわと空気のようにそばにいてそれを楽しそうに見ているかもしれないなあ。

そう思うと、これからもいろんな食べ物に出会って食さねば!

そのためにも心身健康でいないとな、と思う今日この頃です。

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