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雷雨

昨日の夕方から
激しい雷の音がする。
季節が移ろい始めたな。
と嬉しい。


一軒家に住んでいた頃
一晩中雷が鳴り響いた日が
あった。2階では
結核治療を終えて
社会復帰待ちの夫と
うちの2階に下宿していた
弟とその友だちが
夕食後から麻雀に興じて
いた。激しい稲光りと共に
地響きがして 道の前の
電信柱に落雷した。

たちまち暗黒の世界が
広がる。怖いよ~
「おーい。ろうそく持ってきて~」2階から
夫の声がする。
懐中電灯を持ち
ろうそくを持って行く。
「大概にして
麻雀やめたら?ろうそく
立ててやる事かいな?」

全く聞く耳持たない
人達にあきれる。

寝るが一番と寝始めるが
まだまだ雷さまの怒りは
おさまらない。明け方には
さしもの雷雨も収まり
私も爆睡していた。
昼頃に
2階の連中が起き出して
きた。食事の催促が
始まる。
「はいはい準備していますよ」おにぎりとうどんだ。
沢山食べる人達だから、いつも常備菜もある。
弟の友だちは若者らしく颯爽と帰って行った。

朝早くに停電は復旧して
ホッと一息だ。
雷に怯えて
うちの中にいた犬を
散歩に夫が連れ出した。

夕食の準備を始める。
食事だよ~~と弟を
呼ぶと浮かない顔して
降りてきた。
「時計がない」
バイトして
10日前に買ったばかりの
自慢の時計だ。3人で
麻雀していた部屋を中心に
小一時間探した。
やはりなかった。
気弱な弟は、すっかり
落ち込んでいる。
まさかのまさかは考えたくない。しかし
夕食時に弟の手首には
確かに時計はあった。
私も夫も見ていた。
今、無情にも現実にはないのだ。何だかなぁと
いう気分が3人の心を憂鬱にする。静かに夕食が終わった。ビートルズが流れ
始めた。各々が各々の場所で気分転換をする。 
粛々と1日が終わった。


「章くん時計は俺が買ってやるけんな。友だちば大事せなよ」神様降臨!!






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