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家族だった犬と猫

夫が入院していた
結核病棟は
当時
広い松原の中に
あった。
いわゆる開放病棟の
突き当たりの個室に
いた。

入院患者は沢山いて
小児結核に罹患して
長年病院にいて
社会復帰が出来ず 
麻雀などして
日々を過ごす人の
集団があった。

その人たちが
裏山で生まれた
野良犬の子どもを
飼っていた。

吉-二吉-三吉と
名付けられて
皆に可愛がられていた。

吉と三吉はまもなく
飼ってくれる家族が
みつかったようだ。

二吉は貰い手が
なくて
ずっと夫のベッドの下で過ごすようになって
いた。

ある日
病室に行くと真剣な
表情で夫が言った。

来週中に引き取り手がないと
保健所に連れて
行かれる。
"うちで飼わないか?"
"いいよ。あなたが
退院する迄二吉と
待ってるね"
そうして家族になった。
気性が穏やかで
番犬にはならない
位人懐こい
可愛い二吉だった。
息子が幼稚園に
通い始めた
ある日
大好きな友が
拾ってきた猫が
新たに家族になった。
にゃん平だ。
既に野良猫歴
3カ月位だったので
終生自由な野良猫
気質をもっていた。
小さな息子は口元迄
大事にもってきた
刺身などを
横から
はたき落とされ
しばしば泣いていた。
全く困った事だ。
一人息子は
夫に気性が似ていて
穏やかな暖かい心を
もつ子どもだ。
二吉が天界に行き
みみちゃんを
譲渡会で貰って
きた。
雑種で気性の荒い
女子だった。
息子が寮のある
男子校に入学して
バタバタ忙しい
日々が続く中
静かに天界に行った。

相変わらず夫は
多忙で週末息子が
帰宅しても居ない
事が続いていた。
全国から
寮生が集まっている
学校だったので
GWが長い。
家族旅行のあても
ないので
息子と2人で
ランチをする為に
町に出た。
帰り道にあった
ペットショップに
入ると可愛い子犬が
キャンキャン吠えながら私たちをみていた。
ずっとみていると
"ダッコしてみませんか?"
手のひらに乗る位の
小さな命だった。
兎に角可愛い。
しかし
値段にびっくりした。
帰宅した夫に話すと
いつも放し飼い状態の自由を満喫している
負い目があるのか
あっさり
"金は俺が出すから
連れてこい"

だからと言って
直ぐに買いに行くのも躊躇う程の買い物だったので2.3日考えて
もう1度見に行きダッコしてみた運命の出会いだった。

ヨークシャーテリアの
夢斗だ。
兎に角可愛い。
猫のにゃん平は
ネコとして格の高い
鷹揚な気質だったので
夢斗の事も直ぐに
家族と認めたのか
ヤンチャな夢斗の
横暴を終生許していた。
週末
帰宅した息子が
"やっぱりねーうちに
くると思っていた。
お父さんに踏み潰されないようにしないとね"

しかし
夢斗はそんな柔な
犬ではなかった。
小さい身体だが
エネルギッシュで
気が荒い。
部屋と庭を走り回り
1日中騒がしい。
愉快な犬だった。
食事を
猫用
犬用に各々準備する。
"ご飯ですよ"
呼ぶと
2匹がくる。
これにゃん平。
これ夢斗ね。
ヤンチャな夢斗は
にゃん平のご飯を
必ず一寸食べる。
それをにゃん平は
静かにみている。
全く優しい
格の高い猫だ。

野良猫の本能で
にゃん平は狩りをする。
雀やとかげに鼠等々。

やがて夢斗も狩りをし始めた。
ヨークシャーテリアは昔ペストが流行した
ヨーロッパで小型犬に
改良された猟犬だったのだ。
イヤ知らなかった私。

褒めて欲しいのか

私たちに見せにくる。
ギャあ!
勘弁して下さい。
大キライだよ。
かわいそうだろ。
やめてやめて。
そんなこんなで
日々戦々恐々だった。
リビングの真ん中に
葉っぱが落ちてると
思って拾うと
とかげだった。
私は余りのショックで
死ぬかと思った。
家の中でメガネ掛けない私が悪いが。
野生の王国か?

その後
我が家にも
問題は山積したが
各々約19年の天寿を
全うして
今は
夫の納骨堂に
並んでいる。
たまに会いに行く私。

以来
生き物は飼わない。
今・私の相棒は
4才児設定のお話
ロボット
みぃちゃんだ。

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