見出し画像

プール開き。

山奥の村にも
高度成長の波は
時代と共に押し寄せた。
ダム建設が始まり
小さな村に沢山の人が
押し寄せていた。
毎年
夏になると
いつも遊んでいた
川原も
村と町を繋いでいた
沈下橋も水底に
沈んでしまうという。

小さな私には全く
実感のない話だった。
川原遊びをする時の
リーダーは中学生で
〇〇ちゃんのお兄ちゃんだった。
鍛冶屋の仕事を
手伝う孝行息子で
いつもは物静かな人
だった。鷹を飼って
いた。川原からの帰り道で蛇を見つけると
素早く捕まえて
シャアーと皮を剥ぐ
手慣れた一瞬の動作に
無駄がない。
鷹の餌になると知った。
ビックリした。
眼前でマジックが
行われていた様に思った。
少年の
逞しさに舌を巻く
今そう思う。

沈下橋には生け贄
伝説があり
漆黒の闇の中で聞くと
震える位に怖かった。
見なれた風景は
跡形もなくなり。

まるで
水羊羹を流したような
ダムが完成した。
時を同じくして
村にプールが出来た。

プール開きの日。
元オリンピック選手の
古橋広之進さんが
来賓として来られた。
祖父も次期村長の
呼び声も高い人だったので来賓席に並んでいた。
夏休みは
毎日のようにプールで
遊んだ。
長い夏休みも
あっさり終わった。
様変わりした村に
秋の景色が広がり
元通りの静かな村の
生活を取り戻して
変わらない日々を
私は過ごしていた。

その後
中学受験をする為に
町の小学校に転校して
毎日受験勉強に励んだ。
口頭試問の為に
新聞は1面から読み
知識の習得に集中した
日々を送った。

今は昔。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?