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日本昔話~MBTI対応版~

昔々、あるところにINFPのお爺さんINFPのお婆さんが住んでおりました。
二人とも一日中考え事をして過ごすので、家の中はグチャグチャであったそうな。
ある日、お爺さんは山へ自分探しの旅に、お婆さんは川へ哲学しに出かけました。

(乱世に平和をもたらすのは仏の教えなのに、村の皆は口を開けば稲作のことばかり。誰が私の苦しみを理解してくれるの……?)

お婆さんが農家とは思えない不毛な考えに囚われてクヨクヨしていると、川の上流からどんぶらこどんぶらことバチクソ陽キャESTPの桃が流れてきました。

「川流れるのおもしれwww 次は女呼んでこれやるわwww」

なんじゃあのパリピな桃は! あんなに明るい桃は見たことがない!
普段は腰が重いくせに無駄に好奇心旺盛なお婆さんは、無我夢中でバチクソ陽キャESTPの桃を拾い上げると、さっそく家に持ち帰って包丁でぶった切ってみました。
すると中から元気な男の赤ちゃんが出てきたではありませんか。

「ウェイwwwウェイwww」

その表情は既にふてぶてしく、どこかオラついた雰囲気があります。お婆さんはビクビクしつつもESTP太郎と名付け、自分の息子として育てることにしました。
なお先に家に帰っていたお爺さんは遠巻きにその光景を眺めているだけで、ついに一度も桃を切る作業を手伝おうとはしませんでした。お婆さんは離婚を検討しましたが、お爺さんが毎日親身になって愚痴を聞いてくれるので思い直したそうな。

「血の繋がらない老夫婦に育てられて果たして幸福なんだろうか? もっとふさわしい親がいるのではないか? ワシはどうすればいい?」
「お爺さん、そんなことよりオムツを替えてくださいな」

隙あらばヘラるお爺さんとお婆さんの元で、ESTP太郎はすくすくと育っていき、十数年後には村一番の半グレ青年として名を轟かせるようになっておりました。
こんな暗い両親に育てられて、よくもまぁヤンキーになったものです。

「落ち武者狩りマジぱねwww タダで刀手に入るわwww」
「ESTP太郎は喧嘩が強いしいつも違う女を連れてるのう。ワシの若い頃とは正反対じゃ……」

お爺さんとお婆さんはESTP太郎の暴れっぷりにドン引きしつつも、実は二人とも村の掟を守ることにはあまり興味がなかったので、厳しく叱ることはありませんでした。
むしろ村人に危害を加える落ち武者をブン殴るESTP太郎の蛮勇に、内心爽快感を覚えていたくらいでした。
FP型の世界ではルールより義理人情の方が大事なのです。

そんなある日、ESTP太郎は鬼ヶ島の噂を聞きつけました。イケてるお姫様が攫われたと聞き、深く考えずに「俺がぶっ飛ばしてくるわwww」と乗り気になっております。

「ダチと一緒にボコるからww 楽勝っしょwww」

ESTP太郎はガラの悪そうな友達がたくさんいるので、既に戦力は十分。
でも念のためお爺さんは自作の和歌を、お婆さんは自作の掛け軸を持たせてやることにしました。二人とも農作業には意義を見出せないけど、創作活動には非常に熱心だったのです。

「こんなもんより金か飯くれよw」

 ESTP太郎の心ない言葉に深く傷つきましたが、実生活には役に立たないものばかり作っている自分達が悪いので、返す言葉もありません。

「鬼にも心がある。そうだろう? 話せばわかるかもしれない。だがいざという時は殺しても構わぬ。そういう生き方しかできない世の中なんだ。無常だね……」

お爺さんが世を儚んでいるうちにESTP太郎はさっさと身支度を済ませ、出発していました。
お爺さんとお婆さんは息子が鬼に返り討ちに遭うのではないかと神経症になり、すっかり食事が喉を通らなくなってしまいました。

数週間後、ESTP太郎が旅の途中で動物を家来にしたという話を耳にしました。
ENTPのキジに和歌を見せると「おもしれー解釈じゃん」と仲間に加わり、
INTPの猿に和歌を見せると「考察のしがいがありますね」と仲間に加わり、
ISTPの犬に掛け軸を見せると「俺も掛け軸は毎日作ってる」と仲間に加わったそうです。

全員がTP型なので治安が悪そうですが、鬼退治に共感能力など不要なのでちょうどいいでしょう。
やがて鬼ヶ島に上陸した一行は、キジと猿が考案した血も涙もない策を実行に移し、外道の限りを尽くします。

ESTP太郎は鬼を殴った時の反応が楽しくて仕方ありませんし、ENTPのキジは「そんなに痛いなら切腹して楽になればいいんじゃね」と鬼にアドバイスをしています。
本当に活き活きしています。

それから数日後、攫われたお姫様を助け出したESTP太郎は、意気揚々と村に戻りました。

「おおESTP太郎! 怪我はなかったかい?」

お爺さんとお婆さんが目に涙を浮かべながら駆け寄ると、ESTP太郎の隣にいたお姫様が「なんですかその小汚い着物は」と鋭い口調で注意してきました。

「家の中が汚れてるし、髪もボサボサ。大体息子が鬼退治に出かけるのに何の役にも立たない創作物を持たせるなんてどうかしてると思わないんですか? それ親の役割を放棄してますよね?」

なんと太郎が助けてきたお姫様は、INFPの天敵のESTJだったのです。
お婆さんは姑にいびられていた時のトラウマが蘇り、ウサギのように震え出しました。

「ひええ……っ」

恐れおののく老夫婦の前で、ESTJのお姫様は「両家の家格が釣り合わないのでこのままでは結婚は難しい。まずESTP太郎さんは朝廷に働きかけて官位を貰うべきです」などとINFPからすれば糞つまらない社会的地位の話を繰り広げます。
どうやらその熱心さからすると本当に太郎に惚れているようなので、もしかしたら何とかなるのかもしれません。

あとは若い二人に任せよう。というか興味の持てない話題だしこのお姫様怖いのでこれ以上話したくない。そう考えた老夫婦は自宅に引き返すと、朝廷工作に役立ちそうな芸術作品をせっせと作り始めたそうな。 

めでたしめでたし。



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