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腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP)後の臍ヘルニア

皆様こんにちわ、大阪駅前にある鼠径ヘルニア日帰り手術のMIDSクリニックです。

本日は腹腔鏡下手術による鼠径ヘルニア根治術後の合併症である、「臍のポートサイトヘルニア」についての文献を紹介します。

タイトルは「Incidence and risk factors for umbilical trocar site hernia after laparoscopic TAPP repair. A single high‑volume center experience」
2021年にSurgical Endoscopyで発表された論文ですね。(PMID:32964307)

【背景&目的】
低侵襲手術後のポートサイトヘルニアは過小評価されることが多く、TAPP後の臍ポートサイトヘルニアの発生率については、ほとんど情報がない。なので調べてみた!リスク因子も解析してみた!

[comment] 単施設だけど大規模センターでの記述疫学とリスク因子探索、ですね。

【方法】
研究デザイン:前向きに症例収取したデータベースを後ろ向きに解析、つまり後ろ向きコホートですね。
対象:2013年~2018年で腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を受けた方。
Primary Outcome:Trocar site hernia (TSH) =臍のポートサイトヘルニアの発生。
Surgical Procedure:臍10mm port, 両側5mm port×2

[comment] 臍10mmは大きいですね。
※当院は腹壁ヘルニア予防目的に5mmのポートしか使用しません。

【結果】
約5年間で535例のTAPPしました。G1(もともと臍ヘルニアなし)は359例、G2(もとから臍ヘルニアあり)は176例。
臍のポートサイトヘルニアは21例で3.9%。
Logistic regression modelで多変量解析すると…
腹直筋離開:aOR 37.8(8.22-174.0)、鼠径ヘルニアの再発:aOR 13.54(2.05-89.5)。

[comment] いままでの知見から予測しうる結果でした。しかし、"鼠径ヘルニアの再発" は因果グラフで考えるとリスク因子とは言えないんじゃないかと。今回のアウトカムと鼠径ヘルニアの再発に因果関係がある、というよりは、腹壁の脆弱性に由来する他の結果であり、相関関係にあるだけと言うのが正しいんじゃないだろうか。予測因子とは言えますね。

[総括]
TAPP術後の臍ポートサイトヘルニアに関する初めての研究でした。
ただ、ポートは全て10mmで、ポートサイトヘルニア予防も行っていない。
低侵襲手術だからこそ、合併症も極力減らすべきなので、このような合併症には私たちも気を付けなければいけないと思いました。


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