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論文紹介:腹膜透析と腹壁ヘルニアの関連に関する研究

皆様こんちには、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

本日ご紹介する論文は、腹膜透析と腹壁ヘルニアの発生に関する研究です。

タイトル「Relationship between intraperitoneal pressure and the development of hernias in peritoneal dialysis: confirmation for the first time of a widely accepted concept」

和訳すると「腹膜透析における腹腔内圧とヘルニアの発生との関係:広く受け入れられている概念を初めて確認した。」

PMID:37566322(Google scholarでも見つけれます)

【背景】
・腹膜透析(PD)における腹腔内圧(IPP)は、姿勢や腹腔内容量(IPV)によって変化する。
・腹腔内圧は、ヘルニアの発生など腹壁合併症のリスクと考えられている。
・しかし、腹腔内圧と腹壁ヘルニアの発生率の関連に関する既存研究はない。
・本研究の主な目的は、腹膜透析患者におけるヘルニア発症と腹腔内圧との関係を評価することである。

【方法】
・前向き観察研究
・セッティング:2010年~2020年
・対象:合併症を起こした腹膜透析の患者
・腹腔内圧測定:Durand法


【結果】
腹膜透析で合併症を生じた患者124人
68%が男性、平均年齢62.1±15.23歳、BMI27.7±4.82kg/m2、44%が糖尿病であった。
仰臥位での腹腔内圧は16.6±4.60cmH2O、平均IPVは2047.1±359.19mLであった。
腹壁ヘルニアを生じたのは23人(18.5%)
腹壁鼠径ヘルニアは11人(57%)、臍ヘルニアが8人(33%)、さらに10%が複合型であった。
腹膜透析患者に合併する腹壁ヘルニアは、仰臥位での腹腔内圧(p = 0.037)、患者の年齢(p = 0.008)、BMI(p = 0.043)、過去のヘルニア歴(0.016)、腹腔鏡下カテーテル留置(p = 0.026)、手技の失敗(p = 0.012)と正の相関を示した。
多変量解析では、腹腔内圧が高いほどヘルニアの発生と独立して関連していた(p = 0.028)。

【結論】
腹膜透析における腹壁ヘルニアの発生は、腹膜透析時の腹腔内圧の値、年齢、BMI、ヘルニアの既往、腹腔鏡によるカテーテル留置、手技の失敗と関連していた。

[COMMENT]
腹膜透析を行っている患者さんはそう多くありません。
しかし、腹圧と腹壁ヘルニアの発生に関する研究は非常に興味深いです。
この研究では多変量解析を行っても、腹腔内圧は腹壁ヘルニアのリスク因子として残りました。

腹壁は筋肉/筋膜/皮下脂肪など、異なる組織が何層にも積み重なって構成されています。その一番外側は皮膚であり、一番内側は腹膜となります。

皮膚と腹膜の間の筋肉に隙間がヘルニア門となります。

腹腔内の圧が高いと、ヘルニア門から腹膜が突出し、それが徐々に袋状に大きくなって皮下まで脱出したものがヘルニア嚢です。

腹腔内圧がヘルニアのリスク因子である事は想像に難しくありません。
むしろ今まで、この仮説を裏付ける研究がなかった事におどろきました。

ヘルニア根治術後も再発を予防するためには、腹腔内圧が上がりすぎないよう注意する事が必要です。
私たちとして出来ることは、便秘のコントロールなどになります。

ヘルニアの手術後のアフターフォローもお任せください。

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