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論文紹介:TAPPとLichtenstein法の比較、術後早期疼痛に主眼を置いて。

皆様こんちには、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

本日ご紹介する論文は、TAPP法とLichtenstein法(最もポピュラーな鼠径部切開法)の比較です。

タイトル「Transabdominal Preperitoneal Versus Lichtenstein Procedure for Inguinal Hernia Repair in Adults: A Comparative Evaluation of the Early Postoperative Pain and Outcomes」

和訳すると「成人の鼠径ヘルニア根治術におけるTAPPとLichtenstein法の比較: 術後早期の疼痛と転帰の比較評価」

PMID:37581138(Google scholarでも見つけれます)

【背景】
現在、鼠径ヘルニア根治術としてTAPP法が普及している。
本研究の目的は術後回復の早さと退院までの日数に関して、TAPPとLichtenstein法を比較する事である。

【方法】
・デザイン:ランダム化比較研究
・セッティング:2021/7~2023/6, 4施設
・アウトカム:術後1日目の疼痛、入院日数

【結果】
・TAPP法129人、Lichtenstein法109人
・術後1日目の疼痛:TAPP群 中央値1.23点(SE0.044), Lichtenstein群 中央値1.807点(SE0.071)
→ p value <0.001, d=2.92
・術後在院日数:TAPP群 中央値1.389日(SE0.09), Lichtenstein群 中央値5.541日(SE0.097)
→ p value <0.001, d=4.01

【結論】
術後1日目の疼痛スコアはTAPP群で低く、術後在院日数はTAPP群で短かった。
TAPPは鼠径ヘルニア根治術の安全な方法であり、古典的なLichtenstein法よりも術後の回復が早く、術後の痛みも少ない。

[COMMENT]
本研究のポイントは術後早期疼痛であり、ここに主眼を置いた研究は少ないように思います。

この研究の結果は私たちの臨床実感と一致します。術後3日目くらいになると痛みのレベルは同様のものになります。しかし、術後早期はTAPPの方が痛みが弱いように思います。

この術後早期の痛みが実は重要なのではないかと感じる事が多々あります。

というのは、術後早期に痛みが生じると疼痛に対する閾値が下がってしまい、その後に疼痛を感じる事も増える可能性があります。

これは癌性疼痛のコントロールにも共通します。
ベースの鎮痛薬をしっかり投与する事で、疼痛発作の回数を軽減し、結果的にQOLが維持されます。

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