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【ネタバレなし感想】念願のガラージュをプレイした

 遡ること23年前、1999年にPC向けゲームとしてリリースされた「ガラージュ」。
 その独特すぎる世界観で「三大歪みゲー」のひとつとして数えられ、カルト的な人気を誇りながらも、世に出たのはたったの3500本。
 長いこと、十数万というプレミア価格で取引される幻のゲームだった。

 自分はこの三大歪みゲーのうち、別タイトルに熱を上げていた時期があって、そのつながりからタイトルとビジュアルだけは知っていた。
「やったら絶対好きなやつ」
 しかし、ゲーム一本に十数万を出せるほど、自分は石油王ではなかった。

 はい、ここまでが前置きです。

 このガラージュが、クラウドファンディングで「完全版」としてスマホアプリとして復刻。買い切りたったの610円でプレイできるようになりました。

 アプリ発売前にヴィレヴァンとのコラボで出ていたTシャツだのアクキーだの、アプリの何倍もする値段の代物を買い漁っていた身としては
こんなに安くていいんですか?!?!?!?!?!?!
と叫びたいのですが、悲しいかな、アプリストアにチップは払えません。

 とか言ってたら表現規制なしのSteam版も出たってよ。買うしかないねえ!!!!

 以下、シンプルにレビューです。

超正統派謎解きアドベンチャー

 基本的に「光っているものをタップする」「人から話を聞く」ことで得られたヒントを元に、アイテムを集めて進める、超正統派の謎解きアドベンチャーです。
 上記ふたつをきちんとこなせば、メインストーリーをクリアするうえで詰まるところはほとんどないと思います。

 ゲームとしてはものすごく単純なのですが、プレイしてて思ったのはとにかく誘導が丁寧。
 
「誰かに何かを渡す」ときは、その「誰」がどこにいるのか、「何か」はどこにあるのか、ゲーム内のテキストでしっかり明確にされています。
 「わかりにくいな、よくわからんな」となった時は、大抵なにかを聞き逃したり見逃したりしていて、自分の手元にある情報を見直したり、改めて住人たちに話を聞くとわかるようになってます。
 これ、単純だけど凄いことだと思うんですよ個人的に。

 移動には「順応度」と「白瓦斯しろがす」のふたつを消費するので、これらの管理もしなければならないのですが、これも程よい塩梅で「人のいるところに戻らせて」くれるんですね。
 ステータス回復のために戻ったついでに「あ、そうだあの人からも話聞いておこう」だとか、「あそこ調べてなかったな……」と、思考が凝り固まっているのをさりげなく防いでいて、これがまた気持ちいいのですよ。
 順応度と白瓦斯の残量を気にしなくてもいいくらいステータスが伸びる頃には、プレイヤーも「ガラージュのお作法」がわかるようになり、謎解きで詰まるところも減ってくる。なんて作りが丁寧なんだ……。

 マップも動画や画像で見るととんでもなく難解に見えるんですが

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 大丈夫です。慣れます。
 
これは根性論とかではなく、一見して受ける印象と裏腹に、ガラージュの世界は思ったより狭いです。
 同じところを何度も行き来することになるので、地図は覚えられなくても「ここからなんか右の方!」でわりと目的地にたどり着けます。
 加えてこのマップ、ループするようになっているので、とりあえず一周すれば行きたいところには行けるんですよ。
 ループじゃないところは基本行き止まりなので、間違えたら戻ればいいだけ。
 おもしろいことに、動画とかで見てるだけだと全然わかりません。やるとこの感覚がわかる。

生まれて初めてゲームの釣りにハマった

 今まで、ゲームによくある釣り要素ってあんまり好きじゃなかったんですよ、正直。
 釣り糸垂らして待ってみたり、タイミング合わせてボタン押して終わり、みたいな感じの釣りに楽しみが見出せずにいたのですが、ガラージュは違った。

 いや、文章にしたためてみるとそんなに変わり映えはしないんですが。
 「釣り針」「釣り餌」「撒き餌」を選んで、糸を垂らす。かかったら力加減を調整して相手の体力を削り、削りきったら釣れる。
 たったそれだけなんですけど、釣れるのは魚ではなく、とても蛙には見えない蛙と呼ばれる生物たち。

 おそらく多くの人が最初に釣るであろう蛙、「ゲドウ」とか。
 膨らんでる方が頭のようですがセンシティブ(に見える)ので画像は省略。ググると出てくるよ。

 釣り針と釣り餌と撒き餌の組み合わせを変えたらどんな蛙が釣れるんだろうと、新たな蛙を求めてあともう1匹……あともう1匹……を繰り返してしまう中毒性があります。少なくとも自分はなった。

 蛙には変異種もおり、ざっくり統計とってみた感じ10分の1くらいの頻度で釣れます。売ったときの値段もだいたい10倍。
 一部、釣るだけで実績解除されるようなレア蛙については確率どのくらいなのか検証してませんが、こんなことにはなりました。

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 実績解除条件のレア蛙、「白子モノモライ(雌)」を釣った時のスクショ。

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 売ってスタンプ(お金)に換えたのも大量にあるので実際はもっと釣ってるはず。自分でも変な声出た。

深くて切ないシナリオ

 忘れてはいけないのが、丁寧に練られ、構成されたシナリオです。

 三大歪みゲーに数えられるガラージュですが、この歪みゲーの中でもガラージュはいちばんわかりやすく、ストレートにテーマを描いているように思います。

 即ち、愛。

 ガラージュをプレイしていると、一見おかしな機械たちも、ただ姿が奇妙なだけで、愛嬌も人間味もあるキャラクターだとわかってきます。
 そして、姿も性格も違う彼らの姿を追っていくと、ガラージュで描かれているのはさまざまな形の愛であることに気づくのです。
 詳細なところはネタバレありの考察記事で書きたいと思っていますが、こんなに描きたいテーマをド直球でドーン!とお出ししてるアドベンチャーゲーム、意外とないと思うんですけどどうでしょう?

 完全版になる前はChapter9で終わっていたらしいので、確かに「話の核心に至る前に終わる(この先は自分で考えてみてね!)」という意味で難解なゲームだったのでしょう。完全版は違います。

 アプリでは表現規制がかかる程度には、いわゆるいかがわしい表現・間接的な性的描写もありますが、人間の愛を語る以上、その形のひとつとして表現することを避けられないものだと思います。
 むしろ、あえて醜く描写された生々しい愛の形を直視することこそ、プレイヤーが体験すべき、ガラージュの本質の一端ではないでしょうか。

 あと地味に、全チャプターでちゃんとそれぞれの人たちに会話差分があるの、何度も言ってますが本当に丁寧な仕事だなあと思います。
 初見プレイでは序盤のチャプターで会うことはまずないだろう人たちも、その時にしかない話をしてくれるんですよね。周回プレイが捗るね!

まとめ

 ガラージュは三大歪みゲーの中で一番とっつきやすいタイトルだと思います。

 謎解き探索アドベンチャーなので、難しい操作は必要としません。(釣りもちょっと慣れれば操作はシンプルで、アクション性はありません)
 完全版になったことで、システム的にもストーリー的にも不案内だった部分が親切になり、かなり万人向けになっています。
 強いていうなら、テキストでの情報量が非常に多いので、「三行以上の文章を読むのが苦手」な人には向いていないかもしれません。
 逆に言えば、それ以外ならどんな人でも触れて損はないタイトルだと思います。というかこの記事3000字あるのでこの記事読んでくれたあなたなら大丈夫。

 ガラージュはぜひ、自分の手でプレイしてみてください。
 あれは自分の手で体験すべき物語であり、それによって得られる喪失感は何物にも代え難いものです。

 そしてその喪失感を埋めるべく、他の人の反応を見に自分も実況を探しに行くんだろうなあ。

 そんな自分の実況プレイがこちら。iOS版です。
 ご自身のプレイの後にでもどうぞ。

 今自分で自分の見直してもちょっと違う感想が出てきたりするので、「初見の感覚って大事だなぁ……」としみじみ。

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