The Street Sliders 武道館ライブ 2023.5.3


五月三日、日本武道館でThe Street Sliders の再集結ライブがありました。WOW WOWライブの録画を見て、記憶を呼び起こしつつライブレポートを書きます。

HARRYのメルマガ先行抽選でアリーナ席を当て、当日、新幹線で駆けつけました。
新宿のホテルにチェックイン後、九段下駅行きの電車に乗ると、あちらこちらにペイズリー柄のシャツやレザーパンツ姿の見るからにそれっぽい人たちがいます。豹柄スカート、黒レザーの豹柄スニーカー姿の私も、たぶんそれっぽい人だと思われていたことでしょう。

予想どおり、それっぽい人波に乗って、千鳥ヶ淵から日本武道館の敷地内へ。ここ十数年で私が行った最も大きな会場は、収容人数約1200人の川内萩ホールでのクラシックのコンサート。スタンディングのライブだと、大きいハコでもせいぜい四百人台で、HARRYさんのソロライブだと限定三十人の盛岡FEELGOODの2DAYSとか観客二桁のことも何度かありました。
豊洲PITでもずいぶん人が多いなあと思っていたのですが、武道館は1万四千人来場したそうで、広い敷地のどこもごった返していました。
NARABAZZで予約していたグッズを受け取り、時計台近くで待ち合わせていたフォロワーさんを待ちます。
歩き回っているファンは大半が私と同年代あるいは少し上の世代ですが、たまに二十代らしき人も見かけます。昔のスライダーズのライブだと、HARRYや蘭丸そっくりのファッションのファンが何人もいたものだとけど、今はもうさすがに…と思ったら、ダイエースプレーのスーパーハード缶を一本使い切ったような盛り盛りに逆立てた茶髪の細身の男性が歩いて来て「これでこそスライダーズのライブ!」と駆け寄って握手を求めたいくらいテンションが上がりました。
フォロワーさん達とご挨拶後、私はアリーナ口から入場。4列目蘭丸側でしたが、かなり端の方、赤いペイズリー柄の壁の前でした。
難聴治療中なのでライブ用耳栓を装着し、ドライアイなので目薬をさして……などと、年相応にあれこれ準備しつつ開演を待ちます。
私は初めての武道館、初めての大きな会場でのライブなので知りませんでしたが、後から他の来場者の方々から聞いたところによると、会場に限界いっぱいまでお客さんを入れるためか、普通の武道館クラスのライブだともっと大掛かりなセットとかスクリーンとかあるのが普通だそうで、珍しいほどシンプルな舞台設営だったみたいです。(私は大掛かりなセットなどなくても、ドラムに書かれたThe Street Sliders」の文字だけで胸いっぱいでした。)

定刻前の場内アナウンスで拍手が湧いた後、場内の照明がすべて消えて真っ暗になると、どかどかと席を立つ音の後、地響きのような拍手と悲鳴にも似た歓声と指笛が轟きました。
「場内アナウンスで『椅子の上がらないで』って言ってたけど、この興奮ぶりだと椅子に上がったり、椅子をなぎ倒して前に押し寄せるファンも出てくるかも」と若干不安が過った瞬間、下手からメンバーが登場。
HARRYが白いスーツ上下、黒色ポークパイハット、スカーフ。蘭丸がいつもの黒いナポレオンジャケット、色付き眼鏡。JAMESが緑のジャケット。ZUZUが緑のシャツ。(私の位置からまともに見えたのはHARRYと蘭丸だけ)
豊洲PITのとき、当然「舞台下手が蘭丸、真ん中がHARRY、上手がJAMES」と信じていたのに、JAMESがなぜか奥の方に引っ込んでドラムのZUZUと横並びだったことに衝撃を受けましたが、武道館も同じ立ち位置でした。
軽くそれぞれの楽器を鳴らした後「ハロォウ」
HARRY独特の「ロ」にアクセントを置いたお決まりの挨拶の後、HARRYが黒いテレキャスター、蘭丸が白いSGを持ち、一曲目「チャンドラー」が悠々と始まりました。
比較的初期でファンには馴染み深いけれどシングルカットされた代表曲ではない、ゆるく踊れるナンバーです。
「どうもこんばんは。ストリートスライダーズです」
こちらもファンにはお馴染みのHARRYのお決まりの挨拶。いつものあのだるそうなトーンでした。

二曲目が「Baby Blue」こちらもベスト盤に入るような代表曲ではなく、拳を突き上げ激しく叫ぶようなアクションには結びつきにくい後期の曲。
「そういえばスライダーズってこういうバンドだったわ。というか、そこが他のバンドと違ってクールで好きだったんだっけ」と思い出しました。
向かい合って弾くツインギター、ドラムに目線を送るHARRY…もう胸いっぱいでした。
その後「Angel DUster」多分、スライダーズ全楽曲の中でも1、2を争う人気曲かと思います。私がスライダーズファンになったきっかけも、小学6年生のときにラジオから流れてきたこの曲でした。急にアップテンポになったりはしないけれど、グッと会場の空気が濃くなったのを感じました。HARRYのソロライブやJOY -POPSでも演奏されていましたが、ZUZUの力強いドラムと、蘭丸、JAMESのコーラスが入ると「ああ、やっぱりこれだ」と感無量でした。
「Let's go down the street」
前奏部分、HARRYは歌い出しまでギターを弾かないのです、他のメンバーが演奏しているので当然音は出ていて、当たり前なのですが、グッときました。
「ONE DAY」
前曲でようやくちょっとアップテンポになったと思ったら、しんみりバラード系。こういうところが中学時代の私には、とても大人っぽく格好良く感じられたことを思い出しました。HARRYのメインボーカルと蘭丸のコーラスの声質の相性の良さを改めて実感しました。そして、歌詞が美しい…。
「すれちがい」
HARRYのギターがモスグリーンのファイヤーバード(豊洲PITで初めて見た)でした。エフェクターをこれでもかと効かせる蘭丸のギターに「そういえばこういう曲だった」と思いました。この曲も「心象風景とは何か」のお手本みたいな歌詞ですね。
「PACE MAKER」
ここでギアが変わります。会場の空気がうねると言いますか。
「ありったけのコイン」
こちらも人気が高い曲なので、イントロで歓声が上がりました。HARRYさんはソロになってから歌うときには原曲よりキーを下げて歌っていたように思うのですが、この日は原曲のキーに戻したのか、この曲本来の明るさはあるもののちょっと歌いづらそうな印象でした。発声の仕方を軽くすることで乗り切ったように感じました。(HARRYさんは元々声量がかなりある方なので、軽めの発声でも支障ない程度に聞こえます。)

HARRY「それじゃあ、新しい曲を」
そう言って演奏したのは、去年JOY -POPSで演奏した「曇った空に光放ち」HARRYと蘭丸の二人で演奏していた時も格好いいと思って聞いていましたが、ドラムとベースが入るとしっくりきますね。曲の前半は音域が下がったせいかHARRYの声も楽になったかなと思ったのですが、後半、声がかなりキツそうでした。それでも最後まできっちりいけるのがバンドの良さですね。
続いて、同じくJOY-POPSで演奏していた「ミッドナイト・アワー」この曲は蘭丸とツインボーカルの部分が多いのですが、そのおかげか、HARRYも楽になったように歌っていました。

HARRY「メンバー紹介」
観客「わー(笑)」(メンバーを知らずに来場している人がいるのか?)
HARRY「ベース、市川洋二。ジェームズ!」
観客「ジェームズー!!」
JAMESは手を挙げながら、全方向(バックステージにもお客さんがいる)にお辞儀。JAMESって本当に紳士ですよねえ。
HARRY「ドラム、鈴木将雄。ズズ!」
観客「ズズー!」
ZUZUはドラムをたたたん。そんなに大きなアクションや言葉はなし。
HARRY「ギター、土屋公平。蘭丸!」
観客「蘭丸!」「公平!」(私は「蘭丸」と叫びました)
蘭丸、全方位に手を振る。その後、蘭丸がHARRYの方へ手を差し出す。
蘭丸「ボーカルギター、村越弘明。HARRY!」
観客「ハリー!」
HARRY、王子様的な小さめお辞儀の後、全方位の観客を指差す。

HARRY「公平が歌うぜ」
で、お馴染みの「天国列車」のイントロで歓声。スライダーズ時代に比べると線が太くなったボーカルで、華やかな演奏でした。

バックステージの男性客「蘭丸!後ろー」
蘭丸が後ろを振り返って手を挙げる。
バックステージ拍手喝采。

HARRY「OK、JAMESが歌うぜ」
JAMESはドラム脇の位置のまま「HELLO OLD FRIEND」
JAMESのボーカルもスライダーズ時代に比べると骨格がしっかりした感じでした。JAMESって改めて見ると本当に端正な顔立ちでシュッとしていて、熱狂的な女性ファンがもっと大勢いないのが不思議なくらいですが。

「So Heavy」
スライダーズ初期代表作品。一気に会場の熱量が上がりました。二十二年ぶりとは思えないこのしっくりくるバンド感はなんなんでしょうね。本当は四人でずっと一緒にバンド活動していたのでは?と思うような華やかなグルーブ感がありました。HARRYのボーカルも回復しました。

「BACK TO BACK」
こちらも人気の高い踊れる曲。スライダーズのライブに行ったことのある人にしか通じない話でしょうけれど、私は「BACK TO BACK」で右腕を挙げて、拳ではなく人差し指を回す派です。(まあ、スライダーズはみんな好きなように踊ったり聞いたりしているのが良いと思います。)ZUZUとJAMESならではの腰に来る重いリズムが気持ち良くて、ぐいぐい前に出て弾きまくる蘭丸に、楽しそうにリズムギターを刻むHARRYが印象的でした。

HARRY「最後の曲です。風の街に生まれ」
多分、スライダーズの中でも一番くらいに前向きな明るい曲。とはいえ、変に暑苦しい言葉で励ましたりしないで「お前次第さ」と言ってくれるところが好きです。

四人それぞれ全方向に手を挙げつ、わりとあっさり退場。
これは当然アンコールがあるでしょうということで、拍手しつつ再登場を待ちます。いやあ、一万四千人の拍手ってすごいですね。万一、このまま出てこなかったら暴動になるんじゃないかと一瞬頭を過りましたが、そこは無心でひたすら手を叩き続けました。
まあ、当然ですが、四人がステージに再登場。蘭丸と並んで歩くHARRYの歩き方が若干ぎこちなく見てたのは私だけでしょうか?
そんなことを考える間もなく「のら犬にさえなれない」ファースアルバム収録の名バラード。以前、何かの企画でスライダーズ全楽曲の中でファンが人気投票した際、堂々一位になった名曲です。(多分、いつの時代にやろうと、この曲の一位は揺るがないことでしょう。)
この曲でスタンド席を中心に、白い光が灯りました。(私は知らなかったのですが、最近のライブだと、昔の野外ライブでバラード曲になると観客がジッポーライターを灯したように、最近では携帯電話のライトを灯すそうですね。)演奏が進むにつれて客席に白い光が増えてゆき、蛍の群れのようでした。詩歌の世界では、蛍は亡くなった人の魂のメタファーとして用いられがちです。この時、私は、スライダーズ解散から再集結までの二十二年余りの間に亡くなったファンが大勢いて、そのファンが白い光になってスライダーズのライブに参加するため会場に降りてきたように感じました。

HARRY「最後に。俺たちの四十周年ライブの全ての関係者に感謝したい。今日は来てくれてありがとう。サンキュー」
スライダーズを知らない方であれば「二十二年ぶりに再集結して武道館ライブやって、もっと他に言うことないのか」と思われるかもしれませんが、ファンにとっては、いつもお決まりの短い単語しか発しないHARRYが、このタイミングでこれだけのことを言ってくれたことにグッときました。
最後は客電がついて明るくなった会場で「TOKYO JUNK」
セオリー通りなら「のら犬にさえなれない」で終わりにしそうなところ、一番激しく頭を空っぽにして踊るような曲を最後の最後に持ってくるところがスライダーズらしいなあと思いました。

その後、エンドSEでインストルメンタルの「パノラマ」が流れる中、四人がそれぞれ全方向に手を振ったり指差したり。最後にHARRYが例の王子様的なお辞儀を決めました。(姿勢が良くて細身なので、白いスーツの上下だと本当に王子様みたいでした。)退場途中、蘭丸がHARRYの肩を抱いて「きゃあ」となったのですが、後から映像を見たりしてよく考えると、もしかしたらHARRYは腰か脇腹を痛めていて蘭丸がそれを知っていて庇おうとしたのかな?という印象を受けました。(あくまでHARRYの動きを見ての私の憶測です。)
その後、メンバーが立ち去ってエンドSEだけが流れる舞台に向かって、ひたすら拍手を続ける観客たち。もちろん、チラッとでもいいからメンバーに顔を見せてほしいというのもあったと思うのですが、このライブ会場から立ち去り難かくて感傷に浸っていたという気持ちもありました。
としみじみしていたら、急に舞台に白い幕が降りてきて「ザ・ストリート・スライダーズ 秋・ツアーやるゼイ!」
いやあ、びっくりしました。客席の歓声とも悲鳴ともつかない絶叫凄かったです。

その後、白い幕の写真を撮ったり、会場内で偶然会った仙台のスライダーズファンと立ち話をしつつ退場。出口でツアー開催のフライヤーが配られたそうですが、なぜか私が出た場所ではもらえませんでした。
「立ち止まらないで、歩いてください」という誘導に促され、一つ目の門をくぐり、二つ目の門の手前で数年ぶりに会う友人とご挨拶。さらに初対面のフォロワーさん数名と合流し、新宿で開催されたファン約八十名による飲み会に参加しました。
二十二年ぶりの再集結だともっとウェットに力が入ったものになりそうなところですが、ファンはともかくメンバーはかなり通常のスライダーズのライブで、とても自然に当たり前のようにスライダーズというバンドに戻った(というか元々解散なんかしていなかったんじゃないか?)という印象でした。

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