ジャニス・ジョプリン
「27クラブ」とも言われるほど、才能あるアーティストは二十七歳で亡くなる例が多い。ジャニス・ジョプリンも、一九七〇年、 薬物の過剰摂取により、 二十七歳で亡くなった。
ジャニスと言えば、天才シンガー、女性初のロックスター、ヒッピー文化のアイコン等の華やかなイメージが強い一方、彼女の妹の手記によると、元々は内気で恥ずかしがり屋で絵を描くのが好きな少女だったとされる。「ドラッグ セックス ロックンロール これだけあればいい」の言葉通り、奔放な性関係でも知られるが、思春期に容貌を蔑まれたショックから、ドラッグとセックスに依存するようになったというのが真相らしい。
ジャニスが所属していたバンドの曲は何曲か聞いてみたが、確かに力強い歌声や豊かな表現力は圧倒的である。しかし、他のバンドメンバーの演奏技術、さらには肝心な楽曲時代の完成度があまりにも低く、ジャニスの歌唱だけ浮いている。ジャニスは、演奏レベルの差が原因で元々のバンドを脱退し、新バンドを編成しているが、歌と演奏技術と楽曲の良さが釣り合っているのは、遺作のアルバム「PEARL」だけだ。私からすると、ジャニスは華やかなロックスターというより、孤独で可哀想な女性という印象が否めない。
ジャニス・ジョプリンみだらを舌にころがして三十の坂転びそこなふ
尾崎まゆみ『微熱海域』
三十歳ならまだ若いと思う読者も多いだろうが「27クラブ」にはとうに入れない。ジャニス・ジョプリンという魅惑的な響きを口にしてみても、現実の生活は「ドラッグ セックス ロックンロール」では成り立たないことを知っている年齢だ。そして、ジャニスにしてみれば同情されるよりも、本作品のように淫らで奔放な女性の象徴である方が本望かも知れない。
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