西城秀樹

 二〇一八年五月、西城秀樹の訃報を受け、生前は特にファンでもなかったのに、動画サイトでヒデキの映像を見始めた人は少なからずいたと思う。一定の年代以上でないと分からないかも知れないが、インターネットが普及していなかった時代、家庭の中心にはテレビがあり、毎日テレビの中で元気よく笑顔で歌ったり踊ったりしていたヒデキは家族のような存在だった。
 私もヒデキが亡くなった時、自分でも驚くほど衝撃を受け、連日連夜、ヒデキの映像を見続けた。そして、昭和のアイドル歌手だと思っていたヒデキが、抜群とリズム感と正確無比の絶対音感とアスリート並みの肺活量をあわせ持つ、不世出のエンターテイナーであることにようやく気づいた。八十年代初頭の歌番組で、他の歌手が全員表拍で手拍子する中、一人だけ海外アーティストさながらに裏拍でリズムをとって踊っているヒデキの姿を見ると、生まれる時代が早すぎて実力を過小評価された天才と思わざるを得ない。
 その後、未来短歌会の歌人大西久美子さんもヒデキファンだと知り、「西城秀樹トリビュート短歌のフリーペーパーを作ろう」と意気投合し、二〇一八年八月歌人総勢六名による短歌とエッセイのフリーペーパー『RESPECT☆HIDEKI』を発行した。普段短歌に馴染みのないヒデキファンの方々に多く読んでいただき、海外からも反響があり、改めてヒデキの人気を実感した。このフリーペーパー掲載の短歌から一首紹介する。ちなみに「恋する季節」は西城秀樹のデビュー曲のタイトルである。

   にこはだの風よ、聴いてよ、夜もすがら恋する季節のあなたを思ふ
                            大西久美子
         『西城秀樹トリビュート短歌集 RESPECT☆HIDEKI』より

※塔2022年9月号「わたしのコレクションロック・ポップスの歌②」から転載しました。


 



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