第1夜『ツチヤタカユキ』

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「お笑い辞めるわ」
その言葉を今まで、口にした回数は、
本気でぶつかって、砕け散った回数と同じだ。

現在の第七世代みたく、
世代間に明確な線が、入って無かった時代。
一回り年上の、10年以上先輩と、
ガチンコの斬り合いをして、全員、ぶっ倒さなきゃ、
誰の眼中にも、入れなかったあの頃。

生活全部ぶっ込む。スタイルが固まる。
それを磨き続けりゃあ、天井を叩く。
そうすると、一流が気付き始める。そこから、インサイダー。最後に客。

ケータイ大喜利で、レジェンドを取った翌年には、ある雑誌の、ネタのグランプリの審査員を務めた、野性爆弾さんにイチオシに選んで頂ける。一流に気付かれ始める。
その翌年、ハガキ職人になって、2年半を迎える頃に、座付き作家にスカウトされ、東京進出したのは、
24歳の時だった。
だが、そこで、時代が変わった事を知る。

信じ続けていたマインドは、
時代の転換期に、取り残されていた。

その事に気付いた瞬間から、
熱量は枯れ、ただの置き物になりかけていた。
だから、そうなる前に、終わらせる事にした。

ただの置き物で、死んだように生きるくらいなら、
もう一度、別の世界でもいいから、
生きてる感じを、味わいたかった。
もう一度、生きたかった。
笑いを辞めるのは、自殺するみたいな感じだったけど、ぶざまになる前に、絶頂地点で、終わらせたかった。侍でいうところの切腹。
そんな幕の引き方すら、出来るだけ長く生き残る事が正義じゃなく、ただただ面白い事が正義だった、あの頃のマインドに従事していた。


数年後、立川吉笑さんの存在を知る。

吉笑さんの落語は、
かつて時代の転換期が来る前の、
あの頃の匂いがした。
というより、
それは紛れもなく、あの頃からの、一撃だった。

すぐに全部を葬った、僕とは違い、
落語家に転身して、その世界の中で、
砕け散ったあの頃を、今も体現している。

その落語を聞いてる時は、
ただただ笑いが好きだった、中学生に戻ってる。
そんな吉笑さんと、今度ライブをやらせて頂く事になった。

砕け散ったあの頃が、もう一度、生き返る。

ツチヤタカユキ

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