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ミドルスクール合作杯 メタゲームブレイクダウン

ミドルスクール
1995年から2003年の間に発売された旧枠のカード(第4版~第7版、ホームランド~オンスロート・ブロック、その他ポータル・金枠のデッキセット等)を使用し、
現在のMtGのルールに加え、当時存在していたいわゆる
マナバーン(出したマナを使い切れなかった場合、フェイズ移動などでマナが消える際にそのマナ分のダメージを受ける)
ダメージ・スタック(戦闘ダメージがスタックに乗り、ダメージを受ける前にアクションを起こすことができる。通称「当て逃げ」)
など、かつて存在していたルールを加え戦うフォーマットである。

主にインターネット上にて多く親しまれているフォーマットであり、テーブルトップでの大会は一部店舗にて小規模なものが行われているのだが、非公式のフォーマットながら、MtG初期に存在した多種多様な戦術と、その時々に居たプレイヤーたちの思い出から様々なデッキが存在している。

そして時は流れて2023年。
このフォーマットにて最も新しいスカージのカードの発売からも既に20年の時が経った今、秋葉原にミドルスクールのプレイヤーたちが日本全国から集まった。

ミドルスクール合作杯
あの頃にはなかったオンライン上から、あの頃に戻るかのようなテーブルトップで行われる本大会に41人ものプレイヤーが集った。
オンラインどころかオフラインも含めた大会の中で最大とも言える規模となった本大会。そこにあったのは、混沌としたメタゲームブレイクダウンであった。
今回は、その混沌に満ちたメタゲームブレイクダウンを書き記そう。

余談ではあるが。
本大会においてデッキリストの提出は必須ではないため、観戦者である筆者が全卓を見て書き記したものである
微妙なズレはあるかもしれないので、ご了承願いたい。


デッキ分布

ゴブリン 7
-赤単1 赤青1 赤緑2 赤黒3
オース 4
-
ショーテルオース1 スパイクオース1 カウンターオース2
スレッショルド 3
-青緑1 青緑白2
黒単コントロール 3
リアニメイト 3
-黒単1 青黒2
スタイフルノート 3
-青単1 青黒2
青白カウンターレベル 3
緑黒ザ・ロック 2
青白補充 2
青黒サイカトグ 2
エンチャントレス 2
白黒デッドガイエイル 1
青緑マッドネス 1
赤単スライ 1
黒単アグロ 1
サバイバルエルフ 1
カウンターバーン 1
赤青ティンカー 1

最大勢力でも2割に届いていない

最大勢力はゴブリンであるものの、それでも参加者総数の2割に届かない数である。
そもそも数の少ない使用者2名以下のデッキの総数だけで約3分の2であることから、このミドルスクールというフォーマットが多種多様なデッキが戦うことの出来る環境であるという証明となっているのだろう。

各アーキタイプをアグロ・コントロール・コンボの3種類にざっくりと振り分けたものがこちら。

アグロ

ゴブリン 7
-赤単1 赤青1 赤緑2 赤黒3
スレッショルド 3
-青緑1 青緑白2
青白カウンターレベル 3
白黒デッドガイエイル 1
青緑マッドネス 1
赤単スライ 1
黒単アグロ 1
サバイバルエルフ 1

当て逃げの象徴

クリーチャーを並べてライフを削り取ることを目指す、最も一般的なマジック・ザ・ギャザリングの戦術を取ったアグロデッキはこちら。
ちなみに今回はクリーチャーを並べた後カウンターで相手の妨害に対抗していく、いわゆるクロック・パーミッションの類もここに含めた。

やはり目を惹くのは最大勢力のゴブリン。
その中でも1マナ1/1、自身を生贄で1点のダメージを与える《モグの狂信者》は、ミドルスクールで採用されているダメージスタックルールに最も合致した存在だ。
例えば相手が2マナの《灰色熊》を立てていたとしても、アタック/ブロックしダメージをスタックに乗せる→モグの狂信者の効果で1点を飛ばすことで相打ちを取ることが出来る。

ルールの紹介のたびに焼かれる熊さん

また、この時代のゴブリンには《ゴブリンの従僕》が存在する。

マナカーブが粉々になるカード

ここから、《ゴブリンの王》《包囲攻撃の司令官》で横並べ戦略を取ったり、《ゴブリンの首謀者》《ゴブリンの女看守》で次の一手を集めることができる。

この辺全部ゴブリンの従僕から出て頭を抱えるし、従僕から出なくてもヤバい

2~3種の1マナクリーチャー、《稲妻》による除去/止めの一撃、そしてサーチによる手札状況から全体強化やさらなる横並べ。
多種多様な戦略に、対クリーチャーの黒タッチ・対置物の緑タッチ・対コンボ対策の青タッチ・安定を貫く赤単色など、各プレイヤーが重視するものを象徴するタッチカラーの選択も見逃せない。

コントロール

黒単コントロール 3
緑黒ザ・ロック 2
青黒サイカトグ 2
カウンターバーン 1
赤青ティンカー 1

相手の動きを封殺、あるいは妨害し、自分の優位性を保ち続けるコントロールデッキも多く存在している。
その中でも筆者が個人的に注目しているのはカウンターバーン。

現代ですら最強と言われる《稲妻》を中心とした火力。
相手の行動を許さない《意志の力》などのカウンター呪文。
そしてそれらをかき集める《嘘か真か》を中心としたドロースペル。

画像作成していた筆者が一番美しいと思う並び

「呪文が強い時代」とも言われたかつてのマジック・ザ・ギャザリング。
この混沌とした環境でも、すべてを打ち消しすべてを焼き払うことはできるのだろうか。

コンボ

オース 4
-
ショーテルオース1 スパイクオース1 カウンターオース2
リアニメイト 3
-黒単1 青黒2
スタイフルノート 3
-青単1 青黒2
青白補充 2
エンチャントレス 2

単体では輝きにくいカードを組み合わせたコンボデッキも負けてはいない。
筆者が注目しているのは、現代レガシーでも存在する《ファイレクシアン・ドレッドノート》+《もみ消し》のコンボを中心として戦うスタイフルノートである。

1マナ域の平均パワーの数値を狂わせるカード

着地時にパワー12になるようクリーチャーを生贄にしないとこのカード自身が生贄に捧げられる《ファイレクシアン・ドレッドノート》。
だがこの効果は戦場に出た際に誘発する効果であるため、この効果を《もみ消し》することで1マナ12/12トランプルを場に出し2回殴って勝つことを目指すデッキである。

相手を妨害するカードだったはずでは?

また、「これを生贄に捧げる」までが効果であるため、フェイズアウトされると生贄に捧げられるカードが存在しなくなるので、結果生贄にならなくなる《幻視の魔除け》も採用される。

3番目のフェイズアウト効果。たまに相手の除去もかわす。

これを集めるためのドローソースや相手からの妨害を防ぐカウンター呪文が入ると、場合によっては相手の妨害をする《強迫》や相手の横並べを咎める全体除去を無理なく採用できるを採用したのがミドルスクールのスタイフルノートである。

一度通ってしまえば二撃決殺。
だが目指す場所が一箇所であるために対抗手段がわかりやすい《ファイレクシアン・ドレッドノート》。
果たして、この混沌を貫くことはできるのか。

総括

かなり筆者の感想ではあるが「ここまでゴブリンが増えるとは」という気持ちが強い。

というのも、先に述べた通り昔のMtGは呪文が強いと言われていた。
・通ったらほぼ死である《補充》、《リスの巣》+《大地の知識》、《再活性》といった必殺のカード。
・それらを通さない《対抗呪文》・《意志の力》と言ったカウンター呪文。
・出てしまってからも《稲妻》・《神の怒り》・《火薬樽》などで処理されやすい。
など、普通のクリーチャーではライフ0まで届かないことが多く存在していた。
実際今日もゴブリンが最も多いとはいえ、コンボとコントロールを合わせると23人。半数以上が呪文を重視したデッキを選んでいた。

が、蓋を開けてみればゴブリンの包囲網が敷かれていた。
そしてゴブリン以外の横並べアグロ/クロック・パーミッションも合わせると18人。
半数に満たないとはいえほぼ半数がクリーチャー戦による勝利を目指した形だ。

クリーチャーか、呪文か。
果たしてプレイヤーたちが目指した勝利は、どのような形によるものとなるのだろうか。

(文責:とりにく)


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