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Is Ben Simmons Al Jefferson ? / ベン・シモンズは制限エリア界のアル・ジェファーソンなのか?

 規格外ルーキーのベン・シモンズを,同じく規格外の選手レブロン・ジェームスと比較するコーナー(?),今回はシュートレンジという観点から見ていきたいと思います。前回の話はこちら。

以下,12月5日時点のNBA.com/Statsのデータをもとにいろいろやっていきます。 

さて,まずは前回のおさらいです。得点・アシスト・リバウンドなどの基本スタッツとしては,ルーキー・レブロンを上回る成績を残しているベン・シモンズ,しかし彼の特異性はそのシュートエリアにありそうだ,という話でした。

↑例えばこれは17-18レブロンのショット・チャートです。広範からシュートを放っていることがうかがえます。

↑これは17-18のヤニス・アンテトクンポのショット・チャートです。レブロンとは少し趣が違いますね。レブロンよりもシュートエリアがペイントゾーンに寄っている印象です。

 とまあこのように,どんなショット・チャートなのかは選手によって個性が出ます。そんな中でも,ひときわ個性が溢れだしているのがベン・シモンズのショット・チャートです。

 このように,ほとんどすべてのシュートをペイントゾーンの中で撃っています。あえて言うと,ヤニスのチャートに近いでしょうか。

 インサイドが主戦場の選手,例えばスティーブン・アダムスのショット・チャートはこのようになっています。

 アダムスはインサイドでの合わせや P&R などからシュートを放つため,中でのペイント内でのシュートが増えるのは当然のように思われます。それでは,シモンズは?確かに身長も大きいですし,インサイドで得点を狙うのは自然なことでしょう。しかし,シモンズはボールハンドラーです。例えばショット・クロックの残り時間がなくなった時など,無理やりにでもシュートを放つ場面があるはずです。とすると,もっとあちこちからシュートを撃っていてもおかしくないはず…なんですが,そうなっていない。とにかくペイント内でシュートを撃つことを徹底している。その徹底ぶりをデータで見ていきます。

 シモンズが日本時間12月5日までに放ったシュート326本のうち,実に149本が制限エリア内のシュートです。総シュート数のうち約45%を占めています。また,制限エリアを除くその他のペイントゾーンから放ったシュートは135本,総シュートの約40%です。つまりどういうことか。放ったシュートのうち85%以上がペイント内シュートなのです。もう少し分かりやすくしましょう。1試合の中で20本シュートを撃ったとします。ベン・シモンズは,そのうち9本が制限エリアシュート8本がその他ペイント内シュートです。もうなんだ,ムチャクチャですよまったく,どうなってんだ。

(20本シュートを撃ったとして,どのエリアから何本撃つことになるのか,をシモンズとルーキー・レブロンで比較。シモンズの異質性がよく分かる)

 ひたすらペイント内を攻めるベン・シモンズ。それなら,むしろ相手にとっては守りやすいのでは?ということで,各エリアからのシュート成功率をルーキー・レブロンと比較してみましょう。

 なんとベン・シモンズ,ペイント内でしかシュートを撃ってこないとバレバレにも関わらず,その他ペイント内シュートはルーキー・レブロンと同等の成功率,さらには制限エリア内では69.1%の成功率を誇っているのです。この制限エリアシュート69.1%というのはとてつもない数字で,17-18ヤニスは72.9%(※1),17-18ケビン・ドゥラントは67.8%です。エリート・フィニッシャーに匹敵する成功率(※2)を,ルーキーのシモンズが記録しているのです。バレバレなのに。これにはアル・ジェファーソンもびっくりです(※3)。

※1ヤニスは制限エリアシュート頻度が50%を超える,つまり2本に1本が制限エリアシュート。そんな中で成功率71.9%だから,彼もまた異次元。

※2ちなみにキャリア最高レベルのFG%を記録中の17-18レブロンは成功率が78.9%。これは17-18アンソニー・デイビスの78.5%さえ超える。ちょっと意味が分からない。

※3「絶対ポストアップからシュート撃ってくる」と相手にバレバレなのに全然ターンオーバーしないでお馴染みアル・ジェファーソン。

 シモンズが「ペイント内でしか撃ってこねえ」とどれだけバレているのか,これをご覧ください。

2列目は「全シュートのうち何 % がペイント内シュートか」を表しています。ベン・シモンズは,アンドレ・ドラモンドやマックス・ザ・カンター,ハッサン・ホワイトサイドなどのビッグマンと同等の頻度でペイント内シュートを放っているのです。彼が3Pラインの外でボールを持っているシチュエーションは,ようはドワイト・ハワードが3Pラインの外でボールを持っているのと同じで,どう考えてもそのあとインサイドに攻め込んで来るにきまっています。

 こんなにもバレバレなのに,こんなにもバレバレなのに制限エリアシュートを高確率で決めるベン・シモンズ。その秘密はいったいなんなのでしょうか?ここで「被ブロック%」を算出してみましょう。被ブロック%とは,FG%と同じ要領で,放ったシュートの何%がブロックされたか,を表すものです(というか僕が勝手にそう定義して使っています)。被ブロック数(BLKA)からシュート試投数(FGA)を割ることで計算することができます。被ブロック%が低ければ低いほどブロックされにくいことを意味します。

 例えば17-18ジョン・ウォールは,制限エリアで放った96本のシュートのうち7本がブロックされています。この場合,被ブロック%は 7÷96=7% という感じです。

 17-18シーズンのデータについて,ベン・シモンズ+64選手を対象に,ペイント内における被ブロック率を算出しました。

 ステファン・カリーはペイント内シュートのうちわずか3.6%しかブロックされないという,驚異のフィニッシュ力です。次いでアンソニー・デイビス,アル・ホーフォード,そして65選手中4番目に被ブロック率が低いのがベン・シモンズです。ペイント内シュートのうちわずか4.6%しかブロックを浴びていません総シュートの87%以上をペイント内で撃っているのに?バレバレなのに?同じくペイント偏重バレバレ・クラスタであるヤニスよりも,被ブロック率が低いのは驚きです。つまりベン・シモンズのショット・チャートのヒミツは,ブロック不可能?なシュートにあったのです。総シュートに占めるペイント内シュート頻度を横軸に,被ブロック率を縦軸にとった散布図を作ると,シモンズのすさまじさがよくわかります。

 ここにさらに,過去シーズンの選手たち40名の同様のデータを重ねてみましょう。

 なんとベン・シモンズの特異性,すなわち「ペイント偏重とバレバレなのにぜんぜんブロックされない」は,シャキール・オニールに匹敵しています。ベン・シモンズ,アル・ジェファーソンかと思いきや,実はシャックだったのです!

 シモンズのショット・チャートを見て「レンジが狭くて先行きが不安」と感じる方もいるでしょう。しかし,私は全く心配していません。彼のレンジを心配することは,シャックのシュートレンジに文句を言うのと大差ないということが明らかになったからです。

 と,言うことで,彼のショット・チャートの謎は,そのアンブロッカブル?なシュートにある(かもしれない)ことが分かりました。しかし彼に対する興味はまだまだ尽きません。引き続きTwitterでベン・シモンズについて探っていきたいと思います。

(と,ここまで書いておきながら,比較用データにアルジェファを入れていないことに気が付いた。タイトルにまでしたのに。…まあいっか!)

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