Restricted Area Guard

今回は96-97シーズン以降にデビューしたガード選手(主にPG)56選手について、96-97~16-17にかけた全20シーズンに関する制限エリアからのシュートに注目していきます。

対象選手や対象データやなんやかんやは前回と同様です。

制限エリアシュートに注目していきますが、まずは考えを整理しておきましょう。ガード選手が制限エリアからシュートを撃つということは、ドライブやカットで外から中に切り込む場合が多いのではないでしょうか。だとすると、制限エリアシュートに注目することでドライブやカットからのレイアップについて推測することができると思います。制限エリアシュートが多いことはレイアップ(あるいはダンク)が多いことを、制限エリアシュート成功率が高いことはリム周りのフィニッシュ力が高いことを意味するかもしれません。

さてそれでは。制限エリアシュート試投数が50本以上の選手とシーズンを対象に、横軸に「20本のシュートを撃ったとしてそのうち制限エリアシュートは何本か」を取り、縦軸に「制限エリアシュート成功率」を取った散布図を作ってみました。「20本あたりの制限エリアシュート試投数」は「制限エリアシュート総試投数/シュート総試投数×20」で計算しています。

なるほど、全体的な傾向として特に目立つものはないようです。制限エリアシュート試投数が多い/少ない、制限エリアシュート成功率が高い/低いの間にはなにも関係性はないようです。

データ点は全部で335あるのですが、シュート20本あたりの制限エリアシュート試投数[横軸]と制限エリアシュート成功率[縦軸]について中央値を求め、中央値より大きい/小さいで散布図を色分けするとこうなります。

シュート20本あたりの制限エリアシュート試投数[横軸]の中央値は5.9本でした。なので、20本あたり6本以上の制限エリアシュートを撃つガード選手は「制限エリアシュートが多い」あるいは「レイアップやドライブによるアタック回数が多い」と言えるかもしれません。制限エリアシュート成功率[縦軸]の中央値は57.1%でした。なので、制限エリアシュート成功率が57.1%よりも高い選手は「フィニッシュ力が高い」と言えるかもしれません。

それぞれの中央値に対する大小によって「制限エリアシュートが少ない&制限エリアシュート成功率が低い(左下)」「制限エリアシュートが少ない&制限エリアシュート成功率が高い(左上)」「制限エリアシュートが多い&制限エリアシュート成功率が低い(右下)」「制限エリアシュートが多い&制限エリアシュート成功率が高い(右上)」の4つのゾーンに分けることができます。それぞれのゾーンに所属する代表的な選手には誰がいるのか、一つずつ見ていきましょう。

まずは左下の「制限エリアシュートが少ない&制限エリアシュート成功率が低い」ゾーンに注目します。

グラフのうち、チャウンシー・ビラップス(青点)、ギルバート・アリーナス(赤点)、ケンバ・ウォーカー(薄青点)、リッキー・ルビオ(白点)です。特にビラップスがこのゾーンの代表格と言えるでしょう。制限エリアシュートが高くない、つまりフィニッシュ力に不安がある(あった)選手である一方で、制限エリアシュートをあまり撃っていない選手でもあります。もしかするとこのゾーンに属することは、自分のフィニッシュ能力を考慮してあえて制限エリアシュートを撃っていない、ある種スマートな選手であることの証であるかもしれません。…考えすぎ?ビラップス、ルビオ、オースティンなど、スコアラー系ガードではない選手が多いこともこのゾーンの特徴かもしれません。

次に左上の「制限エリアシュートが少ない&制限エリアシュート成功率が高い」ゾーンを見てみます。

このゾーンにはスティーブ・ナッシュ(橙色点)、ステフィン・カリー(青点)、マイク・ビビー(薄青点)が多く含まれています。ナッシュとカリーは3Pシュートの名手ですし、ビビーもなかなか悪くないシューターです。外角をメインとしつつそれをおとりに中にアタックできることが考えられます。あるいは純粋にフィニッシュ力が高いのかもしれません。ポイントガードについて制限エリアシュート成功率と3Pシュート成功率の相関を取るのも面白そうですね。ね~。

右下の「制限エリアシュートが多い&制限エリアシュート成功率が低い」ゾーンを見てみましょう。

ステフォン・マーブリー(橙点)スティーブ・フランシス(赤点)、タイリーク・エバンス(薄青点)、オースティン・リバース(濃灰点)がこのあたりに属するようです。しかしタイリークはすごいですね…。シュート20本のうち10本以上が制限エリアシュート…。タイリーク、ドライブからの切り込みがキレッキレであることが想像される一方で、攻めのパターンがドライブに偏っており相手にとって守りやすい≒制限エリアシュートの成功率が低いという関係も想定されます。…とはいえ60%近い成功率を納めたシーズンもいくつかあるようなので、分かっていても止められないドライブの切れ味の鋭さをうかがうこともできます。

最後に右上の「制限エリアシュートが多い&制限エリアシュート成功率が高い」ゾーンです。ドライブ等でガツガツ行きつつしかも成功率が高いという、リムアタックの量も質も高い選手のゾーンがここです。

アンドレ・ミラー(黄点)、トニー・パーカー(灰点)、ゴラン・ドラギッチ(赤点)はここに多く含まれています。ミラーはドライブのみならずポゥスタップからの攻撃も得意としていた(る)ので納得です。パーカーとドラギッチはシュート20本のうち7,8本も制限エリアシュートを撃ちながら成功率が60%を超え、しかも70%に迫るシーズンもあるという怪物です。すごすぎる…。特にドラギッチキャリアを通じて制限エリアシュートが60%を切ったシーズンが1シーズンしかないというすさまじさです。すごい…。

ここまでで、4つのゾーンについて代表的な選手を見てきました。そこでそれぞれのゾーンを次のように呼ぶことにします。

それではこのゾーンについて、若手のガード選手がどのあたりに所属するのかを見てみましょう。以下若手選手については「制限エリアシュート50本以上」の制限は掛けていません。

まず今季3年目を迎える若手ガードのエルフリッド・ペイトン[Payton]、ザック・ラヴィーン[LaVine]、ジョーダン・クラークソン[Clarkson]、マーカス・スマート[Smart]、シャバズ・ネイピア[Napier]の5選手を見てみました。

スマートとネイピアはビラップスゾーン、制限エリアシュートが少ない&成功率が低い選手のようです。逆にペイトンは制限エリアシュートが多い選手で、かつその成功率は悪くないようです。ラヴィーンとクラークソンは一般的な制限エリアシュートながらその成功率は60%を超え優秀であることが分かります。実はこの二人が位置しているあたりはアレン・アイバーソンやラッセル・ウェストブルック、アイザイア・トーマス(BOS)などがいるあたりです。

ラヴィーンとクラークソンは将来的にアベレージ25点を狙える、あるいは超えるスコアリングガードになる…かもしれませんね。

次に今季2年目のシーズンを迎えたディアンジェロ・ラッセル、エマニュエル・ムディエイ、デビン・ブッカー、キャメロン・ペイン、ダンテ・エクサム、TJ・マコネルの6選手について見てみました。

ムディエイはタイリーク ゾーン、制限エリアシュートは多いが成功率が50%を切っているようです。これは…今後の改善に期待です。ペインは制限エリアシュートの成功率が高くない、特に今季は(ケガ明けとはいえ)成功率が30%しかないようです。試投数が少ないとはいえ、これを改善しないと「点の取れるガード」にはなれない…かもしれません。点の取れるガードを目指すべきかどうかは別のお話です。ブッカーやルーキー・ディアンジェロはナッシュ・カリー ゾーン、試投数は少ないが高確率の選手になる可能性を感じさせます。数年後には2選手のようなスーパースターになっている…かも?しかし今季のディアンジェロ[D'Aangelo16-17]は制限エリアシュート成功率をガクっと落としているようです。これは…今後に注目ですね。エクサムは制限エリアシュートが多いが成功率は一般的、タイリーク ゾーンとパーカー・ドラギッチ ゾーンの狭間のようです。今季のマコネル[McConnell16-17]は制限エリアシュートが多く成功率も高い、パーカー・ドラギッチ ゾーンに位置しているようです。これはもしかすると、2人のようにリム周り最強選手になるポテンシャルが…?!

最後に16-17シーズンがルーキーシーズンであるマルコム・ブログドン、アイザイア・ホワイトヘッド、クリス・ダン、ジャマール・マレー、バディ・ヒールド、ケイ・フェルダー、タイラー・ユリス、アンドリュー・ハリソンの8選手について見てみました。

なるほど、ルーキー全員が…少なくとも今回取り上げたルーキー全員が制限エリアシュート成功率の中央値57.1%よりも低い成功率であるようです。なるほど、この8選手の中にはリム周りのフィニッシュ力が特徴の選手がいなかったのでしょうか。あるいは、あるいは…。マレーは制限エリアシュート成功率が悪くないようであり、かつシュート20本あたりの試投数が多くないタイプのようです。将来的にはナッシュ・カリー ゾーンに位置する選手になる可能性を感じさせます。

ということで、今回はひたすら制限エリアシュートについて見てきました。今回のまとめ。

・パーカーとドラギッチは制限エリアシュートの権化
・ナッシュとカリーは制限エリアシュートが多くはないけど成功率は凄まじい
・クラークソンとラヴィーンは未来のスター・スコアリングガード?
・ブッカーとディアンジェロとマレー、ゆくゆくはナッシュ・カリー ゾーンに?
・がんばれタイラー・ユリス、大丈夫、ナッシュもルーキーシーズンは制限エリアシュートの成功率が低かった。

↑ルーキーシーズンにおけるシュート20本あたりの制限エリアシュート試投数[横軸]と制限エリアシュートの成功率[縦軸]

それではまた次回。

【おわり】

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