IBDとサルコペニア
お久しぶりです。そふぁーです。
最近、色々な仕事を締め括らねばならず、忙しい日々が続いています。
皆さんは『サルコペニア』というものをご存知でしょうか。Twitterのつぶやきでもお伝えしたように、筋肉量の低下などを基礎とするものですが詳しい定義については議論がまだあるようです。
ところが、IBDとサルコペニアについては2017年あたりから報告が散見されています。防衛医大の穂苅先生を始めとした高齢者IBDの議論でも注目されてくると思いますので、早い段階で今ある情報を纏めてみようと思います。
1.サルコペニアと腸内細菌叢
いくつかの報告がありますが、南砺市民病院の清水先生がお書きになった報告を紹介します。
タイトル:Gut microbiota in common elderly diseases affecting activities of daily living.
著者:Shimizu Y
雑誌名等:World J Gastroenterol. 2018
ここではサルコペニアと腸内細菌叢に関しても書かれていますが、やはり酪酸がミトコンドリアに作用し筋肉量の維持していることが示されています。あくまでも動物実験レベルではありますが、腸内細菌叢と筋肉量の維持には関係があると思われます。加えて、他の報告では gut-muscle axis (腸-筋肉 軸)についても報告されていることから、確度は高いです(Ticinesi A et al. Nutrients. 2017.) 。
2.ビタミンDとサルコペニア、そしてIBD
元々、小児IBDではビタミンDの欠乏が指摘されていました。これは、栄養状態の悪化が起因となりますが、IBDでは過度の食事制限を行う例も少なくないため、成人でも栄養不足が指摘されています。
私は栄養士ではありませんので、細かいことは申し上げられませんが、IBD食であっても栄養バランスを整えることは可能です。注意すべきは小児IBDにおいて、ビタミンDの欠乏がサルコペニアのリスク因子であるという事です(Mager DR et al. Eur J Clin Nutr. 2018)。
IBD患児のご家族は、可能な限り栄養指導を受け、栄養環境を整えることが肝要だと思います。
3.IBDとサルコペニア
栄養バランスの整った食事を推奨することは、サルコペニアに触れたものでも述べられています(Adams DW et al. Inflamm Bowel Dis. 2017)。また、サルコペニアが術後の合併症と関連するという報告もあります(Ryan E et al. Inflamm Bowel Dis. 2019)。
結語
今回の出典論文は、今までご紹介した論文に比べ検証が不十分なものも多く含まれています。私自身はサルコペニアとIBDの関連については、原因ではなく結果だと考えており、IBDの副次的影響だと感じます。
要は炎症による苦痛で運動量は減り、食事への恐怖から栄養が偏り、運動量なども減ることが問題だろうと考えます。
しかし、同時に腸管免疫の維持には適度な運動も重要で、恐らくサルコペニアによってIBD症状がより悪化するだろうとも思うのです。
今後の研究に期待が持たれますが、これらの結果を受けて無理な運動をすることは避けてください。無理をしない範囲の運動と、適切な食事、標準治療を正しく受ける事、そして何よりも根拠のない医療に手を出さない事が重要です。
あれはいけない、これはいけない、この食事法なら助かる等というのは絶対的に嘘です。根治を謳うものも、嘘と欺瞞に満ちています。
なぜなら、それをオープンで発表できていないからです。
私が今回紹介した Inflamm Bowel Dis, Eur J Clin Nutr, Nutrients, World J Gastroenterol などの雑誌は多くの専門家が注目し、間違いがあると感じれば徹底的に解析されます。そうすることで医療の正しさと、患者さんへの安全な医療を提供するため努力しています。
皆さんの目の前にいる IBD 専門医らは、十分にそうした修練を積んでいる人たちであろうと思います。その辺りはぜひご考慮の内に入れてください。
信頼できる医療に出会えることを心より祈っています。
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