関野佳介「おもいおもい揺れる(2日目)」
2023年11月5日(日)
朝、宿でコーヒーを飲みながら丹治さんと話した。彼女は沖縄で彫刻を作っている。彼女は沖縄で彫刻を作っている。つい数日前に、様々な分野で芸術に関わる人たちの労働について議論するイベントに参加したとのことだった。話をしているうちに、私も気づかないうちに不安定な労働環境に巻き込まれていっているような気がした。報酬を伝えられないままスケジュールを確保されること、具体的な労働時間や制作物が提示されないままの現場に入ることなど、改めて気をつけないといけない。「やりがい」や「知り合いだから」という理由で許容し仕事を受けていたら、自分が人を雇う側になったときに、そういう常識感覚のまま行動してしまいそう。それでは負の連鎖が続くだけで、何も改善されない。
とはいえ現在の私の意見では、撮影を進めながら作る手法が映画制作の理想だと思う。でもそれでは終わりがどこに来るのか最初の段階では分からない。だから参加する人の拘束時間を決められない。こうした矛盾があるからこそ、私はできるだけ無理のないよう、日記を書くように映画を作りたい。1日単位の労働時間で考えることはできる。だから長時間労働は避けないといけない。撮影はある程度余裕をもって、例えば1週間に1日集まって撮影をする。そして撮った映像を見て次の週に撮るシーンを決める。このような撮影を3ヶ月続けると約12日間の撮影ができる。期間が長すぎるのもモチベーションの低下に繋がるので、そのバランスも取りながら全体の撮影日数を決める必要がある。
でも正直な話単純に、不必要に苦しい思いはしたくない。制作に必要な心と身体の健康、なにより一緒に作る人たちとの関係は保っていたい。
丹治さんとの会話がきっかけでこのようなことを考えていたら、あっという間に集合時間の11時になった。駅近くからシャトルバスに乗り、年1回御殿場で開かれている「アークラ大サーカス」という、クラフトアートフェアに向かった。バスはほぼ満席の様子。私は勝呂さんの隣に座り、彼がこれまで手がけてきたお店やものづくりの話を聞いた。
アークラ大サーカスの会場ではサーカスのテントのようなステージがあり、バンドたちが生演奏していた。各出店ブースには素敵な器や一輪挿しなど手工芸品がたくさんあって、欲しいと思うものもいくつかあった。でも持って帰ることを心配してしまって買えなかった。
会場がとても広いので人が多くても気にならない。食べ物の屋台に並ぶのも、全然待てる長さの列だった。それぞれが食べたいものを各自で探し、私はガイヤーンライスというタイ風の焼き鳥丼を食べた。量も味もばっちりで、満腹とはいかなかったけれど満足。屋台で満腹まで食べようとしたらキリがない。
勝呂さんの知り合いのバンド、ハモニカクリームズのステージを観た。ハーモニカ、バイオリン、アコギの3人編成のバンドで、身体が勝手に動きだすような踊れる曲もあれば、スローでうっとりしてしまう曲もやっていた。周りを見ると皆それぞれ自分なりに音楽に乗っていて、恥ずかしそうに俯きつつ身体を揺らす人、手拍子をする人、ステージに届くんじゃないかと思うくらい飛び跳ねている人たち、みんなおもいおもいの動きをしていた。隣で途中から演奏を聴いていた森岡さん親子が、ノリノリで踊っている様子がなんだかとても好きだった。
アークラ大サーカスの後はずっとnoctariumで過ごし、夜は勝呂さんの友達たちや神田さんも含めみんなで夕飯を囲み、お酒を飲んだ。メニューはピーマンと椎茸の焼き野菜、クリームチーズを使ったソース、マグロと茗荷、チンゲンサイのサラダ、ニラ玉だった。ニラ玉が美味しすぎて何度も食べた。
今日何より驚いたのが、私が今滞在しているnoctariumという宿泊施設は、勝呂さんが3年以上かけて自分で改修したということ。飲食を中心にアパレルや家具屋さんなど、好きなことを全部やっているんじゃないかと思うくらい活動が幅広い。こうやって自分の手を動かして何かを作れる人にとても憧れる。なんとなく私は、今回の滞在でマウント劇場とnoctariumや勝呂さんについてもう少し知りたいと感じた。
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