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丹治りえ「滞在レポート(まとめ)」

MAW2023の御殿場滞在を終えたあと1週間ほどいろいろ立ち寄りをしながら沖縄に帰省し、このレポートを書いています。昨日まで御殿場に居たような、遠い日のような不思議な感覚ですが、半袖で文章を書いていることを自覚し沖縄にいることを実感しています。

応募した理由を再度確認してみると、「活動拠点の沖縄県は観光立県であり日々たくさんの人々が訪れています。わたしは沖縄に移住し15年になります。住み始めた当初の土地を知る気持ちや、目に入る景色に対する新鮮な感覚が薄くなっていると感じています。」と書いてありました。

御殿場で旅人として過ごす中で、この感覚が少し変わってきました。応募してよかったと心から思いました。


富士山について

御殿場がここまで富士山に近い町だとは思いませんでした。
地名に富士や裾野や高原など山を連想させる文字が入っていなかったからかもしれません。
3日目の午後、空が落ち着いて富士山が見えた途端、どばーっと私の中に富士山が入ってきました。

素晴らしき景色。

ホストの宿のマウント劇場オーナー勝呂さんが話していた湧水と小川のことや、レンタカーを借りていった駒門風穴の洞窟の壁肌、陸上自衛隊東富士演習場の一面のススキ、富士スカイラインの紅葉、富士宮口五合目の地肌。Gotennba apartment storeから見た夕焼けが映る富士山。寝る前に浴びるシャワーと毎朝水筒に入れる水。

すべてが繋がってすべてが富士山かもしれないと感じるようになりました。

今のわたしたちの生活はほとんどのモノや事、概念に名前が付けられていて少しの差異を区別できるようになっており、便利ではあるけど逆に苦しめられたり、狭められて分断を生んでいるのではないかと感じることがあります。でも「一つ一つをきちんと見ていけばそんな固有名詞なんて気にしなくていい」と大きな富士山をいろんな角度から感じることで解放された気がしました。


陸上自衛隊とキャンプ富士(米軍)について

御殿場に来て富士総合火力演習が行われる陸上自衛隊東富士演習場が富士山の麓に広がっていることや3つの駐屯地があること、沖縄のキャンプ瑞慶覧に司令部をおくキャンプ・バトラーの管轄下のキャンプ富士があることなどを知りました。沖縄県にもたくさんの自衛隊の基地や米軍の基地があり、諸問題が絶えず起きていますが日本の他の地域にもこういった基地が点在しており生活と密接に繋がっていることがわかりました。
どうしても自分が住む場所のことにフォーカスし、視野が狭くなってしまうのでとても勉強になりました。


Gotenba apartment storeについて

今回MAW初参加にも関わらず滞在中に展示をさせていただく機会を得ました。MAW2022御殿場の旅人、安里槙さんの企画でMAW2021松崎町の旅人、堀園実さんとの3人展でした。展示初日にはトークイベントもあり、アーツカウンシルしずおかの立石さんもお呼びしてアートと制作と生活、そしてアートと地域との関りについてお話をしました。

旅人として御殿場のみなんさんと話す(言葉)だけでは伝わりにくい部分を、作品を通して会話できたことは素晴らしい時間となりました。
現代アートは決して即効性があるものではありませんが、社会や生活から出発している作品が多くあります。今すぐにではなくても、数日後、数年後、違う場所に行ったとき、その時その人の役に少しでも役立つときがあるのと信じて制作しています。

今回の展示にご協力いただいたGotenba apartment storeは家族や友人、仕事の打ち合わせや、近所の散歩途中のおじいさんなど、たくさんの方が訪れる素晴らしい場所で、ホストの森岡さんが運営している「みんなの一箱図書館さかいめ」もあります。
そこにギャラリーがある意味は大きく、緩やかに文化とアートが繋がって少しづつ根っこが伸びていくような、そんなことが実感できる展示でした。

ホストの富士文化ハウスとマウント劇場(noctarium)
御殿場のホスト富士文化ハウスは9人のメンバーからなる有志のWebマガジンOn Ridgeline 編集長、みんなの一箱図書館さかいめ館長の森岡まこぱさん、オーダー専門の花屋「フローリック」「GOTEMBA MEETING」を主催の勝亦恵梨華さん、建築の設計とGotemba Apartment Storeを営んでいる森谷洋之さん、マウント劇場(noctarium)を営む勝呂恒介さん、アーティストのちばえんさんGotemba Apartment Storeの店主森谷雅美さん、写真家の鈴木竜一朗さん、グラフィックデザイナーのMayaさん高嶺の森コテージの企画・運営・支配人のカンダトモコさん。それぞれ勢力的に活動しながら個性あふれるメンバーが運営しています。詳しくはこちら(https://note.com/microart2023/n/n76e93a3c3445?magazine_key=mf6f7997eca0c

今年で3回目のMAWホストということもあり、必要な時は随時サポートしていただきながら良い意味でいい感じにほっといてくれました。旅人の状態を維持し、自主性を持ち続けられたのもホストの方々の懐の深さだと思います。(知り合いが沖縄に来たらいろんな情報を話してしまうので反省しました。実感と知識は違うのです。)

また、宿泊場所となったnoctarium/マウント劇場は元映画館だった場所を改装してゲストハウスにしています。400人規模の映画館だったのでスクリーンも大きく、ソファが散らばった館内は贅沢すぎる空間です。
今日の旅の報告や思ったことをオーナーの勝呂さんと旅人の國吉さん関野さんとご飯を食べながらよく話しました。
一人旅は嫌いではありませんが、一日の報告ができるこの安心感、なんでしょう。子ども時代を思い出しました。たくさん遊んでいろいろなことに出会う日々、一人で反芻するのではなく話して(外に出す)、共有しそれぞれ聴くことができる。一人旅でもなく友人や家族との旅でもない不思議な心地よい旅でした。
それは、富士文化ハウスの経験値とたくさんのお客さんを迎え入れてきたnoctarium/マウント劇場の勝呂さんのなせるわざなのかもしれません。


御殿場市への要望

もし、具体的に御殿場市に希望を述べるとすると、歴史を辿れる資料館や情報サイトのようなものがあるとより旅が繋がることができてよいのではないかと思いました。MAWを通して旅人として参加した私は、話を聞ける方々がおり且つ交流が生まれ相乗効果ありますが、普通に旅行で来た場合は少しハードルが高いように感じました。


おわりに

応募時に書いた土地を知る気持ちや、目に入る景色に対する新鮮な感覚は旅人として御殿場に滞在し思い出すことができました。小さいことから自分の力ではどうしようもない大きなことまで、日々の生活の中で探る感覚は大事に育てていきたいと思います。

都心では見えない地方にいるからこそ見えるものが必ずあります。
そして都心を支えているのは地方でもあります。

今後もそれぞれの土地のマイクロから日本のマクロへと新しい視点で見ることができればと思います。そして、これからも制作活動を頑張ってまいります!
充実した滞在をサポートして頂いた富士文化ハウスのみなさま、夕食会やGotenba meetingでお話しくださった御殿場のみなさま、この事業を企画運営してくださったアーツカウンシルしずおかのみなさま本当にありがとうございました。またいつか御殿場、静岡に必ず伺います。

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