2020.04.05_Sun:総会出席確認方法の改革

1. 問題の所在
1) 組合(正確には理事会だが)にとって、管理組合総会は年に1度ある、晴れの舞台(かな)。それまでに行なってきた政策実行の評価とともに、次期政策に対する住民の意思表示がなされるからだ。

管理組合の命運を決するような重要案件(例えば、修繕積立金の長期平準化への移行など)を否定でもされたら、それは理事会不信任を意味するので、総辞職するしかないわなと思う。

従い、理事会にとって、賛成票を可決ラインよりも多くすることが最重要となる。賛成票というのは、総会に出席して1票を投じてくれる区分所有者のみならず、各議案に関する議決権行使所書、他の人に議決権行使を依頼する代理人届出書も含むというのは、説明は不要だろう。

2)区分所有権法は、総会の成立要件(定足数)として、
a)区分所有者の半分以上の人数;および、
b)議決権総数の半分以上の議決権
を要求している。人数と議決権ともに要求しているのは、一人で複数の住戸を所有していたり、住戸の広さ等の事情から「1住戸1議決権」ではない場合があるからだ。広い住戸は2票持つなどという実例は多い。

人数と議決権ともに議論するのは煩雑になるので、以下では、「1住戸1議決権」という想定で進めていきたい。

2. 総会出席通知書
管理組合としては、区分所有権法の規程に従い、定足数としては半数以上の出席者、賛成してもらうためには、その出席者の半数以上の賛成を集めないといけない。もちろん、重要事項や建て替え決議のように法定加重されている場合も有るし、管理規約に別段の定めがなされていることもあるが、ここでは単純に定足数半数、賛成は出席者過半数ということにしておく。

総会に出席するかどうかを、区分所有者が理事会に通知するには、総会議案所の中に綴じ込まれている(あるいは別紙として配布されている)出席に関する通知書(以下、「出席通知書」という)に記入して、マンションの玄関やカウンターに設置している回収箱に投函するというやり方が一般的であろう。

出席通知書には、氏名・部屋番号の他に、以下のいずれかを選択する(丸印をつける)ことになる:
1)総会に実際に出席するかどうか?
2)欠席の場合、
 a)各議案に対する賛否の事前表明(議決権行使);または
 b)議決権を代理行使してくれる代理人の氏名(代理人届出書、単に「委任状」と呼ばれることも多い)

代理人指名の場合、実務としては、総会の議長(=理事長)を代理人として指名するか、予め定められた一定の要件を満たす者を指名するようなフォーマットになっている。私の豊富な経験から判断すると、限りなく100%に近い確率で、議長が指名される。

IT化が進んだマンションではネットを通じた通知を併用しているところもあると聞く。ネット経由であろうが、紙によるものであろうと、出席通知書の回収率は総会での定足数充足と議案賛否の票読みに多大なる影響を与えることとなる。

3. 回収率を巡る問題
理事会側としては、区分所有者がさっさと出席通知書を出してくれれば問題はない。特別な督促をしなくても、提出期限までに100%近い回収率を達成できる意識高いマンションもあれば、うちのように締め切り前日になってもまだ30%程度とかというマンションもある。電話による督促を実施して無理矢理に80%くらいまでに持っていくのだが、結構面倒・・・・。それは別のエントリーにも書いたので、ここでは省く。

自発的に出してくれない理由には様々なことがありうるが、ここでは「総会招集通知書から出席通知書を切り取って、必要事項を記入した紙を回収箱に持っていく」のが面倒だ、あるいは忘れてしまうということがかなりの部分を占めるということを指摘しておくに留める。

4. 解決方法
この面倒臭さを取り除けば、回収率はアップすると考えるのが、論理的帰結であろう。そこで、いろいろと方法を検討した。

この方法の要件としては、区分所有者のITリテラシーに応じて、次のような対応が必要だと考えられる。
1)IT機器が使える人向けには、少々専門的でも良い
2)IT初心者には、IT機器使用前提は無理。もっと楽なツールがほしい
3)デジタルディバイは紙でも仕方ない

また、管理組合側としては、以下の論点も考慮すべきだと考えた。集計しやすいというのは重要で、これまでは紙の出席通知書を見ながら、管理人さんが手打ちでエクセル入力していたので、この負担は下げたいところである(うち、500戸以上だから、結構な手間になる)。
1)わかりやすい操作:使えないと「使い方教えて!」という問い合わせが殺到する;
2)集計の手間を減らしたい;
3)あまりITに詳しくない管理人でもメンテできるようにしたい:毎年最低限の修正で済むようにしたい;
4)在外の区分所有者の取りこぼしを減らしたい

これらの制約条件を考慮して、実際に採用した方法を紹介していく。ちなみに、ひとつの手段にこだわるつもりはなかった。全部に対応しているツールがないのは自明だからだ。

まずはだれでも考えつくインターネットの利用。3つの選択肢を考えた。
a)Web集計(オンラインアンケート)
b)グループウエアの利用
c)メールによる集計

a) オンラインアンケートによる提出方法に付いては、「なりすまし」を防止するのがキーである。そのため、誰でもクセスできる方法ではなく、区分所有者の認証をどうするのかという問題がある。うちは住民用のホームページを立ち上げているので、そこからリンクを張るのが王道だろう。でも、ホームページを見る人自体が少ないので、議案書でアクセス方法を案内しないといけなくなる。そうなると、議案書をみた区分所有者以外にもアクセス可能となる。これを防ぐためには全区分所要者に個別にID/Passwdを発行し、漏洩しないように伝えるという膨大な手間がかかることになる。結局、無理と判断した。

b) グループウエアは、「コラボ」のような閉じたマンションに特化したグループウエアを利用するということである。だが、既に普及しているマンションなら容易だろうが、出席通知書を集めるだけの目的でこれらのツールを新たに普及させるのは無理。実際、過去にグループウエアを導入し、各住戸にID割り振ったのであるが、結局誰も使わなくなってしまったという苦い経験が有る(苦笑)ので、これも実用的ではないと判断せざるを得なかった。

c) メールによる集計は、予め用意した表計算の回答用シートをダウンロードしてもらい、出席・議決権行使・代理人指名のいずれかにマークを入れて、メール添付で専用のメールアドレスへ送信してもらうという方法である。これもシートのダウンロードの問題があるが、住民用のホームページに置くしかない。メール送信欄のアドレスを見て「本人とみなす」ということにして、認証の問題にはある程度目をつぶらざるを得ない。郵送よりも便利なので、実際は在外の区分所有者専用の方法である。

a~cいずれの方法をとるにしても、インターネットを使える住民が対象とならざるを得ないので、IT初心者/デジタルディバイドには無縁のツールである。それでも、、在外区分所有者を取りこぼさないようにするにはこの方法しかないということで採用した。

次に、インターネットを使えない区分所有者向けの代替え手段を2つ考えた。

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