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6月27日木曜日、ライブシアター栗橋にて。

本投稿にはストリッパー黒井ひとみ氏が登場する。普段私は「ひとみさん」と呼んでいるが、以下、文章の体裁も含めて「黒井ひとみ」と敬称略にて表記する。

解雇を告げられたのは6月24日(月)の朝だった。正確には1ヶ月前の5月末に「このままの勤務態度では契約更新できない」と解雇通告があり、6月の勤務態度によって継続か打ち切りかを決めるということだったが、結局上が下した決断は「打ち切り」だった。

「ふざけるな。私は飲食業界に丸9年も身を置いていて、解雇になるほど酷い勤務態度を取るなんてこと、私は金を積まれたって絶対しない」

私から言わせればこの解雇通告は言いがかりも甚だしかった。「改善もみられないし、私(店長)の指摘に聞く耳をもつ姿勢すらみられない」というのが今回の決め手らしいが、私がこれまでにどれだけ言いつけを守って、店舗の調理マニュアルに従って、指摘された勤務態度も、どれだけ自分の中で責任をもって向き合ってきたか……そう店長に詰め寄ろうとして、結局やめた。そう、どんなに自分が努力したと思っても、社会に出れば上司や上に付く人間の裁量が全て。私は黙って上の判断を承認し、その日の出勤をもって店を後にした。

片道約2時間の帰り道、電車のなかで私は人目もはばからず泣いた。頭痛と吐き気でその場に倒れこんでしまうのではないかと思ったほどだった。ただただ悔しかった。

6月27日(木)、私はライブシアター栗橋にいた。目的は私の推し「黒井ひとみ」がホームに立つ姿を、この目に焼き付けるためだ。もともとこの6結に栗橋を訪れる予定だったが、去る6月11日に突然の閉館を告げるニュースがあり、その瞬間から私は何が何でも栗橋へ向かうことを心に決めていたのだった。

さて、この日最も心を動かされたのは1回目「成せないことに慣れてしまうなよ」だった。……いや、その後の反戦歌3部作にも圧倒されたのだが、その日の傷ついた心に一筋の光を与えてくれたのは初回の新作だった、ということである。

冒頭の、主人公がとある姐さんに電話をかける場面。「本当は向いてない」「でも諦めきれない」といった旨の言葉が流れた後、シルクの練習をしている黒井ひとみがステージに現れる。その表情は、いつも客席から拝見している柔和なものではなかった。とても厳しく、険しい、何かが胸のなかでまとまっていないような、そんな顔つきだった。

無理もない。新作でシルクに挑むこと、2回目以降に反戦歌3部作が控えていること、パレスチナや戦争のこと、そして、栗橋の閉館のこと。当人ではない私でもこれだけの懸念材料が思い当たるのだから、当の本人が抱えているものなんて、その想像を絶するほど過酷なものだろう(勝手に推測してごめんなさい)。

それでも黒井ひとみは、舞う。栗橋、つまり自分のホームの閉館を知ってもなお、そこで自身の役目を全うする。ましてや、これまでになかった新しいステージを、ありったけの笑顔でやってのける。「陰があるからこそ人は輝ける」そんなことを誰かが言っていたが、まさしくそれを体現したようなステージだった。

客席に向かって颯爽と手を伸ばしながら笑ってみせる黒井ひとみを見て、気づけば私はボロボロと涙を流していた。「成せないことに慣れてしまうなよ」その言葉は、この日の私の胸に強く刻まれたのだった。

さて、マイフェイバリット黒井ひとみは、栗橋の閉館興行の前後からまさかの8連投を行なうという。そうデジタイムの際に聞かされたときは文字通り目が丸くなった。私は27連勤をしてぶっ倒れて、そのままドクターストップによって退職した過去を持っているが、踊り子さんに置き換えたら3連投の途中で倒れたってことであって(そして3連投なんてもはや日常)。本当に、踊り子さんの体力・精神力には圧倒される。

いや、それでも8連投という言葉には震えるが。。。。。

なんだか8連投を終えたら黒井ひとみはそのまま超新星爆発のごとく弾け飛んでしまうのではないか、とも考えてしまう。その一方で、私は黒井ひとみが8連投を終えた後、どんな選択をしようとも、その全てを尊重したいと思っている。

FREE PALESTINE
戦争反対
生きてるって最高!!!

そう声高に叫ぶ黒井ひとみは、最高にクールでかっこよくて、私の憧れだ。

【6月27日木曜日、ライブシアター栗橋にて。】

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