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誰も知らないメロディ

船の上で生まれ、生涯を海の上で過ごしたピアニストの男の物語。

1998年のイタリア映画
「海の上のピアニスト」

名作だった。


実在したかどうかは知らないが、ノンフィクションなのかしらと思ってしまうほどだった。




"何かいい物語があって、それを語る相手がいる。それだけで人生は捨てたもんじゃない。"

という名言、ほかの日本の映画でも引用されたりしていて、わぁっと驚いたしなんか嬉しかった。アカデミー賞受賞してるんだって。すごいね。自力じゃあ知ることが出来なかった映画だったし、知ることが出来て私の心はまた一つ豊かになった気がした。






ピアノの演奏を録音している時に、恋に落ちるシーンがある。私、人が恋に落ちる瞬間を見たんだ!すっげえ!って興奮した。


すごいシーンだ。
あれ即興だったんだろうけど、その瞬間に演奏していた"Playing Love"という曲。なんだよあの曲。
すごく美しくて儚くて切なかった。
映画を観終わってすぐに調べてApple Musicでダウンロードした。
今この記事を書いている背景でも"Playing Love"が流れている。

私も曲を作る人間だから、心が音になっていく感覚にすごく共感した。すごくわかる。
こんなに美しいメロディを生み出す瞬間の心の中を考えたら、そんな体験をした主人公が尊くて堪らなくなった。

そんなことを思いながら、
彼の生涯を想いながら、
曲を作り進めていった。




ネタバレになるけども、レコード会社と契約するために録音した音だったんだよ、"Playing Love"。それなのに結局世に出て日の目を浴びることはなかった。
現代の私たちがその曲を聴けるってなんだか不思議だ。でも、聴けたほうが嬉しいから誰かが見つけて残しといてくれてよかった。

「誰も知らないメロディ」
ってつまりそういうこと。




ヒューマンドラマで、しかも主人公が女性か子供だとより感情移入して作品に入り込める。

でも「海の上のピアニスト」は、男の生涯を描いた話だ。

何度か迷ったりもするけど、自分の運命はこうなんだ、と決めた生き方を貫く姿はすごくかっこよく感じた。

男女が平等になっていく社会でありがたいところたっくさんあるけど、わからない部分もあるし、わかってもらえないことたくさんある。

私自身は、変わっていくことも恐れていない。
むしろそれが自然だと思ってる。
だから、こっちのほうがいいかも。こっちのほうが楽しそうかも。と思ったら、飛び込んじゃうかもしれない。
だけどこの主人公は、飛び込まなかった。
貫いた。

だから伝説になった。
すごい話だ。




ピアニストとして、音を生む者としての共感はあったけど、生き方に関してはかっこいいなあと思ったくらい。私だったらそっち選ばない。
このアルバムの曲たちの中では唯一、一歩引いた違う目線で作った曲だ。






一歩引いた目線で作った、という話を汲み取ってくれたレコーディングエンジニアの兼重さんは、一歩引いて"この歌を歌う人になったらいい感じになると思うよ"みたいなことを言ってくれた。

感情的にはならず、穏やかで、母性もあって、やわらかくて笑顔で。

意味わからないかもしれないけど。

去年末に、結婚して静岡で暮らしている先輩のお家に遊びに行かせてもらった。3歳の男の子と1歳の女の子がいて、友達になって本気で遊んだ。可愛くて堪らなかった。
1歳の子には"大きくなったら女子会しような"とか言ったり。3歳の子は別れ際に"またね〜ぎゅー!"と、私のことを抱きしめてくれた。
可愛くて堪らなかった。

その時のことを思い出すとにんまりするので、子供たちを思い浮かべながら歌った。


あと、曲全体のキーワードがどうしても"海"とか"船"とかで、メンバーのアレンジがちゃんと"海"とか"船"の係をやってくれていたのがとっても嬉しかった。

サブリミナルな効果ではあるかもしれないけど、波の音を表現するために初めて触った楽器があった。いや学生の頃に音楽室にもしかしたらあって触ったことあったかな。

オーシャンドラムって言うらしい。

サ〜〜〜 ってやつ。


あれも思いっきり動かすとすぐ

ザ〜〜〜 ってなるから、慎重にやった。
楽しかった。



そんな感じで完成した。


私もこの主人公のように、誰も知らないメロディでも構わないし、心を音に残せるくらいの感性をずっと失くしたくないなあ。




隅々まで、耳を澄ませて、聴いてみてね。
「誰も知らないメロディ」豊かな心で、日々を過ごしていけますように。






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