月の裏まで
"このままどっか遠くへ連れてってくれないか"
そんなのんきな鼻歌から始まった曲を、Amelieでやれるわけがない。あの日の私はそう思っていた。
いつか何かしらの形で曲に出来たらいいな、そんな日が来るかもわからないけどな。
その程度の想いだった。
自分の中ではお気に入りだったのだけど、みんなに聴かせる勇気もなかったから、引き出しに隠したまんまにしておいた。
だって私は、Amelieでやるんだと意気込んで作った歌が良いと思っていたから。それしかダメだと思っていたから。
こぼれてしまったら、自信をなくしそうだったから引き出しを閉めちゃってさ。きっと自分を守っていたんだ。
制作期間中、いつものスタジオ。
「ねぇ、なんか他に曲のネタあったりする?」
げ。 あるけどさ。あるけどもさ。
まあいいか、どっちみちAmelieではやらないだろうしお蔵入りするだろう。
ある意味、覚悟を持って歌った一節。
"このままどっか遠くへ連れてってくれないか"
…あれ?予想していたみんなの反応と違う。
「これ、やろうよ!やりたい!」
と言ってくれた。
嘘、まじで言ってんの?
この瞬間が結構、いま歌いたいことを歌おう!っていうモードに切り替われるきっかけだったのかもな。とってもとっても嬉しかった!
今までの私ったら、何をそんなに無駄なこと考えていたんだろう?
最近のライブではもう披露しているのだけど、兎やUFOやハイボール、なんて今までだったら絶対に使わなかったであろうワードも入れちゃって、歌いながらニヤニヤしている。
なんていうか、音楽で遊んでやった。
むしろ音楽って本来こういうものだよな、と。
Amelieはこんなことも出来るようになったんだ。意固地になるのはやめたんだ。
きっと誰だって、人に言えない言いたくない秘密を持っていたりするんだろう。
打ち明けるべきか、いや打ち明けられないな、そんなこそばゆい秘密。
人生単位で考えてしまえば、そんな大した影響もダメージもないから、あっという間に笑い話に出来ちゃう。
でもさ、二人だけの秘密だよ。
長い長い旅路の中で、UFOが陣取っている月の裏まで、ハイボール片手に逃避行しちゃうことも、時にはオッケーなのさ。
レコーディングしながら、いつものエンジニアさん・兼重さんと連想ゲームをしていく時間が楽しくて、大好きなんだ。私が今期、覚醒モードに突入できたのも、兼重さんのお言葉ありきだったりします。
言葉から連想して音にするって、面白い。
UFOから派生して思い付いたUFOみたいな音を、所々に散りばめていたりもするよ。イヤホンでよーく聴いてみてね。
サビでファルセット(裏声)をたくさん使うことなんてほぼなかったから、歌入れはめちゃくちゃ大変だった。
ポテチ食べまくって、油で喉を潤してみたりした。ただただ浮腫み、腹が減るので歌う前にはオススメはしません。ポテチ大好きです。湖池屋が好きです。
ミュージックビデオは、今回初めての監督さんにお願いした。youtubeで素敵な作品を見つけて、この方と映像を作ってみたいと思って、アポイントを取ってもらった。
ハヤシサトル監督。彼、ナイスだよー。
既存のビデオで観たことない雰囲気のmickさんを撮ってみたいですと言ってくれて撮ったシーンがあった。
ガチガチに緊張して手も足も固まって動かなくなった、めちゃくちゃだせえ。笑
最初のパターンは没になったけど、次に撮ったパターンが使われています。
撮影の日は雨が降っていて、外のシーンでは強い雨に打たれ、凍えながらポールに寄っかかって歌いました。
かっくいい!かっくいいぞ!!!!!
風邪を引くとチームの誰もが思っていただろうけど、次の日もその次の日もヘロヘロだったけど、元気でした。強い。
ヘアメイクは、madoka。
私もうmadoka無しじゃ生きていけない!
シュッとして大人な雰囲気に仕上げてくれた。こういうのがいいってあんまりハッキリ言わないから、察知するの大変だと思う。でもかっくいいmickにしてくれました。
さすがだぜ!やるぅ!!
この曲のミュージックビデオを撮りたいねとなって、最後まで結構色々話し合いをしていたのだけど、撮りたい曲でビデオを撮らせてくれたチームの皆さま、本当にありがとう。
まさかほんの一節の鼻歌から生まれた曲が、息抜きだー!と気張らずに作った曲が、リード曲になるとは夢にも思いませんでした。
月の裏まで逃避行も時にはオッケーというところに辿り着いた私たちの想いも、みんなに伝わったらいいなと思っています。
そういえば、いつ休んでるの?というぐらいバリバリ働いている友人が、休まないと効率上がらないよ!むしろ休んだほうがいいもの出来るよ!と言っていたことを、たった今思い出しました。
こういうことだったのね。
たまにはガス抜きしようね。
ライナーノーツ、収録順に書いていこうと思ったけど、ミュージックビデオが公開したばかりなのでこの曲からにしました。
『アイデンティティ』の4曲目に収録。
「月の裏まで」ご堪能あれ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?