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スピード上がった願望が現実を追い越してるのでは?小松未歩さんの『anybody's game』

 3月です。すっかり春めいてますね。各地で桜が咲いて花見で盛り上がる光景も見られるこの時期。
 発売日が3月18日。ジャケットも桜色。
 今回はそんな季節柄ぴったりな小松未歩さんの4枚目のシングル『anybody's game』歌詞解釈をしていきます。

それでも 解りあえるなら きっと の放つ脆弱性

 この『anybody's game』という曲の雰囲気、なんだか楽しそうですよね。
 最後も

 二人はきっと うまくゆく

なんて言ってます。明るい未来が待ってそうな締めのフレーズですね。素敵だと思います。
 しかし気になります。きっと、が。
 「きっと」は推測、確信といった意味合いを帯びる言葉です。
 きっと〜だろう、きっと〜なはず、というと形ですね。なので最後のフレーズは裏を返すと、

二人はきっとうまくいくに違いない!
確定はしていないけど…。

という感じでしょうか。
 「そんな君の生き方が好きさ」とあなたが言ってくれてるから確信はしてる。けれども最後の最後に「きっと」はちょっと弱気な気がします。
 「ずっと」や「もっと」や「とわに」など「きっと」よりも未来に対して確定的にすることでより強気な態度を表明する3文字の言葉があります。
 ではなぜ少し弱気なところがあるのか。それはタイトルに原因があります。

 anybody's game

この言い回しは「誰が勝つかわからない試合、予想のつかない競争」という意味になります。
 と、なるとこの主人公は誰かと競争してるわけです。なんの競争かと言うと…。

 あなた争奪戦

と考えられます。
 冒頭の「それでも夢見て」の「それでも」はあなた争奪戦に勝つか負けるかはわからない、それでもあなたと一緒にいられる未来を夢見ている、といったところでしょうか。

 ものすごく簡単に言うと主人公は「あなた」を好きになりました。なのでお付き合いしたい。
 『anybody's game』はそんかまだあまり分かり合ってはいない二人を歌っている曲なのではないか。私はそう思っています。
 なので最後のフレーズは、二人はきっとうまくいくはずだから勝ち負けは見えないけど確信を持ってあなた争奪戦に挑める、という感じなのかな?と思っています。

 主人公と「あなた」は互いのことがよく分かっていない、あるいは二人だけの時間の経験値が足りないという見立ての根拠として以下の歌詞を挙げます。
 
 目と目合わせて 解りあえるなら
 → 今まで目と目合わせたことがない、あるいは目があったことはあるけど解りあったことはない。

 一番近くにいれる二人でいたいな
 → まだ一番近くにいられる存在になれていないと思ってる。

 勝ち気な瞳は 生まれつきなの 覚えてて
 
→ 今更ながら自己紹介(こりゃこじつけか?)

という仮に「あなた」に彼女がいてその彼女に披露したところで鼻で笑われそうなレベルのミニミニエピソードです。

好きになった理由は明確 

 そんな過ごした時間が少なそうな二人ですが主人公はなぜ「あなた」を好きになったのか。その理由は…

 痛みを話し、孤独を分け合ったから

孤独を感じていた都会暮らしにおいて誰にも言えなかった話をしたら「あなた」は真摯に向き合ってくれ、同調してくれた。心満たされた主人公が「あなた」に心を開き好意を抱く。そんなストーリーが私には見えます。

 言えなかったこの痛み

孤独で誰にも言えず癒えない痛み。それをなぜか話せた不思議。そして「あなた」に言えたことで癒えた消えていった痛みと引き換えに見えたあなたといたいという夢。出発点はここにあるのではないかと思います。
 『anybody's game』はそういう出会いが素敵なお話のように思います。

その他

 あとは歌詞で思ったことをいろいろ挙げます。

・月を追い越して
・地球が爆発したって

初期の頃はスケールが大きいなぁ、と。
 すぐに宇宙や来世といった「異世界」へ行きたがるんだから、小松さんてば。

・黄昏の電車

宇宙規模にまで話を広げるのに急に現実世界に呼び戻すこの感じもまた良いですね。『氷の上に立つように』における宇宙船からの新聞記事と同じですね。

・勝ち気な瞳は 生まれつきなの 覚えてて

瞳はともかく、主人公の性格が勝ち気なのはわかります。

終わりに

 3月30日の木曜日(22:30〜)にtwitterのスペースで『anybody's game』を一時間語っていくラジオ企画が行われます。
 私もスピーカーとして参加します。小松未歩さん好きが思い思いに語る楽しい企画です。よろしければ気軽にお立ち寄りください。
 それではまた次回、お会いしましょう!

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