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金属スクラップを高く買う国

(令和4年4月26日一部内容改訂)

今回は、「スクラップを高く買う国、中国」について書いてみたいと思います。

ゴミが溢れている原因は?

結論を言ってしまいますが、「日本のいわゆる"環境リサイクル事業"は、中国へどっぷり依存していたために無策であり、その"サイクルの輪"が途切れたことによって、フン詰まりを起こしている。そのため、国内に不法投棄や、リサイクル施設のキャパ逼迫などの問題が起きている」ということだと考えています。

前回の投稿は、コチラです。

中国への依存とお金の動き

2018年の輸出通関実績というデータが、財務省より公開されています。下記の画像は、それを参考に「平均単価」を当方で加筆しました。

ちなみにですが、各国の税関で共同運用しているHSコードという分類では、「銅のくず」を#7404で区分します。

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明確に、「日本が中国へ依存している」ということと、「莫大な金額が蠢いている」ということがお分かりいただけるかと思います。そして、「なぜ、街道沿いの金属クズ屋さんに中国人が多いのか」といった点についても、なんとなくご理解いただけたかと思います。

また、下記の画像をご覧いただければ、「なぜ、中国が銅を欲しがるのか」といった点についても納得いただけるかと思います。

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銅クズ輸出概況

輸出向けの「銅のくず」の状況としては、本当にざっくり言うと、下記におおよそ集約できます。

・地政学上の問題(ウィルス騒動、米中貿易戦争)に揺れる
・中国での新規制導入(ライセンスおよび重量クオータ制を撤廃)によって、環境が変化
・その結果、流動性が停滞

また、副次的な要素として、下記事象も十分に理解しなければなりません。

・マレーシアを中心とした第三国での加工貿易の状況
・最終需要家である中国向けの"原料(高品位かつ、高価格)"輸出の進捗
・7月の新規制導入前後にて、流動性および商品性の高いアイテムとして、なにが主力貿易商品として成立するのか

本当にスクラップを高く買う国はどこなのか

結論の結論を申し上げると、日本だと思います。つまり、輸出する必要性は原則ありません。ただ、よく言われるのは、「品質に対する要求事項が多い、細かい」ということです。当然のことながら、「高くても、品質の良いもの」を売買するには、それなりの期待値が存在します。

これまでの中国の買い方は、その逆をいっていて、まさに「"雑な感じ"でいいから、量をくれよ。量を。カネ?そんなの先に払ってやるよ」といった感じで、ちょっと古い言葉ですが、常にイケイケドンドンであったと聞いております。

非常に大事な部分ではありますが、我々のスクラップ業界においては、大資本家が「集荷、解体、選別、保管」までのすべてのサイクルに投資し、最終的に、国際的なマーケットで通じる"コモディティ"として「販売」する仕組みがあります。

なぜ、「雑な感じ」でいいのか?

雑多であるということは、比率がどうであれ「ベター(Better)」と「ワース(Worse)、ワースト(Worst)=ゴミにしかならないようなもの」が混在することを意味します。

その混在比率は、スクラップを買う人の趣味嗜好というか、センスによるものが大きいかと思いますが、要は「ベター」の中から価値の高いものを選別して、高く売る

他の人が「ワースト」だと信じきっているものに付加価値をつけて、高く売る。「真ん中」にある商品は、資本の流動制を確保するために、ひたすら流す。こういった芸当ができると、利益率は相当に膨らみます。

実際に、筆者も中国における、"真のリサイクル"を目の当たりにしましたが、品目によっては、「ゴミのなかのゴミが飛ぶように売れる」こととなります。日本などのいわゆる"リサイクル中進国"では、解体しても産業廃棄物としてお金を払って処理されるものが、お金になるのです

ここに、中国の牽引力といいますか、優位性がありました。要は、「日本で解体・選別、ゴミ処理をしたら採算性が取れないな」という金属クズと対峙した時に、中国人の解体業者は、「(腹の底では、メシウマ案件だと知りながらも、)あー、これは解体するの大変だね。これは、中国でも解体できる業者は少ないよ。安くてもよければ、うちで引き受けますよ」といって、いわゆる"二束三文"でお買い上げし、船に積み込んで、彼地の解体ヤードへ搬入、解体ののち、選別をします。

中国(リサイクルの先進国かつ、マイルドな人件費で労働力を確保できる国)に、金属クズを輸出することの合理性について、ご理解いただけたのではないでしょうか。

次回は、「日本の銅精錬所がすごい!」というハナシをさせていただきたいと思います。

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