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スクラップの商売は化けに化ける

(令和4年4月26日一部内容改訂)

前回の投稿で宣言させていただいた通り、「日本の製錬所がすごい!」というハナシをさせていただきます。

その前に、「セイレン」ってなに?というところから、私が知っている範囲で述べさせていただきたいと思います。

ざっくり申し上げると、「必要とされている金属を、不純物の多い鉱石やスクラップのなかから、どうにかこうにかして取り出す作業」であると考えています。

熱を加えたり、液につけたり、風を送ったり、混ぜたり…ものすごい数の工程を経て、おおげさな言い方をしてしまえば叡智を結集して、目的とする金属が生み出されるわけです。それはそれは、大きな大きなダイナミズムがそこにあります。

現在、サーキュラー・エコノミーという言葉が流布していますが、金属は太古の昔から、この言葉が登場する以前から、まん丸のリサイクルができ、なおかつ、巨大な経済活動をしてきました。日本には、世界に誇る製錬所が存在し、我々の日常で使われている金属のタネを製造しています。

そして、銅に限らず、金属セイレンにおいて、スクラップはものすごい大事な役割を果たしています。それの使われ方は、需要家によって様々でありますし、必要とされているモノも違ったりします。

今年は、オリンピック・イヤーということもあり、多くの方が「基板をリサイクルして、メダルをつくろう!」というキャンペーンについて見聞きされたと思います。政府も推進していることですが、「都市鉱山の開発を推進しよう!」ということにつながります。

それだけ、鉱山開発を進め、鉱石から貴重な金属資源を取り出すことが、色んな意味でコストのかかる、大変な経済活動であるということの裏返しであると思います。また、我々の住む世界には、「クズのなかに貴重な資源が眠っていて、実のところなかなか有効活用できていないよね」ということ、「うまく活用できれば、本当は良いビジネスになるよね」ということを暗に示しているのではないか、そのように私は考えています。

そういった可能性に投資し、世界の先端技術で、我々の生活を支えているのが、日本の製錬所なワケです!

モノをみる目、価値を見極めるちから

例えば、携帯電話を充電するときに、「充電器の先端についている黄色の金属は、なんだろうか」だとか、充電器のケーブルが断線してしまって、「これ、燃えるゴミでいいのかな?」などと考える人がいても、「先端の金メッキが、これだけあれば、いくらになりそうだ」とか、「このケーブルは、銅がこれぐらい入っていそうだから、これぐらいで売れるんじゃないか」などと考える人は、なかなかいないわけです。

ただ、我々の金属リサイクル業界の人間においては、上記のような"目(期待値)"で金属をみてしまいます。その"目利き"の精度が、「儲ける商売人」とそうでない人とを明確に分かつ、技量の差であると断言してもいいと思います。また、"期待値"が相場の如何によって変動する点、需要家の嗜好や商流によって、金銭的な評価が変わる可能性を秘めている点が、この商売の醍醐味であります。

平たく言ってしまえば、「定価という概念がない」ということです。

我々が、何の気なしに捨ててしまっている、いわゆるゴミ・クズのなかには、製品としての価値を無くしてしまっても、本質的には価値のあるものがたくさんあります。とっても、「もったいない」ことだと思います。

どうしても、我が国では、「リサイクル=なにかを犠牲にしてでも地球のためにしてあげること」のように思われがちですが、実際のところは、「地球を含めた自分たちのための活動」であると考えていますし、そうであるべきです。そして、本来であれば、「リサイクルの輪に乗っけるために費やした活動に対する対価としての金銭」は、活動をする人に対して還元されるべきであるとも思います。

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