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LME (London Metal Exchange) の歴史

概要

ロンドン金属取引所は、19世紀、イギリスの産業界の金属に対する飽くなき欲求を満たすために設立されました。ロンドンの帽子屋の上階で産声を上げたLMEは、世界最大の非上場企業に成長しました。その140年の歴史を通して、世界最大の非鉄金属を取り扱う一大マーケットとして認知されています。

引用: REUTERS "Chronology-History of the London Metal Exchange"

歴史

| 1571年 |
 ・世界初の商品取引所である王立取引所が設立される
 ・この当時は、王立の組織であった
| 1800年初頭 |
 ・王立取引所が混雑し、金属商がロンドンのコーンヒルにあるコーヒーハウス「エルサレム」に集まってビジネスを行う
 ・このときに、"リング (RING)"、"カーブ (KERB)"取引という概念が生まれる

"RING" - 取引を望む商人が、コーヒーショップの床に指輪の絵をチョークで描いたことを起源とする
"KERB" - コーヒーショップが営業を終えた後も、ディーラーが店の"縁石 (KERB)"に腰掛け、取引を行ったことに由来する

| 1877年 |
 ・The London Metal Market and Exchange Companyが設立される
 ・銅、錫、銑鉄の取引に限る
| 1914年 |
 ・第一次世界大戦の勃発により供給不足が懸念され、LMEが閉鎖される
| 1985年 |
 ・錫の危機 - 世界錫協会の緩衝在庫が崩壊し、価格が暴落
 ・評議会の緩衝在庫が崩壊し、価格が暴落。契約中断
| 1996年6月 |
 ・住友商事のヘッドトレーダーである浜中泰男氏が、銅で26億ドルの損失を出し、市場を危機に陥れる
 ・いわゆる“住商事件

| 2005年末 |
 ・中国の代理人として活動していたトレーダー、Liu Qibingが銅市場を混乱に陥れる
| 2006年8月 |
 ・マーティン・アボットがLMEのチーフ・エグゼクティブに就任
| 2007年3月 |
 ・LMEのCEOであるマーティン・アボットが、取引所は売りに出されていないし、買収も計画されていないと発表
 ・LMEが買収される噂が立つ
| 2007年6月 |
 ・LMEがニッケル市場に介入
 ・供給が逼迫している中、より多くの金属取引を利用できるようにするため
| 2007年7月 |
 ・LME会員が100万株の新規B株発行を承認
| 2008年9月 |
 ・LMEは、市場の秩序を確保するためのポジション制限を導入する予定はないと発表
| 2009年3月 |
 ・年次総会で株主への配当金支払い計画が承認される
| 2009年7月 |
 ・LMEは、契約上の投機的ポジションの残高や支配的なポジションホルダーの名前を公表する予定はないと発表
| 2009年9月 |
 ・LMEを1つの取締役会から2つの取締役会に移行することを決議
| 2010年4月 |
 ・LMEは、ブライアン・ベンダー氏をLMEホールディングスの両会長に任命したことを発表
| 2010年7月 |
 ・LMEは、シンガポールにアジア事務所を正式に開設
| 2010年9月 |
 ・The London Bullion Market AssociationとLMEは、9月からLBMA金フォワード・カーブのデータ提供を開始すると発表

| 2011年5月 |
 ・LMEは、独自の決済機関を設立する戦略を具体化
| 2011年5月 |
 ・消費者からの苦情を受けて、大量の備蓄を持つ倉庫に対して、日次出荷数量を増やすよう指示
| 2011年9月 |
 ・LMEは、買収対象としての取引所への関心が雪だるま式に高まるにつれ、「データルーム」を設置して取引所の帳簿を公開すると発表
| 2012年6月 |
 ・香港証券取引所が、135年の歴史を持つロンドン金属取引所を14億ポンド(21億8,000万ドル)で買収することで合意。製造業の重心がアジアに移っていることを示す

雑感

筆者は、かつて、本家ブログにて『時代がどれだけ変化しようとも揺るがないモノとは 』という記事を書きました。古き良き“ボーイズ・クラブ”が、「もはや金属云々関係なく、コモディティ全般の金融化 (wasn't really about metal any more but the financialisation of commodities in general) 」によって、形骸化(プラットフォーム化)する様についてです。

今般、なぜにLMEの歴史を取り上げたかというと、「懐古主義的な観点で、金属がどのように扱われてきたのか」ということを具(つぶさ)に理解したいなあという思いがあったからです。そこで、手始めとして、いわゆるベースメタル・トレードの分野の礎をつくったLMEにフォーカスしようという魂胆です。

野望

また、筆者の従事する非鉄金属原料(スクラップ)が、いかにして“コモディティ”たり得るのか、どのようにリンクしているのか、世界のそれと比較した際に、どのような部分が同じで、どのような部分が違うのかといったことを考えてみるのも大変面白いのではないか、そのように考える次第です。

今でこそ、「今日の銅相場がこうだから、〇〇の相場はこう!」みたいなロジックが定着し、いわゆる、“あってないような透明性”が独り歩きしています。それをもって、ベースメタルの取引に従事している人間は、その日の商売、顧客に立ち向かうわけです。

重要なのは、「今日は、いくらなのか」というファクトであって、それさえ握りしめることができれば、顧客との交渉もできるわけです。当然のことながら、落としどころを見つけることができれば、その日の日銭は稼げるわけです。労力、利益の多寡は別として。もしかしたら、「誰でもできてしまう」のかもしれません。

その「誰でもできてしまう」ということが、いわゆる左記の“金融化”であり、そのプラットフォームが万人に公開されることで、コモディティ商品の開発が希求されるわけです。弊業界においては、金属のスクラップが、どんどんコモディティ化しています。金融商品としての“スクラップ”がコンテナに積み込まれ、大海原を渡ります。「高く売れるところ」を求めて。

もちろん、売らなきゃ飯も食えないし、理想だけ高く掲げてでも、前進はできません。そうは言いつつも、ロマンを追求し、「俺たちにしかできないこと」を探求し、一山当てたい。そんな野望を胸に、ベースメタル、ひいては金属スクラップの面白さを発信してゆきたいと思います。

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