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ベースメタル相場高騰の裏で、なんか面白いことが起きているよ

(令和4年4月26日一部内容改訂)

久方ぶりに、金属スクラップ市況、並びに今後の流通動向に関係してゆくであろう事柄について、筆を執らせていただいた次第であります。

※過去の地政学上の #金属スクラップ 市況動向に関する投稿は、Bloggerで公開している『みちるリソースのご意見番が吠える』をご笑覧ください。

グプタ帝国危うし

目下、大変関心を寄せている人物がいます。それは、Sanjeev Gupta 氏であります。Guardian によれば、北インド・パンジャーブ地方出身の彼は、大学在学中より大きな商売で成功を収め、卒業後も積極的に商売の規模を拡大させていたようです。その二十年後、彼は、鉄鋼・アルミ製品、金属コモディティのトレーディングを自身の商いとし、年商50億米ドル規模の大帝国を築くに至ります。

その彼が、現在、窮地に追いやられています。

背景にある主な要因として、彼のグローバル・オペレーションのファイナンス機能を一手に引き受けていた、 #グリーンシル・キャピタル の破綻が挙げられます。同社といえば、我が国を代表する政商、孫正義氏との関係ですよね。相当な蜜月関係にあったとかなかったとか。SBグループ投資先の新興企業同士で資金を融通し合わせるスキームの発明者でしょうか。

参考:Bloomberg『ソフトバンクG孫氏の「マネーガイ」、グリーンシル氏は英雄から転落

グリーンシルのバックは、巷を賑わす #クレディ・スイス 様であります。同社といえば、 #アルケゴス に一泡吹かされた野村證券と肩を並べる、名義貸し商売の王様であります。なんだかよくわからない経済小噺、「グプタ帝国危うし」と「潮吹き名人アルケゴス」に繋がりが生まれてしまいました。

参考:日本経済新聞『アルケゴスが破綻準備、訴訟に備え助言者雇用 FT報道

恐らく、両社の共通項は、どこぞの永世中立国やら、どこぞの民主社会主義国だけではないはずです。それは、もう少し単純な、“キャッシュ”とか“与信”、“サプライチェーン”といった経営上のクリティカル・マター由来の問題にあります。そして、根幹に横たわる「そんな怪しいことやってたのに、今まで、よくバレなかったよね!」という疑念は、「彼らの完璧 #エコシステム が一瞬、ウィルス騒動に絡んで、機能不全に陥った」という事実で説明ができましょう。

参考:Reuters『クレディ・スイス、グリーンシル関連で23億ドルのエクスポージャー

我が #金属スクラップ 業界においても同様のことが言えるかもしれません。つまるところ、「カネが回っていれば、誰も文句は言わない」のです。疲弊した金属業界を立て直した立派な人物であろうと、政府にマークされるような投資活動をした人物であろうが、「利回りの良い案件をつくれる人物は重宝される」わけです。多少のリスクがあろうとも。商売人は、彼らをうまく利用し、悪人は、彼らに依存するわけです。(アルケゴスに肩入れしていたのは、某大国であったようですが。)

稀代の錬金術師

閑話休題、ハナシは「エコシステムが機能不全に陥った」という部分に戻ります。

Gupta 氏のエコシステム並びに、“錬金術”は、恐らくこのようであったと思います。

1. 鉱山開発のプロジェクトを立ち上げる
2.鉱石は、グループの製鉄・精錬会社へ販売
3.素材は、グループの圧延・加工事業会社へ販売
4.スクラップは、グループの製鉄・精錬会社へ販売

文字で言い表すと、“これだけのこと”に過ぎないのですが、実際のところは、ものすごく壮大な“夢の国”で起きる、キラキラしたおとぎ話のようであります。

まず、特筆すべきことは、上記で言及したすべての項目において、大規模な“ #プロジェクト・ファイナンス ”が必要となります。鉱床を探し出すのにも一苦労だし、実際のアウトプットにもそれ相応の時間が必要となります。当然のことながら、半製品、製品においても、研究開発や製品化するまでのリードタイムが必要となります。スクラップにおいても、再生するためのコストや時間が同様に求められます。

参考:iFinance『金融経済用語集 > 金融業務用語 > サプライチェーンファイナンス

つまり、机上の空論でしかない投資情報としての“インプット”を、なんらかの方法で評価し、結実した“インカム”を創出するまでの時間を、誰かに前もって買い取ってもらう必要があるわけです。(利害関係者への支払いに窮したオーストラリアの同グループ会社は、請求書をグリーンシルに送付するように通達したとか。しかも、グリーンシル側の手数料は8%と目されている。)これ自体に、違法性は全くないはずです。倫理観は別として。

ただ、Gupta 氏のように、産業におけるいわゆる“動脈”だけでなく、“静脈”に対しても大きな影響力を持ち、さらに、そのサイクルの点と点を結びつけるトレーディング事業も手広く行っていたとすると、事態はシンプルに処理できません。ひとつの産業におけるライフサイクルを牛耳ることで、どのようなインパクトを獲得できるのでしょうか

あれ?このカネは、どこから湧いてきたのだろう

AさんとBさんを仲介する、Xさんという“一見”関係性の無い人物を登場させれば、このAXB取引は完成します。

そして、BXC、CXD…と取引を重ね、場合によっては、BYC、CYD…、AXYDといった取引も生まれるでしょう。取引が積みあがれば積みあがるほど、Zさん、Yさんの口銭は膨れ上がります。そこに、先物取引、為替等の複合要因が覆いかぶさると、もう誰にも、目の前のカネが利益なのか、借金なのか、いつのものなのか、誰のものなのかわからなくなります。

そんな“カオス”に、小さな綻びが生まれ、少しずつそれが積み上がり、単一エコシステム上の“親”が降参せざるを得ない状況が、冒頭で言及した二つの事件に繋がっていると考えています。そして、事態は今後、さらに混迷を極めるものとなることが予想できます。なぜならば、“親”にも、その親がいるからです。系譜の最上流まで危機が迫った時、我々は何を見るのでしょうか。

ザ・モースト・ファン・パート

上記の“錬金術”における最も恐ろしい部分は、ABCD…すべてをひとつのグループ、ひとりの経営者の視点で俯瞰したときに、はっきりと見えてきます。言うなれば、「みんな、グル」なんです。ABCD…は、Gupta 監督がコントロールする劇場の中で右往左往する、ひとつひとつの駒でしかないのです。

そして、もっと言ってしまえば、その劇場は、「社会の公器」とか、「理想を具現化させる場所」とかそういった崇高なものではなく、恐らく、Gupta 監督の“親”がつくった、彼自身に、「『やりたいことをやっている』と錯覚させるための舞台装置」でしかないのかもしれません。(もはや、ここまでくると、常軌を逸した妄想です。)

事実関係を横に置いても、「Guptaの“ケツモチ”するのはリスク高いから、他のヤツにやらせておく」ことで、“ババ”を引かずに済んだ投資家は、悠々と資産を何倍にも膨らませたことでしょう。

#銅相場 は、史上最高値を迎え、白金族 #PGM 相場も高騰しています。当金属スクラップ業界も、思惑が交錯し、殺伐とした様相を呈して参りました。古典的な売上至上主義の下、高値買いの薄口銭をブンブン回す手法が良いのか、取扱量(売上)を追わずに、利益を追求するのか。一休さんの禅問答は、もうしばらく続きそうです。

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