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こどもと。~自分の中から言葉と答えを見つけるの尊い。〜

最近になって爪切りが嫌いになった娘。
以前から面倒くさがっていたが、先日ついに泣いて拒否するようになった。結局その時はパパが強行突破して切ってしまったが、娘はだいぶ拗ねた。
(パパの名誉のために言うと、パパはとても丁寧に娘を説得してくれた。それでも拒否されたが爪が伸びすぎていたので、穏やかに声をかけつつ強制爪切りをしたのだ)

拗ねる娘と、お手上げという様子のパパはお互いの距離をとった。
こうなったら、家族というコミュニティの中で「爪切り事件」の外野にいた私が間に入る必要がある。
私が両手を広げると、娘は黙って私の膝に入った。
年長の娘はもう私の膝からはみ出るのだけれど、これでもかと体を縮こまらせて赤ちゃんモードになる。
そのままパンダのように2人で左右に揺れながら、静かにテレビを眺めて数十分。

「おしりが痒い時にね、掻くとちくちくしちゃうの」
娘が、ぽつりとこぼした。
「爪がチクチクして、痒いところを掻く時に痛いの?」
私が尋ねると、娘はテレビの方を向いたまま頷いた。
「そうだね。爪を切った直後って、ちょっと爪が尖ってることあるよねぇ」
娘はパッと私の顔を見て、ようやく言葉が通じるようになったと言わんばかりに話し出した。
「おしりだけじゃなくてね、足とか、背中とかもね」
「だから爪を切るのが嫌だったの?」
「うん」
恥ずかしながらズボラな我が家は、爪切りの後にヤスリをかけることがない。
尖らないように丸く切るようにしていた。しかし最近は、パパのとても大きな手が、とても小さな爪切りで、とてもとても小さな爪を切ることが多かった。
ここでやっと私は、娘にはヤスリが必要だったのに、大人の配慮が足りなかったことに気づいた。

「じゃあ、ママのヤスリを貸してあげるよ。それで爪をお手入れするとね、チクチクがなくなるんだよ」
娘が興味を示し、目を丸くした。
ネイルシールに付属のヤスリ(ネイル的に言うとネイルファイル)がたくさん余っていたはず。そう思って私がポーチを漁り、小さなヤスリを娘に見せた。
娘は手にとって、触って、ひっくり返して、観察した。
「使ってみる?」
「うん!」
私が人差し指の爪にヤスリをかけると、娘は滑らかになった爪で、くるぶしを掻いた。
「いいね。あと、この爪も」
気に入ったらしい。中指、小指と、指定された指の爪を削っていく。
その度に娘は、くるぶしを掻いて爪の滑らかさを確認していった。

全ての爪にヤスリをかけ終えると、娘の表情はすっかりご機嫌モードになった。
「ママ、これからは毎日これしてね」
「うん、爪切りの後は毎回これしようね。これは娘ちゃんにあげる。娘ちゃんの爪切りと一緒にしまっておくからね」
パパも頷いた。自分の爪切りをする可能性がある大人全員に周知されたことを確認すると、娘は遊びに戻っていった。

普段はとてもおしゃべりな娘だが、まだまだ大事なことを言語化するには時間がかかるようだった。
しかし私も、自分の不愉快の原因がわからないことは少なくない。
生後5年の娘は、テレビを眺めながらもちゃんと自問自答し、答えを出し、親にそれを伝えたのだ。


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