3月13日

富山への道のりは遠い。僕が住んでいる那須から東北新幹線で大宮乗り換え、上越新幹線で越後湯沢まで行き、そこで金沢行きの特急はくたかに乗り換えて、全行程約4時間の旅だ。

母校で制作した塑像作品は、最終的に鋳造されて完成するのだけれど、その最終工程の鋳造を行うのが富山にある鋳造所なのだ。塑像から石膏型を作り、FRP原型を取る。今度はそこからシリコン型を作って、パーツに分けたワックス原型を取る。で、ワックス原型から鋳込むために砂型を作って、鋳造する・・・と、完成、ではない。パーツに分かれて鋳造されたものを溶接し、溶接跡や湯道跡を削って修正して、やっと完成。でもなく、やっと彫刻らしくなったところに最後の色付けをしてやっと完成に至るのだ。なんて長い道のり・・・それに比べたら、富山への4時間なんて短いもんだ。

途中の乗り換え駅である越後湯沢は、この時期でも雪が多くて、群馬からの長いトンネルを抜けると、ほんとに絵に描いたように雪国だ。車窓から見える家々の屋根にはこんもりと雪がのっかっている。ほとんど白と黒のように眼に映る雪国の風景は、昔から変わっていないふうで、子どもの頃に故郷で見た風景と重なって、僕は懐かしさで胸がいっぱいになる。

さて、富山なのだけれど、富山といっても、正確には立山連峰を望む立山町に鋳造所はある。とても大きな工場で、大きな立体物にも充分対応できるようなところだ。広く天井の高い空間の隅の方に、僕の初めての鋳造作品が待っていた。白銅で鋳造された、銀色のニッケル硬貨のような肌合いは新鮮だ。しかし、これで完成なのではなく、ここから微妙な色付けを行うために僕はやってきたわけだ。

色付けは、ガスバーナーで表面を焼きながら、石膏などを溶いたものを刷毛で塗りつけては拭き取って表情を作っていき、それに磨きを加えて仕上げていく。今回のような、大きく、勢いで作ったような塑像に小細工は要らない。4時間ほどの作業で完成とした。

白銅は、ブロンズと違ってあんまり優しい表情はない素材で、僕の最初の鋳造作品はこちらを少し突き放したように見ているのだけれども、そんな客観性が欲しかったのだ。ライティングがうまくいけば、かなり良い作品に見えるのではないだろうか。

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