Tシャツ

宮城県は仙台市郊外でARABAKI ROCK FESTが開催される。もう11回を数えることになる、東北の手作りROCK FESTのパイオニアだ。その主催者に頼まれてTシャツを作ることになった。売り上げは全て震災で保護者を失った子ども達のために使われる。けれども、そういう慈善的な意味で引き受けたわけではない。

僕の描く絵は、子どもや動物など誰にでもわかるようなモチーフであり、必然的に親しみやすい。そしてROCK MUSICが好きな自分であるために、その手のいろんなところから宣伝イメージに使いたい、とオファーがくる。しかし、ほとんどは僕の作品自体に言及することなく、彼らサイドの熱意の押し売りが多い。何故に僕の絵を使いたいのか、僕の絵のどこに魅かれるのか、そんなことは彼らの口からひとつも出てきやしない。所詮、宣伝のために力を貸してくれないか的なかんじに思えてしまうのだ。この体を削り絞るようにして産み出したものを、そう簡単には捧げられない。僕の絵を、僕や彼らが愛する音楽と同じように好きでいてくれるならば、今まで好きなバンドのアルバムカヴァーに提供したように、喜んで絵を捧げるだろうけれど。

ARABAKIの主催者から、協力して欲しいと連絡を受けたのは数年前だったのだけれど、先に書いたふうな印象を受けて断ったのを覚えている。ARABAKIの主旨やフェスの在り方には充分賛同するし、その開拓者精神には尊敬の念を覚えるのだけれども、自分のような一人のちっぽけな人間でも譲れないものがあったのだ。

それから数年、主催者の彼からいくつかのメールをもらった。そこには、僕の想いを充分に察してくれた気配があった。そして、僕が先の震災後の仙台でおこなったゲリラ的なスライドショウに来てくれて、その時に初めて顔を見合わせて話したのだった。そうして、僕にしてみても彼のフェスに賭ける気持ちも充分すぎるほどにわかり、彼も僕のスタンスというものを理解してくれたように思ったのだ。そして、今僕が住んでいる栃木県と故郷である青森県との間でおこった地震と津波による多大な被害。実家への行き帰りに通る、あの慣れ親しんだところ。静かに優しく笑う友達が暮らしているところ。とても他人事とは思えない。なにか自分がするべきこと、自分がしなければ誰がやるのだ的なこと、そんなことって何だろうかと考えていたところだった。

こうなったらもう理由を書くなんてことは無意味だ。僕は自分の絵を、今回のフェスに喜んで捧げようと思った。少しでも・・・なんて思わない。たくさんTシャツが売れて、着てくれる人たちもたくさん、たくさんで、僕らのスピリットをみんなで共有できればよい。というか、そういうふうにして、アクションがリアクションに支えられて、自分もまた行動できるのだろう。名誉や利害、自己満足のためなんかじゃない。かといって、義務感でもない。一体なんなんだろうか、この感覚は・・・一体。親兄弟、家族のように感じられるものだろうか。地域的な歴史や空気を共有する感覚でもあるのかもしれない。

Tシャツのイメージは、大好きなRAMONESの掛け声「Hey! Ho! Let’s Go!」をもじって「Toh! Hoku! Let’s Go!」とシャウトするシンガー。片手を握って突き出す得意のポーズだ。

    「東北!Let’s Go!」

自分が出来ること、今までに感謝して、それを捧げるべし!

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