零号の性教育
スキー場とは全く関係の無い話なんだが、私の人生においてはとても大切な事で、お子様を持つ親なら一度は向き合うであろう問題に、行き当たりばったりで向き合った私と長男『零号』の性教育のお話。
安芸太田町に来るまで、私は息子とドイツに住んでいた。
まだ、日本では小学5年生だったがドイツの現地校ではドイツ語が未熟な為に小学3年生クラスに入っていた。
ある日、電車に乗っていると『STOP AIDS』のポスターが貼ってあり、目についた単語をひたすら覚えようとしていた零号は
『ママ、あれは何て読むの?何がダメなの?』
と、聞いてきた。
『エイズ』と言う言葉は知ってても、深い知識は持ち合わせていない。
性行為、血液、母子感染くらいしかわからない。
困った。
『エイズってのは、病気の事よ』
の答えだけでいいのだろうか。
何の病気?と聞かれて私はどう答えたらいいのだろうか。
それはもう、私は脳内が凄いスピードで沢山の事を考えた。
『さぁ、ママにもわからんわー』で済ませておきたい。
うまい具合に他に気が逸れてくれやしないだろうか。
と、思ったものの。零号は私の目をじっと見ている。
よし、当たって砕けろ。
『エイズってのは、ある事が原因でなってしまう病気なんよ。そのある事っては、ママも詳しくはお医者さんじゃないからわからんのだけど、原因となるのは人と人とがくっつく事でなるんよ』
零号の表情はハテナ顔だ。
そりゃそーだ。くっついて病気になってたんじゃ、俺とお前は既にエイズじゃねーか。
『零号は好きな人おる?好きな人ができたら、手を繋ぎたい、くっつきたい、キスをしたいと思うようになってくるんやけども、最終的にはSEXをします!!
SEXとは、男の子のおちんちんを、女の子のお股にブッ刺します!!!』
(真昼間のドイツUバーンで私はなんつー事を…)
『え、え…おちんちんを…』
『そうです。ぶっ刺します!でも、これにより新しい命が生まれます!』
『え、STOP AIDSはどこ行ったん?』
『そう、それよ。SEXをするにはいくつかルールがあると思った方がいいんよ。
好きになったけぇって、誰とでもできる訳じゃない。2人がお互いにもっともっとくっつきたい、この人の赤ちゃんが欲しいなって思った時にはSEXしたらええ。
でも、自分がまだ子供の時に赤ちゃんできたら、どうやって育てる?お金もなくて、働ける年でもなくて、赤ちゃんと好きな女の子を守っていける?
いけんやんなぁ、だから、零号が大人になって働ける歳になるまでは、SEXする時は避妊と言って赤ちゃんができないようにする事が大事なん。
で、その避妊ってのをする事によってエイズって病気も防げて、赤ちゃんもできないようにする事ができるんよ。
それのやり方は色々あるんやけど、ママが知ってる中で1番簡単なのはチンチンに風船みたいなゴムをつける。』
『え、チンチンに風船⁉︎』
『そう、チンチンの形に合った風船みたいなやつをつける。
SEXってのは、綺麗な行為でもあるけど怖い行為でもあるって思って欲しいん。
新しい命が生まれる行為だと思えば綺麗やけど、エイズだけやなくて色んな病気が移ったりもする。
だけん、避妊っていう風船をつけるのが大事だし、万が一妊娠した時に相手の女の子が産めないとなったら、手術して赤ちゃんを殺すんやけど。傷つくのは女の子やから、できることなら結婚するまでは避妊ってやつをして欲しい。
そして、SEXをする時はお互いに好きって気持ちがないとやってはいけんよ。
片方だけの好きじゃダメやけんね』
(補足 当時中東からの移民が増えており、現地校では中東の女の子が親に命令されアジア人に抱きついたりし犯されたとサクラのような事件があった。なので、性教育の話はせずとも、深く関わりが無い女の子とのハグはしないようにと伝えていた)
『……はい…』
エイズの話なのか、性教育なのかわからんかった…
自分でも、わけわからんようになった。
まぁ、しかし、親からの性教育ってのはこんなもんなんだろう…
と、思っていた。
まさか、この後にあんな展開になるとは…。
電車を降りて路地を歩いていると。
電車の中で性教育をしたせいで、頭が疲れて道を一本間違えたのだろうり
何やら怪しい通りに入ってしまった。
ふと、左のショップを見ると。
まさか、そこはバイセクシャルショップだった…。
擬似チンチンが窓に綺麗に並べられてある。
季節はクリスマス前。
(おい!チンをクリスマスツリーの形に並べるな!!!)
『ねぇ、ママ…このお店なに?チンチン…⁉︎』
(そこーーー!
そこ見ないーーー!
聞かないーーー!
聞かないでーーーーー!!!!)
『あ、あのね、さっきSEXについて、は、は、話したよな???
あの、そのー、世の中にはね、色んな人がおるのはわかっとるよな?
ヨーロッパ人とかアジア人とか、中東とか、ここは色んな人がおるやんね?
そんな中で、必ずしも好きになる相手が女とは限らん。
男の人が男の人を好きになる事もある。
女の人が女の人を好きになる事もあるんよ。
このお店は、そう言う人たちの為のお店かなー。』
『よーわからん。どーゆーこと?誰が誰を好きでもええけど、その為の店って、どーゆーことなん⁇』
(そこ、突っ込むのかーーー!
あちゃーーー!
なんとなく、わからんままでスルーしてくれへんのかーーーい!!)
『えーーーっと。
男女のSEXは男のチンチンを女の子の股に突っ込む言うたよね?
SEXってのは、必ずしもチンチンを突っ込む事では無いんよ。好きだけど、手を繋ぐだけでSEXと同じように満足な人もおれば、キスで満足な人もおる。もちろんチンチンを突っ込むSEXをしたい人もおる』
『待って、男同士のSEXだと、どこにチンチン入れるん!?』
(おっとぉ。そこまで聞くか…)
『そうだねぇ…ママは男やないけん分からんけど、だいたいは…お尻の穴やないかねぇ…』
『え…尻って…ウンコする?』
『ソウデスネ…』
(刺激が強すぎたか⁉︎)
『待って待って、じゃぁさっきのお店のチンチンはなんなん?』
(チッ…忘れてなかったか…)
『男の人の体と違って、女の人にチンチンは無いやんね?』
『うん』
『男同士で好きになる事もあれば、女同士で好きになる事もある。
でも、女同士だと突っ込むチンチンがないんよ。
そんな時に、さっきのお店に飾ってあったような作り物のチンチンを使う事もある』
『…』
(そう。零号、世の中は広いんだよ…)
それから、零号は当分の間考え込んでいた。
私は、まさかこんなタイミングでここまでの展開になるとは思ってもおらず。
この後、クリスマスマーケットでホットワインを浴びるように呑んだ。
我に幸あれ…メリークリスマス…
そして、帰り道。
インド人にナンパされた。幸はすぐに降り注いだ。
唐突な性教育に真正面から向き合ったので、ニコラウス様も私に幸を降り注いでくれたのだろう。
『あなた、かわいいね!大好き!私と付き合って!』
相手が誰だろうが、カワイイと言われりゃ嬉しいのが私だ。
ウフフとモジモジしてみせるが。隣には零号がいる。
『ごめんなさいねぇ〜ん。ここにいるのは私の息子なのよ』
まんざらでもなさそうに、でも申し訳なさそうに言った。
インド人は
『え、じゃぁ、他の日本人紹介してよ、日本人金持ちだからね!』
と私がふられるみたいになったまでがオチです。
お目汚し。
チャンチャン!
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