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2NLでNLHを本当にNLするとどうなるのか?

突然ですが、オーバーベットはお好きですか? 私は好きです。

近年のポーカーといえばNLHとPLOが並び立っている状態なわけですが、NLHにはまさにNLという一見めちゃくちゃなことになりそうなルールが存在しているにもかかわらず、絶妙なバランスでゲームとして成り立っているという魅力がありますよね。

今回は、その一見めちゃくちゃになりそうなルールを自由に活用してみよう! というのが主旨です。

経緯など

さて、Twitterでポーカー関連の方をたくさんフォローしている人は記憶にあるかと思うのですが、先日metal_oudaさんの搾取的なオールイン戦略が話題になりました。

この戦略を簡単に説明すると、レクリエーショナルプレーヤーに対して、ポットサイズを無視したような大きなベットでバリューを取りにいくプレーです。

何年か前のことなのですが、あるハイステークスのレギュラーがマイクロレートでのプレーを公開していました。彼はマイクロレートではリバーで大きくベットする、時には馬鹿げたようにさえ見えるようなショブをするのが利益的だと説明していました。

当時私は2NLzをショートハンドとフルリング合わせて8面で打っており、効率の良いプレーを追求していました。そこで、迷うような場面ではとりあえずオールインすればよいのかと理解した(振り返ってみるとたぶん違いますが)私は、彼の戦略を本格的に取り入れました。

件のmetal_ouda戦略を目にしてそのことを思い出した私は、今の2NLzならどれくらいまでバリューベットできるのだろうかと考えました。ぼんやりと、こんな感じの条件が揃ったらとりあえずGOサインをだす感じで…といった感じで条件を詰めていきました。

仮説をたてたら検証せずにはいられない性分なので、実際にやってみました。今回の記事はそのために打ったおよそ5000ハンドをまとめたレポートとなります。

後半は2NLz向けの戦略的なことも書きました。

オールインの条件

ある程度再現性を保つために、各ストリートごとに、だいたい以下のルールでさくっとオールインすることにしました。

Preflop
リンパーがいた場合やショートスタックがオープンしている場合、AKs+、KK+で状況にかかわらずオールイン。

Flop
フラッシュなどのドロー目があるボードで、強いオーバーペア+やナッツフラドロを持っている場合、オールイン。

検証開始初期にドライボードでもオールインしましたが、すぐにドライボードでは普通に打つことにしたので、カウントしていません。

セミブラフでのオールイン画像1

Turn
フロップと基本的に同じ。でも次のようなラインがあり得る。
AKでフロップKヒット、通常のCB→ターンでドロー目ができてしまったので、とりあえずオールイン。

River
(相対的に)ナッツ級を持っていたらオールイン。
イメージとしてはリバーでいきなり大きくポットオーバーベットでオールインする感じです。

トリプルバレルからのリバーオーバーベットオールイン画像2

今回の試行の中で一番薄いバリューを狙ったオーバーベットオールイン画像3

その他の基本戦略

その他の基本的なプランはこんな感じです。

・プリフロップのオープンは常に2.5bb。
・3ベットはIPやOOPに関わらず常に相手のオープンサイズの3倍。OOPからは小さめですが、相手はこちらのサイズでほとんどレンジを変えたりしないという読み。
・ポストフロップのベット額は50%か75%。33%などの小さいベットサイズは一切使っていません。相手が弱みを見せている場合や3ベットポットでは50%で、基本的に75%固定です。

結果発表

オールインする基準を紹介したところで、それぞれのストリート毎のオールイン戦略の結果を列挙したいと思います。

掲載データ

・オールインした回数
・そのうちのドローでのオールイン回数
・コールされた回数
・EV

ドローでのオールインはフロップとターンだけなので、逆に言えばプリフロップとリバーはバリューハンドだけでオールインしていることになります。

Preflop

オールイン:10回
被コール :5回
EV    :$4.36

Flop

オールイン:18回
ドロー  :8回
被コール :7回
EV    :$6.04

Turn

オールイン:9回
ドロー  :0回
被コール :4回
EV    :$6.33

River

オールイン:19回
被コール :7回
EV    :$14.62

Total

オールイン:56回
ドロー  :8回
被コール :23回
EV    :$31.35
被コール率:41%

集計してみたところ、思ったよりドローで突っ込んでいませんでした。ターンでドローでオールインする機会は、今回は0でした。

全体的にみると予想より若干コールされた印象です。特にリバーのオールインはものすごい角度からのコールが入ったりするので、十分考慮すべき戦略だと感じました。

ちなみにオールインではなくて、リバーで3ポットくらい打ってコールを貰ったことも2度ほどあります。

今回この戦略を試してみた感想として、次の2つは実戦にある程度取り入れても良いのではないかと思いました。

1.フロップでドロー目があるボードが出たときに、セットなどの強い役とモンスタードローでオールインする
良いところ:弱いドローでコールしてくれたりする。ショーしたときにこちらのハンドだけ一方的にまくられている(ように感じる)展開が減るので、ティルトし辛くなる。
2.リバーにおいて、ナッツ級ハンドでオールインする
良いところ:EVが増える

共通する悪いところ:ポーカー上手くならないかも…

特にリバーは相手のレンジとか気にせずに強いハンドで思い切ってオールインすると、とんでもないValueになったりしてすごいウィンレートがでそうです。悪い部分についてはまあ…

ただし、今回の検証ではこの戦略を取り入れない場合と比較してEVが高くなっている、と証明したものではないので、実際のところ最大EVとなっているのかはわからないという部分には留意していただければと思います。

とはいえ、私が2NLを実験的なプレーなしで打つとしたら、リバーでバリューのみでオーバーベットしたり、オールインする戦略は取り入れると思います。また、相手を見てフロップでオールインすることも時折あると思います。

収支など

5000ハンド程度なのであまり意味はないのですが、一応収支を掲載しておきます。ちなみに私は普段のレートとかだと赤線だだ下がり型の人です。

画像4


序盤は驚異的に上振れましたが、3000ハンドを越えたあたりからクーラーをたくさん引いてしまい、あまり伸びませんでした。

とはいえ全体的に見ると厳しい下振れにはぶつからなかった、幸運な期間だったと言えます。

久々に2NLzを打ったということで、気づいた点としていくつか戦略的なことにも触れておきたいと思います。

アグレッションとディフェンス

今回の検証中に、3ベットは9%くらい打っていました。また、フロップCBも70%弱打ちました。アグレッションは3.5以上あり、強い相手には簡単にエクスプロイトされるであろう値です。

しかし私はこれでも全く問題ないんじゃないかと思っています。

GTOでは、相手のプレーバックレンジが狭い場合、高い頻度でベットしていくことが肯定されます。

これはどういうことかというと、相手があまりレイズしてこないフィールドでは適正ベット率以上にどんどん打って良いということを意味します。

あまりレイズされないので微妙なバリューハンドでベットしてブラフレイズに降ろされることをそこまで心配しなくても良いですし、こちらのレンジの弱みを突いてオーバーベットされたりもしないので、チェックレンジをきちんと確保する必要性もそこまで高くありません。

レイズされたら相手は大概2ペア+なので、素直に降りることになります。

同様に、4ベットが少ないなら3ベットをたくさんすることが利益的になります。4ベットされたら降りればよいのです。だって相手KK+ですから。

QQで4ベットされたら降ります。
CBを打ってレイズされたら降ります。
AAでダブルバレルしてレイズされたら降ります。
AAでトリプルバレルしてレイズされたらたぶん降ります。

アグレッションが低いフィールドでは、レイズされたら基本的に降りるラインで問題ないと思います。

ちょっとくらいブラフに降ろされたって全然構いません。だってバリュー率80%以上あるんじゃないでしょうか? 言い換えるならば、フォールドすることが最大の搾取戦略なんです。

ですから、しっかりしたサイズ(70%とか)のバリューベットを打っていき、激しい抵抗にあったら諦めるというのが正しい戦略だと思います。

セットマイン

マイクロレートでは3ベットに対してセット狙いでコールするセットマイン戦略が非常に一般的ですが、これは理にかなっています。なぜなら、3ベットレンジが狭く、サイズも小さい傾向があるからです。

この戦略の肝は、セットが引けたときにビッグポットを取れる可能性が高い(かどうか)、という点にあります。よって相手の3ベットレンジが広い場合には、当然相手に強い役ができる可能性も下がるので、その有効性が下がってしまいます(相手が十分アグレッシブならその限りではないですが)。

そういった場合はローポケットはただのエクイティが低いハンドなので、フォールドが正しくなります。

ローポケットでのセットマインはSnowieなんかだとあまり推奨されない戦略かなと思います。たとえばBTNの3ベットに対してUTGから33はフォールドを推奨されると思います。

しかし相手の3ベットレンジが極端に狭く、簡単にペイしてくれるような傾向があるなら、セットマインを狙う価値はあると思います。

CB打ち過ぎ?

高いCB頻度についてはどうでしょうか。SnowieはCBレイズに搾取されないよう、きちんとボードを選び、バランスを取りますが、相手がブラフではほとんどレイズしてこないなら、少しくらい多く打っても問題になりません

上述のように、ブラフレイズで降ろされる可能性は低いわけですから、やや打ち過ぎでもEVを失う展開は少ないはずです。

GTOとSnowieと2NL

マイクロレート全般に言えることだと思いますが、GTOやAIの戦略をむやみに取り入れるよりは、普段の自分のプレーラインを確認し、相手からどんなハンドが出てきているのか把握していくことが大切だと思います。

2NLで勝つためにはどうすればよいのかという問いに対しては、回答はやはり何年も前から変わっていないと思います。

・バリューベットをしっかり打つ
・相手のアグレッシブなアクションには基本的に降りる

これだけです。しかしこれを我慢強くしっかりやり続けることは、なかなか難しいとも思います。

現実的に考えて、SnowieやGTO Solverのプレーを直接取り込むことが良い結果につながるとは言えないフィールドです。だからこそ、自分のプレーを定期的にトラッカーで確認して、基本的なプレーラインを守れていたかどうかを、日々点検することが大切だと思います。

ショーダウンまで進んだハンドは積極的に確認して、このレートではどれくらいバリュー寄りで、どれくらいブラフを打ってきているのか、小さいポットと大きいポットでは違いがあるのか、ポジションで傾向は異なるのか、といったあたりを抑えていくのも収支に直結すると思います。

最後に、今回の検証で一番大きなポットになったハンドを掲載して終わりにしたいと思います。

Boom: https://www.boomplayer.com/30171273_1A58B21A72

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フロップとターンで1bbのバレルにコールして、リバーでナッツフラッシュが引けました。もちろんドンクオールイン。ちなみに1002%ポットサイズベットでした。

下のフラッシュがいたらラッキーと思っていたのですが、ここが出てくるわけですから、極端に大きなサイズのバリューベットというのは十分試す価値のある戦略と言えるのではないでしょうか。

まあ色々書いたのですが、なんというかNLHってGTOとか広まっても、思った以上に自由なゲームだと思うんです。そのへんも含めて、結局このゲームを楽しんだ者勝ちなのかなと思っています。

以上、長文に目を通していただきありがとうございました。

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