八村塁全試合記録②31試合目~41試合目

◆31試合目◆

2020年2月22日(現地時間21日)

ワシントン・ウィザーズの八村塁がキャピタル・ワン・アリーナで行われたクリーブランド・キャバリアーズ戦に出場した。

オールスターの『ライジングスターズチャレンジ』に出場した八村塁が序盤から得点を重ね主導権を握ったが、後半で42得点しか奪えずチームは108-113で敗れ、連勝は2でストップした。

開始30秒、ペイントエリアのスペースに飛び込みミドルシュートを沈めて最初の得点を決めた八村は、アーリーオフェンスからのドライブ、イザック・ボンガのシュートミスをプットバックダンクで押し込むなどエンジン全開。

止まらない八村はトップオブザキーから3ポイントシュートも沈めて、4本すべてのフィールドゴールを成功させる。その後、ゴール下でのシュートは阻まれたが、ボールプッシュからアシストを挙げるなど、第1クォーターで9得点2リバウンド1アシストの活躍を見せ、チームも41-32とリードした。

ケビン・ラブとマッチアップする時間帯が多かった八村は、身体を寄せて簡単にボールを入れさせず、ラブのフラストレーションを溜めることに成功。後半にはパワープレーでラブを押し込んでゴール下を成功させるなど、ラブとのマッチアップでアドバンテージを握った。

八村のパフォーマンスは安定していたが、ウィザーズはトリスタン・トンプソンやアンドレ・ドラモンドのリムプロテクターの前にシュートが決まらなくなり失速していく。

ほとんどの時間をリードしていたが、トンプソンのアリウープを食らい、最終クォーター残り7分を切った場面で同点に追いつかれた。八村をコートに戻すも、ブラッドリー・ビールを中心とするオフェンスに絡むことができず存在感を発揮できない。

そして、ダリアス・ガーランドやコリン・セクストンら若手選手に連続で得点を許し、8点のビハインドを背負った。残り46秒には、復帰したトーマス・ブライアントのレイアップで4点差に迫るも、トンプソンのブロックショットに遭い、アウトサイドシュートも決まらず、逆転負けを喫した。

八村は30分の出場で3ポイントシュート1本を含む17得点7リバウンド3アシスト2スティールを記録。ウィザーズがリードする展開を作る立役者となったが、勝負どころでオフェンスに絡めなかったことが悔やまれる。

8位のマジックも敗れたため、ゲーム差は3のままだが、東カンファレンス最下位のキャバリアーズに敗れ、連勝がストップした。

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◆32試合目◆ 

2020年2月24日(アメリカ現地23日)に敵地シカゴのユナイテッド・センターで行なわれたワシントン・ウィザーズ対シカゴ・ブルズの一戦は、ホームのブルズが126-117で勝利した。32戦目の出場となった八村塁は怪我から復帰後、7試合連続でスタメン出場。29分出場しフィールドゴール(FG)を8本中4本成功し、2試合連続の2桁得点となる10得点と8リバウンド、4アシストをマーク。ウィザーズは敗戦し、オールスター明け2連敗。

八村は10得点のうち、8得点は第1Qに記録したもので、第2Q以降の出場時間(19分53秒)では第4Qの2得点のみに終わった。リバウンドをキープしながらボールを奪われるケースやトラベリングなどでターンオーバーはNBA32戦目で自己最多の4回。スモール・ラインアップのセンター役を途中で務めるなど奮闘はしたが、ミスも目立つ試合となった。

 自己最多の53得点(40得点以上は今季8回目)を挙げたブラッドリー・ビールの通算得点は1万1103となり、ウィザーズの歴代通算得点でジェフ・マローン(1万1083)を抜いて歴代2位に浮上。ダビス・バーターンズ(27)は5本の3点シュートなどで22得点を稼いだものの、ターンオーバー数は6回を数えた。

試合後八村は、

「良い出だしでも、そこから気を抜いて20点差くらいのランをつけられて、そういう試合の流れになってしまった」

ディフェンスについても、
「集中していなかったのかなと僕は思うので、そういうところは決してあってはならないと思います」と語った。

 ウィザーズは2月25日、地元ワシントンDCで48勝8敗でリーグ全体の首位に立っているバックスと対戦。20点差で敗れた1月28日以来の顔合わせとなるが、前回は八村は欠場しており、昨季のMVPで球宴では主将を務めたヤニス・アデトクンボ(25)とは初めてのマッチアップとなる。
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◆33試合目◆

2020年2月25日、本拠地ワシントンDCで行われたバックス戦に先発し、延長戦にもつれ込んだ試合で自己最長となる46分6秒プレーし、12得点4リバウンドをマーク。昨季MVPのヤニス・アデクトンボ(25)とマッチアップしてディフェンスで奮闘したが、試合は134―137で惜敗した。東カンフェレンスの首位のバックスを追い詰めたものの延長の末に敗れ、3連敗で20勝36敗となった。

この日の八村は守備を中心に奮闘した。昨季MVPアデトクンボと何度も1対1でマッチアップ。その相手エースを前半終了時点で8得点に抑えるなど自由にプレーさせず、「ベストプレーヤーということで、気合いを入れた。フィジカル面でも頑張ってできた」とうなずいた。

攻撃面では、第1クオーター(Q)は無得点だったものの、第2Qにフェイクを入れたあと左手で技ありのフックシュートを決めるなど、じわじわと得点を重ねた。延長では一時逆転の3点シュートにも成功。味方に効果的なパスを送り、相手ボールを奪って速攻の起点になるなど、数字に表れない部分での貢献が光った。

ディフェンスに課題があるウィザーズだが、この日は最後まで守備の意識を高く持ち続けた。その筆頭格に挙げられる働きを示した八村は、「チームで守ることが出来た」。すでにプレーオフ進出を決めている強敵に競り負けたとはいえ、収穫を得た様子だった。ブルックス監督は、「今日の塁は、守備で大きなインパクトをもたらした」と評価した。
バックスは昨季のMVPで球宴の主将を務め、今季30・0得点(リーグ2位)、13・6リバウンド(同4位)を挙げているヤニス・アデトクンボ(25)が攻守両面でチームの大黒柱。しかし八村は試合開始からマッチアップしたNBAの看板選手に対して「9勝4敗」だった。

3連敗となったウィザーズ(20勝35敗)は、ビールが55得点でブルズ戦の53得点に続く2試合連続50得点超。自己最多を更新した。また、シャバズ・ネイピアーが今季自己最多の27得点を記録している。

試合後、八村は「今のNBAで一番強いチーム」との対戦だけに、気合満点で「良い戦いはできたんじゃないか」とコメント。アデトクンボとの対戦にも「ベストプレイヤーということで、僕も気合を入れて、力強くフィジカルで頑張ってできたんじゃないか」と、一定の手ごたえをうかがわせた。

アデトクンボの最もすごかったところを問われると、八村は「あのサイズであの速さというのは大きかった」と返答。「最後のところはコミュニケーションミスでやられてしまうところがあったので、直していかなければいけない」と課題を口にしている

これは条件を「アデトクンボがボールを持って攻める姿勢を見せた」ときに絞った場合での、八村との“戦績”である。該当ケースは計13回(あくまで主観的です)。アデトクンボはこのうちアリウープからのダンクや、ターン・アラウンドからのジャンプシュートなどで4本のシュートを決めている。

 しかし第1Q、八村はアデトクンボが持ち味となっているロングストライドを生かしたドリブルでの突進を2度くい止め、どちらも苦し紛れのパスに変えさせた。第2Qに左のローポストからバックターンでベースライン際をドライブされるとすかさず体を密着。ゴール下でシュートするスペースを与えなかった。さらにピック&ロールを仕掛けられてスイッチを余儀なくさせられたあと、インサイドをついてきた211センチのMVP男を瞬時にカバー。あわてたアデトクンボはボールを自分の脚に当ててターンオーバーを犯してしまった。反則で止めたのはわずかに1回。アデトクンボが加速してリングに迫ってくると多くのチームがその前に2人を配置して“走路”を遮断する戦術をとってくるのに対し、ウィザーズはそのほとんどを八村1人でまかなっていた。

 アデトクンボが開始早々からコートにいた第4Q、八村は通常のローテーションでは加わらないウィザーズのセカンドユニットとプレー。それはひとえにスコット・ブルックス監督(54)が背番号8のルーキー以外に“ヤニス・ストッパー”が存在しないと判断したからだろう。

 この最終クオーターでウィザーズは41―29。延長で敗れはしたが、最大20点差をはねのけて一時はリードを奪った。しかもアデトクンボは残り1分36秒には6反則目を犯して退場となっている。今季のフィールドゴール(FG)の1試合平均試投数は20・1本(成功は11・1本)だが、ウィザーズ戦では今季3番目に少ない12本(成功は8本)。八村がアデトクンボから44・8%相当(9本)のシュート機会を削り取ってあわてさせたからこその“大接戦”だったと思う。


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◆34試合目◆

2020年2月27日(日本時間)、本拠地でネッツと対戦。西海岸へのロード4連戦前最後のホームゲームで110-106で勝利。連敗を3で止め、オールスター明け初勝利を飾った。怪我からの復帰以降、9試合連続スタメン出場となった八村塁は26分59秒のプレー時間で、17得点、4リバウンドを記録した。

東カンファレンス7位のネッツと対戦したウィザーズ。プレーオフ進出に向けて負けられない一戦で、スコット・ブルックスヘッドコーチはスタメンを変更。イシュ・スミスが務めていたポイントガードに、シャバズ・ネイピアーを起用して臨んだ。

 両チーム通じて最初のポイントを左ウィングからの3Pで記録した八村は、その約20秒後にイアン・マヒンミのスティールから始まったファストブレイクで、左コーナーから再び3Pを沈めて早くも6得点を記録。ネッツはたまらずタイムアウトを要求した。

 さらに2点を加えた後、残り5分34秒に左コーナーでボールを受けると、シュートフェイントからリムへ向かってドライブ。ジャレッド・アレンに接触しながらシュートし、失敗したもののファウルを誘ってフリースローを獲得した。そのフリースローの2本中1本決めた八村は、合計9得点とし残り4分8秒にベンチへと下がった。

 第2Q残り6分27秒から再びコートに立った八村は、ディフェンス面で相手のフェイクに引っかからずに粘り強いプレーを見せてターンオーバーを誘い、ネッツにリズムを作らせない。残り2分46秒に、マヒンミのショットブロックから始まった攻撃でボールを受けると、強引にリムへ突進。ファウルを受けてフリースローを獲得。1本を決めて4試合連続の2桁得点に乗せた。

 さらに残り1分26秒にディフェンシブリバウンドを拾うと、自らボールを運んでリングへ一直線。レイアップを沈めて12得点に到達。その後ペイント内で相手と接触しながらもレイアップを決め、さらにアンドワン獲得。フリースローもしっかり決めて前半だけで15点を記録した。チームも60-46とリードして試合を折り返した。

 第3Q残り8分34秒に左手でのレイアップを決めた八村は、残り7分23秒にカリス・レヴァートのシュートのブロックを試みるも、惜しくもゴールテンディングの反則に。その後パスミスでターンオーバーを犯した八村は、ネッツに追い上げを許したチームとともにペースを崩し、残り6分28秒にトーマス・ブライアントとの交代でベンチへ下がった。

 14点のリードを得て後半に入ったウィザーズだったが、デアンドレ・ジョーダンに早くもダブルダブルを記録されるなど、このクォーターで逆転を許し最終Qへと突入した。

 最終Q、残り7分8秒で再びコートに立った八村は最後までプレー。大黒柱ビールの活躍などもあり、再び逆転に成功したウィザーズが後半戦4試合目で初勝利した。
接戦をものにして、球宴明け4試合目で初白星。「どうしても欲しい勝ちだった。勝てて良かった」と胸をなで下ろした。

 最大18点のリードを奪いながらも、第3クオーター(Q)に逆転を許す展開。八村もパスミスでターンオーバーを犯すシーンもあり、「出だしがダメで、追いつかれてああなってしまった」。それでも第4Qに再び追い上げ、シーソーゲームを制した。ディフェンスが良かったのでこういう結果になったのかなと」と汗をぬぐった。

 八村は序盤から3ポイントが好調。第1Qで2本連続で決めるなど、この日は成功率100%。復帰後も4試合で15本中7本を成功させている。「自信をもって練習してきているので、ああいう風にうてる。練習通りの動きだったので、いい感じで打てました。どのタイミングで打つというのも、フィルム見て色々とやってきたので、そういうのも入ってきている」とコメント。

チームの公式Twitterを通じて八村は「どうしても欲しい勝ちだったので勝てて良かったです」と口にし、「出だしがダメで、追いつかれてしまいましたが、しっかりと持ち堪えて勝つことができて良かったです。オフェンスでは良い流れで決められなかったこともありましたが、ディフェンスが良かったので勝てたと思います」と試合を振り返った。

 またケガから復帰後、3ポイントを15本中7本と高確率で決めており、この日も3ポイントを2本放ちすべて成功した。そのことについて聞かれると「自信を持って練習してきているのでいい感じで打てました。どのタイミングで打つかもフィルムを観て学んできたので、その成果が出たのではないかと思います。アーチがないと3ポイントは入らないですし、僕のプルアップシュートとかはあまりアーチがないので、少し(アーチを)意識しています」と話した。

 次戦からは、アウェーでウェスタン・カンファレンスとの試合が4戦続き、ここから8日間でロード4連戦。

「西に行くということで毎回強いチームと戦うことになるので、ディフェンスが勝利の鍵になると思います。引き締めていきたいです」と意気込みを語った。

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◆35試合目◆

2020年2月29日(現地時間28日)、ワシントン・ウィザーズの八村塁がビビント・スマート・ホーム・アリーナで行われたユタ・ジャズ戦に出場した。

 スタートとしてコートに立った八村は、開始秒にこの日初得点を記録すると、オフェンスリバウンドからのレイアップで続け様に加点。残り3分12秒にはスティールからダンクを叩き込み、第1クォーターで6得点をマーク。さらに第2クォーターには3ポイントも沈め、前半だけで11得点。チームとしても第2クォーター終了間際にブラッドリー・ビールの3ポイントが決まり、60-58とリードして前半を終える。

 しかし、第3クォーターはジャズに試合の主導権を握られることに。八村もフリースローやレイアップで4得点を生むも、81-90と逆転されてしまう。第4クォーター開始早々、ジョーダン・クラークソンに3ポイントを決められ、リードを2ケタ台に広げられる。その後は一時3点差まで詰めるも、終盤に再び引き離され、最終スコア119-129でタイムアップを迎えた。

八村が守備で何度も見せ場を作った。冷静な読みで相手のボールを奪い、自己最多3スチールを記録。「ディフェンスでも活躍していきたいと思っている。そこに関してはいいことができた」と納得の表情を浮かべた。

24日のバックス戦でも前年MVPのアデトクンボを抑えたように、守備面で着実な成長を見せている。この日は7リバウンドと高さも光った。攻撃では序盤から積極的にシュートを放つ姿勢が見られた。第3クオーター以降は2得点にとどまったとはいえ、「後半も少しずつ(攻撃に)絡めるようになっている」。着実な手応えを感じている口ぶりだった。

八村は約32分のプレータイムで15得点7リバウンド3スティールをマークした。
なお、ウィザーズのブラドリー・ビールは41分の出場で42得点をマークしたが、西地区遠征4連戦の初戦は黒星となった。

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◆36試合目◆

 2020年3月2日(現地時間1日)、ワシントン・ウィザーズの八村塁が敵地チェイス・センターで行われたゴールデンステイト・ウォリアーズ戦に先発出場した。八村は負傷から復帰後、11試合連続の先発。

 第1クォーター開始3分56秒、八村は自ら奪ったディフェンスリバウンドをそのまま持ち込み、この日初得点を記録。さらに第2クォーター開始2分1秒には果敢なドライブからバスケットカウントを決め、フリースローも沈めて3点プレーを成立させる。ウィザーズのブラッドリービールが前半だけで27得点を奪うなど躍動し、63-57とリードして試合を折り返した。

 第3クォーターもウィザーズペースで試合は進み、八村もフリースローやダンク、3ポイントでこのクォーターだけで10得点。ダービス・ベルターンスの連続3ポイントなども決まり、94-76と18点のリードを積上げて第4クォーターへ。その後もベルターンスがコンスタントに3ポイントを沈めるなど、点差を詰めることは許さず。最終スコア124-110でウィザーズが勝利を収めた。

 八村は約30分のプレータイムで15得点8リバウンド1アシスト、6試合連続となる2ケタ得点をマークした。

八村は試合後、チームの3Pタッチについて「DB(ダービス・ベルターンス)をはじめ、今日は僕らのオフェンスの持ち味が出た試合だと思います」

「前半もディフェンスから思い切っていけたと思うし、後半の初めもしっかり気を引き締めてできた。僕らの持ち味がオフェンスで出た試合だった」
とコメント。

ウィザーズ球団新記録の18試合連続25得点超えを達成したブラッドリービールについては、
「ブラッドも毎日のように記録を出してきているので、僕としてもすごい嬉しいですし、彼もそのくらいの努力をしている選手なので、値する選手だと思います」と話した。

ウィザーズ(22勝37敗)は、ブラッドリービールが34得点、3Pシューターのダービス・ベルターンスも10本中8本の3Pを沈め、29得点、トーマス・ブライアントが12得点で勝利に貢献した。

なお、ビールは現在、今季の1試合平均得点を30.4得点とし、ヒューストン・ロケッツのジェームズ・ハーデンに次ぐリーグ2位についている。

敗れたウォリアーズ(13勝48敗)は、アンドリュー・ウィギンズが27得点、エリック・パスカル、マイケル・マルダー、ジョーダン・プールがそれぞれ17得点、マーキーズ・クリスが12得点、13リバウンドだった。

ウィザーズは、3/4日本時間にサクラメント・キングスと対戦する。

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◆37試合目◆

2020年3月4日(現地時間3日)、ワシントン・ウィザーズの八村塁が敵地ゴールデン1センターで行われたサクラメント・キングス戦に先発出場した。

試合開始から1分40秒、出だしの勢いで圧倒されたウィザーズは0-8とリードを許して早々にタイムアウトを取ることに。その後もキングスの勢いは落ちず、アレックス・レンのパワープレーを止められず、そこに人数を掛けるとパスアウトから3ポイントシュートを射抜かれる悪循環でディフェンスが崩壊。こうなるとオフェンスでもリズムが悪く、良いシュートシチュエーションを作れない。

前半を終えて49-76。キングスのフィールドゴール成功率は60%を超え、3ポイントシュートもウィザーズの3本に対して8本成功。さらにリバウンドでも25-15と圧倒し、すべての面で大きく上回っていた。

それでも後半、ウィザーズは猛烈な巻き返しを見せる。第3クォーターの立ち上がり、チームに火をつけたのは八村塁だ。前半は4得点と存在感がなかったが、ビールのスティールに反応してすぐさま攻めに転じてファストブレイクで得点を挙げると、トーマス・ブライアントのパスを受けて相手ローテーションのミスを逃さずフリーで放った3ポイントシュートを沈める。さらにはドライブでゴール下まで侵入し、ポンプフェイクでファウルを誘ってフリースローを2本決めて連続7得点。これで意気消沈していたチームに勢いを与えた。

ここからはエースのブラッドリー・ビールが連続得点と本領発揮。またクリッパーズからトレードでウィザーズに加入し、プレータイムが伸びて結果を残しているジェローム・ロビンソンも思い切りの良いプレーでチームを後押し。キングスは相手のフィジカルなプレーにファウルがコールされないことで集中を欠き、ヘッドコーチのルーク・ウォルトンも判定への抗議で退場処分に。完全にリズムを崩したキングスに対してウィザーズはダービス・ベルターンスの3ポイントシュートも当たり始め、この12分間を46-19と圧倒。95-95と追いついて最終クォーターを迎えた。

しかし、第3クォーターの猛追をフル出場で支えたビールをベンチに下げて休ませる間に、キングスはボグダン・ボグダノビッチを中心に立ち直る。残り8分44秒、ほんの一息入れただけのビールと八村をコートに戻した時には4点ビハインド。だが頼みのビールはキレを失いつつあり、時間が経過するごとにキングスの勢いが目立つようになった。

ビハインドを背負い時間がなくなっていく状況で八村は果敢にアタックを続け、残り33秒で相手からフレグラントファウルを誘うなど奮闘するが、チーム全体が勢いを失っていくのを止めることはできなかった。キングスも終盤にミスが続くバタバタぶりで点差は大きく開かなかったが、結局は126-133で力負けを喫している。

八村は30分の出場で20得点6リバウンド3アシスト2スティール。3ポイントシュート1本を含む6つのフィールドゴールを効率良く決めてビールに続く20得点を挙げ、ディフェンスでも前半に大暴れしたアレックス・レンを後半は抑え込むなど攻守両面での活躍が光った。

今シーズンのルーキーではジャ・モラントとザイオン・ウイリアムソンが突出したインパクトを残しているが、その2人に続く結果を出している。ただ、ウィザーズが勝つにはビールの奮闘だけでは足りないのが現状。八村がただのルーキーであれば今の活躍で十分だが、チーム状況はそれ以上を求めている。


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◆38試合目◆

2020年3月5日(現地時間4日)、ワシントン・ウィザーズの八村塁が敵地モダ・センターで行われたポートランド・トレイルブレイザーズ戦に先発出場。八村は復帰後13試合連続でスタメン出場し、28分31秒の出場で8試合連続の2桁となる11得点、4リバウンド、4アシスト、1スチールだった。前試合まで4試合連続で15得点以上を挙げていたが、相手の厳しい守備に阻まれて思うように得点が伸びなかった。

 第1クォーター開始1分50秒、八村はブラッドリービールによるチーム初得点をアシストすると、開始4分50秒にはフローターショットで自身も得点。一方でディフェンスでは、経験豊富なカーメロアンソニーに苦戦し、チームとしても30-37とビハインドを背負うことに。

 続く第2クォーターもなかなか点差を詰められずにいる中、残り4分30秒には八村が鋭いドライブから左手で豪快なダンクを叩き込む。同2分15秒にはダービス・ベルターンスのアシストから再びダンクで加点。それでもブレイザーズに追いつくことはかなわず、61-72で前半が終了。

 第3クォーターもブレイザーズ優位の展開は変わらず、ウィザーズはベルターンスが8得点を挙げるも点差を縮めることはできず。八村もフリースローによる1得点に止まり、79-100で最終クォーターへ。第4クォーター序盤はウィザーズが猛追するも、中盤以降は再びペースを握られ、最終スコア105-125でタイムアップ。ウィザーズはウエストカンファレンス10位のトレイルブレイザーズに敗れ、2連敗を喫した。

 八村は約29分のプレータイムで11得点4リバウンド4アシスト1スティール、8試合連続となる2ケタ得点を記録した。

八村は「連戦で疲れも見えてきて、前半あまり動けていなかったのは自分たちでもわかりました」と試合を振り返る。

「相手も強いチームで、ウェスタン・カンファレンスでやってきているチーム。負けてしまいましたが、戦い切ったとは感じます」。

鼠蹊部のけがから復帰したリラードは「とても状態は良い」と語った。

「うまく動けていたし、いろいろとこなすことができた。あまり無理はしたくなかったので、バランスは良かったと思う。リードもたっぷりあったので、強めのカットをしたりドライブをするなど、爆発力を出すポイントを選ぶことができた。しっかりとディフェンスポジションを取ったり、スクリーンをファイトオーバーしたりと、動きが制限されている感覚はなかった」。

ウィザーズ(22勝39敗)は八村の11得点に加え、ビールが29得点、6リバウンド、6アシスト、ダービス・ベルターンスが21得点をマーク。ビールはこれで20試合連続で25得点以上を記録している。

勝利したブレイザーズ(28勝35敗)はリラードのほかに、カーメロ・アンソニーが25得点、ハッサン・ホワイトサイドが24得点、16リバウンド、CJ・マッカラムが22得点を記録し、エースの復帰戦を白星で飾った。

ブレイザーズのアンソニーの今季平均得点は15・3得点だったがウィザーズ戦ではチーム最多の25得点。第1Qで八村とは「1対1」を6回演じたが、フリースローを含めてこのうち5回を得点につなげている。最初の得点は5分50秒。ポストアップのスクリーンからデイミアン・リラード(29)をベースライン際からトップの位置に押し上げたあと、そのリラードからボールを受けて左サイドで八村と向き合った。

 ここでアンソニーは左足をピボットフット(軸足)にして、フリーフットとなった右足で4回のフェイクを試みている。たぶん八村がどんな能力を持った選手かわからなかったので探りを入れたのだろう。八村は間断なく両脚を動かし、さらにハンドチェックもしてきたためにアンソニーはジャンプシュートは打てないと判断。4回目のフェイクで八村の左足が後ろに下がった瞬間にそのスペースを突破し、ドリブルでペイント内に侵入して距離3メートルのジャンプシュートを成功させた。

 その1分後。アンソニーは敵陣ベースラインでのスローインから再びリラードからボールをもらって八村に正対。いったん右足をピボットフットにしたあとこれを左足にシフトし(よく見ればトラベリング)、左へドリブルしたあとに右に体を寄せ、そこでワンフェイクを入れて同じ3メートルのジャンプシュートを決めている。つまり同じ距離のシュートながらどちらも脚の運びは変えて八村を揺さぶっていた。

 この試合で八村はトレイルブレイザーズのセンターで今季のブロックショット部門で1位となっているハッサン・ホワイトサイド(30)にペイント内でのシュートを4回阻止された。ポンプ・フェイクをしているのだが、ホワイトサイドはまったく動じなかった。なぜなら八村の“立ち位置”が前後左右に動いていないからだ。ボールだけを凝視して、そこに手を合わせる姿は印象的だった。

 ディフェンス面での評価が低下しているとは言え、アンソニーのオフェンス・スキルは依然としてNBAのトップクラスだ。八村にとっては目の前で繰り広げられたフットワークは新鮮だったかもしれない。これがNBAで17シーズンも生き抜いて得点王にもなったベテランの持ち味。違うパターンで緩急をつけ、どの方向にも足を踏み出せる動きは八村だけでなく若手選手の“教科書”であるように思う。

 八村はアンソニーをスピードあふれるドリブルと、スクリーンからの手渡しパスと見せかけてのドライブインで2度、アンソニーを完全に振り切っている。すべて負けていたわけではない。その能力の高さはアンソニーも感じ取っていたことだろう。本来スモールフォワードなのに五輪では何度もパワーフォワードとしてコートに登場し、欧州のビッグマンたちをフロントサイドのボックスアウトで体を張って止めていた大ベテラン。

一方、グリズリーズの渡邊雄太は敵地でのブルックリンネッツ戦で5分43秒プレーし、5得点、2リバウンドを記録し、グリズリーズが118-79で勝利した。

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◆39試合目◆

2020年3月7日、ワシントン・ウィザーズはアトランタ・ホークスとホームで対戦し、118-112で勝利。なお、ホークスのトレイ・ヤングは風邪で欠場した。
八村塁は鼠径部の負傷から復帰後14試合連続で先発した。八村塁は33分間出場で、6本放ったフィールドゴールはすべて外れ、フリースローのみの3得点、8リバウンド、2アシスト、1スティールを記録し、連敗を2で止めた。また、八村は試合終盤に値千金のオフェンシブリバウンドも獲得し、そのプレイで得たフリースローを2本とも沈め、勝利に貢献した。

得点ランキングリーグ2位となる平均30.4得点のブラッドリービール(1位ハーデン34.6得点)が、3ポイントシュート7本を含む35得点をマークし、ウィザーズの勝利に貢献した。ブラッドリービールはこの試合で21試合連続25得点以上記録し、今季NBA最長記録を更新中だ。またベンチプレーヤーも含めて、ウィザーズは6人が2ケタ得点を記録するなど、選手がバランスよく得点を重ねた。

 前の試合まで8試合連続で2ケタ得点を記録していた八村塁は、この試合でもスターターとして出場。前半は得点とリバウンド、アシストを記録できず、フィールドゴールも1本放ったのみ。後半も第3クォーター残り9分22秒の場面で、ホークスのケビン・ハーターからファウルを受けながら八村はショットを沈めたが、審判がシュート前のファウルと判定したことで得点が認められず、納得のいかない表情を浮かべていた。しかし八村は試合に集中し続け、献身的にリバウンドを取り、ポストプレーからキックアウトをしてアシストを記録し、ディフェンスではスティールを積極的に狙う場面もみられた。接戦となったゲーム終盤、ウィザーズのビールがレイアップを外すと八村はリバウンドを奪い取り、ディフェンス3人に囲まれながらゴール下でショットを放った。これが外れたものの自らリバウンドを取り、オフェンスリバウンドを2回連続で記録。さらにその直後のウィザーズのオフェンスにて、味方のトロイ・ブラウンJr.がジャンプシュートを外すと、八村は再びオフェンスリバウンドを獲得し、同時にフリースロー2本を手にした。そして八村は落ち着いてこの2本を沈めて、終盤の重要な時間帯で大きくチームに貢献をした。八村は最終的に約33分の出場時間で、3得点8リバウンド2アシスト1スティールをマークした。

第2クォーター中盤には速攻の先頭を走り、ロングボールをゴール下で受けとりシュートを狙うが、ジョン・コリンズのブロックショットに遭い初得点とはならず。それでも直後のポゼッションでは、トランジションから前線へと走ることで数的有利を作り、トロイ・ブラウンJr.のノーマークでの3ポイントシュートに繋げるなど、自分の仕事を遂行していった。

前半を無得点で終えた八村だったが、後半最初のオフェンスでゴール下でシュートファウルを獲得し、フリースローで初得点を記録。その後、チームは八村を強調する戦術をとった。ディフェンスをスイッチさせてミスマッチとなった八村がポストアップするシーンが増えていく。こうしてボールに絡む機会が増えたが、今日の八村はシュートタッチが思わしくなく、得意のミドルシュートやペイントエリアでのシュートがことごとくリングに嫌われた。

また、スティールからボールをプッシュし、バスケット・カウントを獲得したかに見えたシーンではシュート前のファウルと判断され、オフェンスリバウンドを奪取したシーンではその後にボールをファンブルするなど、気合いが空回りした。ホークスの猛追を浴びた終盤にリバウンドでビッグプレーを連発する。最終クォーター残り1分30秒、4点差に迫られたウィザーズはブラッドリー・ビールがレイアップを外してしまう。しかし八村がオフェンスリバウンドを奪い、ジャンプボールにもちこみ、このジャンプボールをマイボールにし再びオフェンスリバウンドを奪ってファウルを誘発。このプレーにどれだけ価値があるかは、スタンディングオベーションで称えるベンチメンバーの盛り上がりぶりが示している。これで得たフリースローを2本しっかり沈めたことで、追撃を振り切った。

無得点だった11月7日のペイサーズ戦に次ぐ、ワースト2位の3得点に終わった八村だが、終盤のビッグプレーが表すようにチームに欠かせない存在であることをあらためて証明した試合となった。

ブラッドリー・ビール(終盤の八村のオフェンシブリバウンドについて)
 八村は気づいていないかもしれないが、彼が勝利を決定づけるプレーをしてくれた。相手はとてつもない追い上げをみせたけど、あのプレーで勝負が決まり、彼は2本のフリースローも決めてくれた。ビッグプレーだったし、大きなリバウンドだった。今夜、リバウンド面では(ホークスの)ジョン・コリンズにやられていた。(あの場面での八村は)うまく体を寄せて、ボールをつかみ取ったんだ。

 ▽トロイ・ブラウン・ジュニア 小さなことが大事だ。彼は優れた数字を残すことで注目されているけど、今夜は他のこともやってくれた。よく相手をガードし、終盤にリバウンドも取ってくれた。(八村は)素晴らしいシーズンを過ごしていると思う。今日みたい試合が“バッドゲーム”と言われてしまうことが、それを物語っているのだろう。(今夜の)彼が悪い仕事をしたとは僕は全く思わない。

 ▽ジェローム・ロビンソン (八村のリバウンドは)大きかったよ。ああやってプロとして確立されていくんだ。ゲームを通じて集中し、終盤にビッグプレーを決める。最初の3クオーターは問題じゃない。大事なのはどうやってゲームを締めくくるかだ。

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◆40試合目◆ マイアミ

2020年3月9日(現地時間8日)、ワシントン・ウィザーズは東の強豪であるマイアミ・ヒートとホームで対戦。ウィザーズのブラッドリービールが23得点、シャバズネイピアーも27得点と、スターターのガード2人がチームの半分以上の得点を稼いだが、終盤に主導権を握ったヒートが一気に流れを掴み、ウィザーズは89-100で敗れ、連勝を逃した。

八村塁は怪我から復帰以降、14試合連続先発し、39分7秒の出場時間で8本のショットアテンプトをすべて外し、無得点に終わり、6リバウンド3アシスト1スティールを記録した。

試合後、八村は

「相手も守備がいいチームで苦労した。自分のプレーをしっかりやらないといけない。あまり今それができていない」と話した。

3月6日の3得点に続き、この日も攻撃面で振るわず、昨年11月6日以来約4か月ぶり2度目の無得点に終わったが、アデバヨとの対決は見応え十分だった。

立ち上がりから0-7とビハインドを背負ったウィザーズだが、エースのブラッドリー・ビールによる連続得点、またセカンドユニットのダービス・ベルターンスが第1クォーターから3本の3ポイントシュートを成功させて接戦に持ち込む。その後もヒートが先行するが、ベルターンズの3ポイントシュートで何とか食らい付き、前半は54-57と3点ビハインドで終えた。

続く第3クォーターはディフェンス合戦に。ハイスコアゲームに慣れたウィザーズにとっては得意な展開ではないが、2日前に勝利したホークス戦からディフェンスに重きを置いており、ハーフコートバスケットを得意とするヒートを相手に互角の攻防を演じる。

その中で八村のプレーにも大きな変化があった。これまではブラッドリー・ビールに次いで得点が期待される選手として多くのパスが回って来たが、ビールとシャバズ・ネイピアーが攻撃の中心へとシフト。八村はボールタッチが少なくなったことで自分のリズムでプレーできず、外からのシュートはリングに嫌われ、ゴール下ではこの試合を通じて3度のブロックショットを浴びて得点が生まれなかった。

それでもヒートの分厚いオフェンスに対抗できたのは、チームディフェンスが機能したからで、そこで八村の貢献は大きかった。アウトサイドではシューターのダンカン・ロビンソンをフリーにさせず、インサイドにヘルプに寄ればジミー・バトラー、バム・アデバヨにイージーシュートを打たせない。センターのトーマス・ブライアントがインサイドを支えきれずに早々にファウルトラブルになり、第4クォーターもほとんどプレーしないままファウルアウトになったが、その後もオールスター選手のアデバヨを相手にフットワーク良くドライブするコースを空けず、しぶといディフェンスを続けた。

これまでは素早くボールを回され、一つのピックプレーやフェイントでズレを作られるとローテーションが間に合わずにイージーシュートに持ち込まれていたウィザーズのディフェンスは、この試合で大きく改善。ディフェンス合戦となった第3クォーターを18-15で上回ったのは、今までにない展開だった。

第4クォーター序盤、ビールがベンチで休んでいる間にネイピアー、ベルターンス、モリッツ・バグナーが奮起して逆転。残り9分半で83-75とリードを最大8点まで広げる。ところが、その後が誤算だった。十分に休めたはずのビールのシュートがことごとくリングに嫌われ、そんなエースに立ち直るきっかけを与えようとボールを集めた結果、そこまで上手く回っていたチームオフェンスが機能不全に陥った。

逆にヒートは、試合途中に左足の指を痛めたバトラーがプレーを続けられないアクシデントに見舞われながらも、アデバヨ、ロビンソン、ケンドリック・ナンとチームの好調を支える主力が攻守に活躍。ラスト9分半を25-3の怒涛のランで乗り切り、100-89できっちりと勝利をモノにした。

ビールは前半だけで20得点を奪いながら、後半わずか3得点。特に勝負の第4クォーターは9本のシュートを放ちながら一つも決められなかった。八村はデビュー7戦目のペイサーズ戦に続きシーズン2回目の無得点に終わり、6リバウンド3アシストとスタッツは伸びなかった。それでも、これまでオフェンスで突っ走るだけで、それで勝てなかったウィザーズの戦い方に変化を持たせた意味で、八村の働きは小さくなかった。ただその一方で、第4クォーター途中には決めれば逆転の、オープンでのコーナースリーを打つチャンスがありながら決められなかったのは課題として残る。

ウィザーズはこれで23勝40敗に。まだ東カンファレンス9位に付けているが、プレーオフ進出となる8位マジックとのゲーム差は5.5あり、残り19試合でこの差を埋めるのはかなり厳しくなってきた。

なお、ブラッドリービールは前試合で21試合連続25得点以上記録していたが、この試合では23得点を記録。今季NBA最長記録は21で止まった。

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◆41試合目◆

2020年3月11日(現地時間10日)、ワシントン・ウィザーズはホームでニューヨーク・ニックスと対戦し、122-115で勝利した。前半はニックスに54-70と大きくリードを許す展開となったが、この試合で40得点を記録したブラッドリー・ビールが、バスケットカウントや3ポイントシュートなど、得点でウィザーズをけん引。エースの驚異的なパフォーマンスで勢いづいたウィザーズが、見事に逆転勝利を収めた。

 9日(同8日)のマイアミ・ヒート戦で今季2度目の無得点に終わった八村塁は、この試合でもスターターとして出場した。ゲーム開始後の最初のポゼッションで、ウィザーズのビールが左サイドでトーマス・ブライアントをピック。ブライアントがボールを受け取ってロールをし、インサイドにディフェンス3人を引きつけると、フリーでゴール下へ飛び込んだ八村へパスが渡り、ダンクを決めた。

 八村は見事なセットプレーで最初のシュートを成功させると、今度はシャバズ・ネイピアーの3ポイントシュートをアシスト。さらにその直後のディフェンスでは、エルフリッド・ペイトンのレイアップをブロックし、攻守で存在感を発揮。またディフェンスリバウンドからそのままボールをコントロールし、ドライブを仕掛けてディフェンスのマークを引き寄せると、インサイドのブライアントへアシストをしてフィニッシュへつなげた。

 その後もターンアラウンドからタフショットを沈め、トランジションで味方からパスを受け取るとダンクを決めた八村。比較的ボールタッチの回数が多かった中で、前半のみで10得点を達成した。後半もニックスのフォワードであるジュリアス・ランドルにフィジカルで負けずにダンクを叩き込み、最終的に約29分の出場時間で、12得点7リバウンド2アシスト2ブロックを記録した。

『The Athletic』のフレッド・カッツ記者によれば、この試合の前日練習のあとに、ウィザーズのビールは八村にアドバイスを送っていたという。「初めて彼は自分のルーキーイヤーについて質問してきたんだ。僕はリラックスして楽しめと彼に伝えたよ」と、ビールはコメントしている。また『Washington Post』のキャンディス・バックナー記者によると、ウィザーズのスコット・ブルックスHC(ヘッドコーチ)が、「ゲームを重ねるごとに競技に打ち込み、成長し、向上していくことで、塁はよくなっていくだろう」と言葉を残したそうだ。


★ブラッドリー・ビールのコメント

 ――今日は序盤から八村をうまく巻き込んだ。

 「昨日、塁と練習後に話をしたんだ。僕に初めて質問してきたよ。僕のルーキーイヤーについて聞いてきた。“もっとリラックスして楽しもう”とアドバイスした。みんなが彼のオフェンスを心配している。みんなが期待しているからね。チームもコーチ陣も、彼のご両親も、君たち(メディア)も、日本中も、心配しているのだろう。彼は多くを背負っている。ドラフト全体9位指名というプレッシャーの他に、自分に対してもの凄いプレッシャーをかけている。ルーキーでスタメン入りし、(シーズン終了後には)オール・ルーキーチームにも選ばれるだろう。ここまで多くを成し遂げてきた。それによって期待も大きくなる。周りのことを気にしないで、目の前のことに集中して精いっぱいやれるかどうか。塁が素晴らしいのは、ハードにプレーしてくれること。その意識は若手には身についていないことがある。もっとしっかりやれと叱り飛ばさなくてもできている。彼には既にそれがあるから、スキルも徐々に身についてくるだろう。シーズン序盤から比べて、大きく成長している。シュートが決まり始めるのも時間の問題だった。早い時間に数本、決まって良かった。彼にとって良い試合になって良かった」

 ――話し合ったことは助けになったと思うか。

 「たぶんね。アドキンス・コーチからも助言があったと思う。必要なことだったから、話ができてよかった。おかげで彼は自信を持ち、快適に感じられた」

 ――八村はチームによりなじんできているように感じるか

 「そうだね。余裕ができてきているのだと思う。相手チームは(八村を)研究する映像が増えている。彼の傾向を把握し始めている。相手は長所、短所が分かるようになってきている。相手は当然、弱点をついてくる。だから日々に集中し、向上しようと務めること。僕も昔、同じ立場だった。最初の4年間はケガが多く、1シーズンに50~60試合しかプレーできなかった。ケガに弱いわけではないと証明したくて、自分にプレッシャーをかけすぎていた。しかし、自分のプレーが向上していくうちに、そういうふうではなくなった。ぶれずにやればいいだけのこと。塁は周りにももっと声をかけるようになって、どんどんレベルアップしていくだろう」

★スコット・ブルックス監督

 「彼(八村)は序盤からアグレッシブだった。もう良いプレーができないとか、ストレスを感じてはいなかった。過去数戦ではショットをミスしたり、ブロックされたり、レイアップを外したり、オープンショットを決められなかったというだけのこと。今日はブラッド(ビール)とTB(ブライアント)の好判断で良いスタートが切れた。TBが良いパスを出して、(八村が開始早々に)ダンクを決めた。望んだ通りのプレーだった。塁は大丈夫だよ。大事なのは競い合い、成長し、1戦ごとに成長していくこと。このリーグの全ての選手に厳しい時間はある。ルーキーとしては、彼は可能な限りの速さで多く吸収してくれている」



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