見出し画像

「空に描いた幸福論」考えたことメモ

夢追翔1st Story Album「音楽が消えた街」よりTr.02「空に描いた幸福論」の感想メモです。
以下に注意して読んでいただけると幸いです。
・この感想は「空に描いた幸福論」のみを聞いた感想です。
・感想文中に死についての話題を含みます。
・この感想は私個人の感想です。
特に2番目については作品の性質上避けることが不可能と判断しましたので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
そして、まだ「空に描いた幸福論」のMVを見てない方はぜひ先に見てきてください。

さて、本題。
この曲の舞台は音楽を聞くことが禁じられた世界です。恐らく音楽にまつわること全般が禁じられているのではないかと考えられます。そんな世界に生きる一人の女の子「アリア」が主人公です。
まず曲の始まりからの歌詞を見てみましょう。

旅立つ朝を出迎える 鳥たちの歌声耳にして
眠りについた街を背に 此処じゃない場所へと踏み出すの

太陽が昇り切るその前に 身支度を済ませて
窮屈な檻を抜け出した 自分の居場所探すため

こんな静かな街なのに 大人は忙しなくて
誰も 彼も 気付かないの 本当に大事なこと

晴れ渡る空 朝日が照らす
可愛い子には旅を させろって言うし?
大好きな旋律 隠れ聴いたの
新しい一歩を 踏み出せる気がして

いつもと変わらない夕陽に お別れを済ませて
戻らないと決めた故郷に 少しだけ寂しくなった
誰に何を言われたって この気持ちは消えずに
きらり 光り 落ちた涙 誰が零したんだろ?

茜色空 街が色づく
喧騒もイヤホンで 掻き消してくの
大好きな旋律 見守っていてね
冒険はまだまだ 始まったばかりだ!

【MV】Tr.02「空に描いた幸福論」 - 夢追翔 feat. アリア(CV:周央サンゴ)【音楽が消えた街】
コメント欄歌詞

「窮屈な檻」と「静かな街」は「音楽が消えた街」の事でしょう。
この日のアリアは朝を告げる鳥、つまり鶏の声で目を覚ましたようです。そして徐々に昇る太陽を見ながら身支度をし、太陽が昇り切るより前には準備が完了したのでしょうか。ずいぶんと朝が早いように感じますが、それだけ旅が楽しみなのだと思います。

大人たちは気が付かない本当に大切なこととは、音楽を聞くこと、歌うことなのでしょうか。仮に音楽について大人たちが気が付いていないのならば、一つの疑問が生まれます。この後分かることですが、アリアがそれなりの年齢になるまで音楽がこの街にありました。大人たちはおそらくもっと長い時間を音楽のある街に生きていたはずです。にも関わらず、もう忘れ去ることが出来るでしょうか。もしかしたら忘れたように、気が付かないように振舞って生きているのかもしれないと思いました。

また朝日の中では「大好きな旋律」を隠れて聴いているのに対し、夕陽の中ではイヤホンをして、喧騒を掻き消すほどの音量で聞いています。「音楽が消えた街」から遠ざかったことを意味しているのでしょうか。

そして忘れてはいけない、この曲の重要なパートが続きます。

音楽だけが 唯一の楽しみ だったのに
奪われた 国に家族さえ
そんなある日 匿名のメール
添付されてたのは 禁じられた筈の……  

《抗えない旋律》

【MV】Tr.02「空に描いた幸福論」 - 夢追翔 feat. アリア(CV:周央サンゴ)【音楽が消えた街】
コメント欄歌詞

このパートは物語の始まり、アリアが旅に出るよりも前の場面になります。まずはこのパートを中心に考えをまとめていくことにしました。

まず、アリアは何歳なのでしょうか。ぬいぐるみを持ち歩くなど、MVの中ではかなり幼く見える外見のアリアですが、音楽を聞いたことがあり、少なくとも音楽を「楽しみ」と認識することが出来る年齢になっています。またメールを受け取ることのできる機械、MVではパソコンを扱うことの出来る年齢であるということも分かります。そのため、アリアは10代後半の女の子というのが私の中での解釈です。

そして、「空に描いた幸福論」の中で何度も登場する「大好きな旋律」はこのパートに登場する《抗えない旋律》の事だったのでしょうか。《抗えない旋律》はアリアの歌唱パートではありません。MVにも登場しない単語です。しかし、コメント欄に作詞作曲者である夢追さんが投稿した歌詞が載せられています。その中にこの《抗えない旋律》という単語が登場します。「匿名のメール」の送り主が曲に付けた名前なのでしょうか。

このパートの謎その3はアリアの家族についててです。音楽が奪われたという歌詞の後「国に家族さえ」という歌詞が続きます。私は初めて聞いたときから「音楽と家族」を国に奪われたのだと考えました。なぜ家族を奪われたのかは定かではありませんが、音楽に関係しているのではないでしょうか。
この部分を聴くまで、私はアリアは家族を置いていく女の子だと考えていました。しかし、この部分を聴き、アリアは置いていく女の子から置いていかれた女の子であったと考えが変わりました。

このパートの次に謎が多いと感じた場所が、曲の最後のパートです。

書きかけの楽譜とぬいぐるみ ナイフとペンを持って
何をすればいいか全て 分かった気がしたんだ

遥けき夜空 月が見下ろす
旅の道連れなら 鞄の中に
大好きな旋律 一緒にいこう
終わりは新たなる 始まりの予感

迷路のような 《市街地》を抜けて
扉守る《警備員》を 華麗に躱し
ついに辿り着いた 私の空へ
竦む脚振り切り 飛び立て未来へと

【MV】Tr.02「空に描いた幸福論」 - 夢追翔 feat. アリア(CV:周央サンゴ)【音楽が消えた街】
コメント欄歌詞

「旅の道連れ」とはその前に登場する「書きかけの楽譜とぬいぐるみ ナイフとペン」の事だと考えられます。
「書きかけの楽譜とぬいぐるみ ナイフとペン」の「書きかけ」の部分は、私が曲中で唯一アリアが10代の少女のようだと感じた部分でもあります。それまでは一貫してアリアの歌声に幼さを感じますが、この部分は一転し大人びた歌声が特徴的だと感じました。その大人びた歌声は何かを覚悟したような重たさも帯びていて、聞いている人をぞくっとさせるような力があります。
ではアリアは何が分かり、何をするのか。これはこの曲の始まりに繋がる部分と言えるでしょう。「自分の居場所」を探すこと、「此処じゃない場所」に「冒険」をすることがアリアのすることなのでしょう。

次に、この歌詞の最後にある「ごめんね」とは誰への謝罪なのか。家族?自分?それとも道連れにするものたち?
そもそもこの「ごめんね」はコメント欄に投稿された歌詞には登場しません。しかしMVの中でアリアは確かに「ごめんね」と何かへ謝罪をしていますし、MVの中には「ごめんね」という文字列が表示されています。そう言った意味ではこの「ごめんね」は《抗えない旋律》と似ている単語です。
アリアはこの旅に「書きかけの楽譜」を持っていきます。音楽を愛するアリアはなぜ書きかけで旅に出たのでしょうか。旅の途中に書くためだったのでしょうか。それともこの街ではもう書けないと思い挫折した楽譜だったのでしょうか。この曲を何度も聞く中で、もしかしたらこの謝罪は書ききることの出来なかった楽譜への謝罪だったのかもしれないと思いました。
またこの楽譜に書かれていた曲はどんな曲なのかも謎です。「大好きな旋律」であれば書ききることが出来ていたのではないかと思うので、もしかすると他の曲なのかもしれません。

「終わりは新たなる 始まりの予感」とあるように、アリアはこの旅の終わりを予感しています。その終わりとは何なのか。曲の最後で明らかになりますが、それは「死」です。

MVの最後に登場する階段を見た時、初め私は13階段だと思いました。13階段とは絞首台に昇る階段の段数から付いた、絞首台の異称です。死へと向かうアリアを表していると感じたのだと思います。

《市街地》のはずれにある建物の《警備員》をアリアは「敵」と呼びます。自身の旅を妨害する敵を躱し、自身の望む未来のために向かうのは高所。

この曲中ではアリアは空を飛んだと表されますが、その前の歌詞は「竦む脚振り切り」です。高所から見下ろす地上は、本来よりもずっと自分の居場所を高く感じさせたことでしょう。
そもそも私は「空を飛ぶ」には近しい意味ながらも、二つの意味があると思っています。まず曲の中で使われている意味に近いと考えるのが「飛び降りる」意味での「空を飛ぶ」です。そしてもう一つは「死」そのものを「空を飛ぶ」と表現する使い方です。多く死後の国は空のさらに向こうにあると表されます。そして「星になる」、「天使が迎えに来る」などのように、空に向かうことを「死」の隠語として使う例は少なくありません。
つまり曲中でアリアは階段を上った先から飛び降りて死ぬことで、二つの意味で空を飛んだのだと感じました。空を飛び向かう先は、死後の世界で来世なのでしょうか。五線譜に囲まれ空を飛ぶアリアは、来世は好きなだけ音楽を楽しむことの出来る場所と表しているようです。

そして曲の最後、アリアは身元不明の遺体として、その発見を報じられています。また、私たちはこの曲が「事件記録 File.01」と名付けられた何かであることを知ることになります。この記録をまとめている人物は何者なのか。それはこれ以降の曲を聴くことで明らかになっていくであろう謎であり、他の曲とのつなぎの部分となります。

最後まで曲を聴き、アリアの「死」を知ったとき、この曲の中にある時間の流れはアリアの過ごした一日の流れと見ることも、アリアの人生の流れと見ることも出来ます。

最後に。
果たしてアリアの目指した居場所は死後の世界と同意義だったのでしょうか。朝整えた準備は死への準備だったのでしょうか。それとも本当にアリアは自分の居場所を探すための冒険に出ようとしていたのでしょうか。
私は最終的にどちらとも言えないと考えました。
ある時は旅立ちの日に既に死に向かう準備を整えた女の子の歌に聴こえます。一方で、ある時にはアリアは本当に音楽を愛せる世界を探す冒険に出かけ、探した末に死によってのみそれを得られると知ってしまったようにも聴こえます。
そのどちらもたどり着く結果は同じです。しかし、その結果に至るまでの道のりは異なります。この点についてはもう少し自分の中で考えたいと思う点です。いずれ自分なりの答えが見つかるでしょうか。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
こんなにも考えさせられる曲を聴けたことを幸せに思います。
夢追さん素敵な曲をありがとうございました。

最後に繰り返しになりますが、この感想は私が個人的に抱いた感想です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?