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昼過ぎまで畑にすわりレンゲを編んだ 〈前〉

風に 5月の薫りを感じる季節になりました。
まばゆい陽の光を受けて、レンゲ畑は花の紅紫を一層濃くし 揺らめいています。
爽やかな風を頬に受けると小学2年生の頃のある春の日を思い出します。

   ………………⚘⚘⚘………………

小学生の頃、GW前の時期は午後から家庭訪問でした。
土曜日のある日、まだ土曜も午前中に3時間授業があり 給食無しで下校の時代でした。
教室で さようならの挨拶をした私は一目散に学校を飛び出しレンゲ畑へ向かいました。

友達の間ではレンゲ編みがブームで 畑へ行けば誰かしらレンゲを摘んでいました。
少しばかり前に 上級生から編み方を教えてもらった私は 頭の中がレンゲで一杯。
ルンルン♫で畑へ向かったのですが、
なぜか誰もいない。
あれ?と拍子抜けしたものの

「今日は アタシが いっちばーん♪」

早速ランドセルを下ろし畑に入りました。

お日様は丁度私の頭のてっぺんでサンサンと眩しい光を放ち、
鮮やかな緑の中に私はすっぽり覆われ 座り込みました。

少し湿った土の匂い
畑の中をサワサワと渡る風と青草の匂い 
スズメ達の賑やかなお喋りがこだまし、
時折 痒いなぁ,,と見れば 子バッタが私の腕の上をピョンピョン跳ねている

それ以外は 静寂

とても豊かで心地良く 何か大きな安心に包まれて私は夢中でレンゲを繋いでいました。

暫くして ふと我に返りました。
立ち上がって畑の向こうの街道沿いを見ると

あれ?こんなだったっけ?

景色がぼんやり揺らめいて黄金色です。
何かがいつもと違うような気がします。

なんで ユミちゃんもマリコちゃんも来ないんだろ?
おかしいなぁ??

少しの焦りと不安が心を過りました。
でも、のんきな私は

まっ、いいか!!

再びレンゲ編みに没頭します。

どれくらい時間が経ったのだろう

「あら! ららさん」

ふいに声を掛けられ顔を上げると
担任のミワ先生でした。

ミワ先生、どうしたんだろう?

いつものミワ先生と違って 白っぽいスーツに 少し踵の高い靴を履いています。
明らかに畑の畦道には場違いな雰囲気です。

先生は 道に置かれたランドセルを見ながら「ららさん、まだ家に帰ってなかったの?
先生、今からららさんの家へ行くんだけど案内してくれる?」

あっ!!  

ここでやっと
のんびり者の私は気づいたんです。

そうだった! 今日は家庭訪問。
先生が家へ来る日だった。

畑から出てランドセルを背負いながら

だから みーんな今日は畑に来なかったんだ!
みーんな 家でお昼を食べ終わって 先生が来るのを待ってるんだ。

急に 私はお腹が空いてきました。
既に先生は何軒かのクラスメートの家を訪問してきた後でしょう。

お日様は西へ傾き始め 青かった空は黄味を帯びています。街道を行き交う車も多くなり風も出てきました。

今、何時だろう?
お昼にアタシが帰って来なくて お母さん、心配してるかなぁ...

急に現実的な思いを巡らしながら、少し先にある中山君の家の屋根を見やりました。
大きな鯉のぼりが西陽に照らされてキラキラ光りながら大空を泳いでいます。
私は先生と並んで家路を急ぎました。

そこから先の記憶は全くありません。

この日のレンゲ畑での別時間? は◯十年経った今でも鮮明に蘇ります。
全てに護られていることが解っている安心感
あるがまま、無垢なままに、
やりたいようにやれる万能感
そして、圧倒的な至福

今思えばこれが 愛 であり
宇宙の根源に繋がっているってことなんだろうな と感じています。

その先も何度となく この”大いなるもの“に包まれるのですが、自分の成長とともに葛藤することが多々ありました。
その辺りの事も 自分の内面を整理するために書き記し、次のドアを開けます。

かなり、私事な内容になりました。
ここまで読んでくださった方
誠にありがとうございます🙏✨




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