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連携プレイ〜素晴らしきマニュアルの巻〜

今日初めて会うスポーツが好きそうな看護師さんが言う。

『立ち入り禁止エリアに入りますね!普段は入れない場所です!』

確かに。
と、思いながらカードキーをピッとした扉を抜けてエレベーターに乗り込む。

『緊張しますよね?』
そう確認して下さる。

『それがね、なぜか心地いいんです。』
と、伝える。

『すごい、余裕ですね!』

12時5分に手術室が沢山あるフロアに到着。
病室とは打って変わってなんと表現したらいいのか、コンクーリーと剥き出しのような、実際は剥き出してないけども、地下室のような、ひんやりした広いフロア。

奥に通されたけれども、実際は入ってすぐ右のオペ室。
元来た廊下を戻る。

女性3人が挨拶をして下さった。
麻酔科の先生はベテランの先生だと思う。
ちょっとかけててね〜と、パイプ椅子を持ってきて下さった。
深呼吸。
男性の学生さんらしき2人が気を遣って目を合わさないで何かしてるふりをしている。

12時10分。
『は〜いお待たせしてごめんねえ。』オペ室に通されて、そこには簡易ベットみたいな緑の板にドーナツみたいな黄色いスポンジの枕があった。
『簡易ベッド....』
正直な感想。

手術着の上から毛布がかけられて、着々と準備が進む。
『は〜い、脱ぎますね〜』
『ちょっとひんやりするの貼っていきますね〜』
『マスクしま〜す。ここから出てるのまだ酸素だから大丈夫ね。ゆっくり呼吸してね。』

アラフィフな麻酔科のお姉様先生が言う。
『ここでさ普通は緊張しなくていいですよって言うと思うでしょ?言わないから。私は。緊張するわよ、手術するんだもん。少しずつ麻酔入れてくからね。緊張しながらでもいいから大きく3回、深〜い深呼吸してみて。はい、い〜ち...に〜い...さ〜ん...』
ひとしきり爆笑した後、合図に合わせて3回深呼吸。

『なんだか体が少しあたたかくなってきました。』

執刀医のエリナ先生が到着したのは、少し早めにオペ室に着いた私を気遣って明るく会話をして下さってから。

『もう心配しなくて大丈夫ですからね。』
笑顔が爽やかだった。

私にどんと任せて、何も心配しないで寝てて大丈夫さBaby。
そう言われているようだった。

なんだか目頭が熱くなりながら、私も笑顔で答える。
『はい。どうぞよろしくお願いいたします。』

専門用語が飛び交う。
かっこいい。

マニュアル通りの確認作業なのだろうけれど、淡々と会話をされている中で暖かさを感じた。

声が遠のいていく訳でもなく、いつの間にかもう目が覚めるまで何にも聞こえず、何も感じず、時がすぎる感覚すらなかった。

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