MI YOSHI
更新中の小説、「独身記念日」のまとめページです。
※この小説は、創作大賞2024 応募作品です。 独身記念日⑴ 月曜日 昼休憩 ツルタはヤマシーさん、シマサバさんに連れられて昼の休憩に焼肉屋に来ていた。会社の入る六本木一丁目の駅直結のビルから程遠くないこの店は、店内が茶色、と言うよりもブラウンと言った方がよさそうな色で統一された、高級感のある雰囲気に四人掛けの掘りごたつ式テーブルが広い店内にずらりと並んでいて、平日の昼間でも頻繁に客が出入りしていた。二人とこうしてランチを一緒に過ごすのは、ツルタが派遣された月から五ヶ
図書館で二度の貸し出しを経て読んだので記録はちゃんと取ろうと思った。この本は貸出してもすぐに次の予約が入る。一度目に、延長しておくのを忘れて余裕をぶっこいていたらすぐ返却日を迎えてしまったので、今度こそはと特に好きだった部分の感想を書く。 地下鉄構内で死神とすれ違う「生きるということ」 すごい面白かった。というのは恐らくみなさんもつ感想なのでしょうが、一読しただけでも話を思い出すことができる話というのはなかなかない。 大事な部分には触れずに語り切るのでとても余韻がある
「独身記念日」(13) 質の良さそうなスーツに身を包んだ松木が最寄駅の出口に現れてから、二人は久しぶりの再会の挨拶をそれなりに交わし、しんとした空気で駅前の公園に向かった。残念なことに公園には先客の学生の集団が騒がしくしており、どうも落ち着いて話せなそうだったのでツルタは商店街へと松木を先導した。他にももう一つ公園はあったが、そこへいく道はこの時間だと暗すぎるので使おうとは思わなかった。商店街を歩くと対向から歩いて来る飲み帰りのサラリーマンらから、そこそこの所得者層の匂い
「そういうのは、いわゆるあなたの、思い込みの中の話なんじゃないですか?」 わざと肩をぶつけて言いがかりをつけてくるちんぴらに遭ったような気持ちになりました。 たまに落とし穴に掛かるようなことがあって、結構ダメージを受けます。 いちばんショックなのは、冷静に対応できない自分を目の当たりにすること。 どんなときも俯瞰して物事を見ていたいと常々思っているのに… ほど遠く、まだまだ脇が甘いようです。 Nintendo Switchで、大好きだった「スーパードンキーコング」
また一人旅に出たいなぁ。 時々そうやって、旅先に良さそうなところをネットで探す。 大抵やりたいことのイメージは決まっていて、宿に泊まって、朝がきたらランニングに出たい。今は特に海を見ながらイヤホンで音楽を聴いてランニングしたいなぁ、と思う。泊まるのは海か山の近くで、街は温泉街の他は自然ばかりなような場所で。 そういう場所は国内にも海外にも山ほどあるけれど、正直泊まりで遠出するような一人旅は人生で一度しかしたことがないし結局まだまだフットワークは軽くない。 前回は、甲府に行っ
日記 「るつぼ」からの「横浜優勝!」 ちょっと読み切るのに時間がかかった。登場人物が多い割に、話がぎゅっと纏っているので、納得感がでる程度に理解したのはあとがきの解説を読みきってからもう一度重要なシーンを振り返ってからだった。小説を全然進めてないのにこんな時間使っちゃダメじゃん、というはずなのに気になってしまって、結局ピューリタンとか魔女裁判とか赤狩りの記事も調べて読み込んでしまった・・・。 ちょうど昨日、日本シリーズの試合がテレビで始まる時間に合わせて読み終えたんだ
やっぱり取っておきたくなってしまったんだ 途中から 途中というのも 結構序盤 コンビニで買ったそのHOTのペットボトルを握る手が まだ人肌以上にじんじん温められるくらいか もしくは車に戻ってそれを ドリンクポケットに置いたくらいの段階で そのつやつやなペットボトルを見ていたら 家から持ってきてたほぼ毎日飲んでいる味のお茶だけじゃ きっと物足りないと思ってたのに だから買ったのに お風呂上がり 大して疲れているわけでもない一日の終わり 一杯コップにお茶を注いだあと とりあえず
市立図書館の電子書籍サービスで、フレドリック・ブラウンの本が二タイトルだけ貸出できるようだったので、そのうちの片方を借りて読んだ。 スマホで本を借りて読むのが実は初めてで、なんか目が痛くなりそうとか思って自分は紙の本派だと思っていたのに、使ってみたらスマホはスマホでめちゃくちゃ便利だった。お風呂でも、電車やバスでもすぐ開けるし、分からない熟語があればその場でネットで調べられるし、本文の検索もできるのね。この記事を書くのにも、検索を使って記憶に残ったワードを遡れたし便利で
「独身記念日」(12) スマートフォンに耳を付けるとすぐに、電話口の松木は妙に耳障りの良い声でツルタの名前を何度か呼び掛けた。電話はメッセージアプリの通話機能を通さずに直でかかってきていた。ちょっと前にスマートフォン内の連絡先リストを整理した際「もう連絡する気はない人」をちょこちょこ消したはずだったのに消してなかったのか、あのとき何を思って残したんだろう自分は。個人的に友人知人から電話をもらうことなんて、しかも男性からはここ最近久しく無かったのでツルタは急に緊張してしまい
買うだけ買ってまだ読めていなかったこの作品を、今こそはと思い読み切ったので、その感想。 なんかこういう体験は現実では難しいので読書体験として面白いと思う。 とある常連の集まるような食堂兼喫茶店があって、そこがどんなに興味深く思えたとしても、その店主や従業員や客がどのような人となりでどんな生活背景を持っているのかを詳細まで把握することはできない。できないというか、そもそも話なんて簡単に聞かせてくれないと思うし、それをもしやれるという前提で考えても、果たしてその一人一人を
九月の三週目から続いていた個人的なイベント(義父バースデー、実母親孝行、京都旅行)のすべてがやっと昨日終わった。 どれも思い出になったのだが、最後の目玉である(といったら前の二つに失礼だけれど、内容的にどうしてもそうなってしまう)京都の旅や、その一番の目的である作家の津村記久子さんのトーク&サイン会を振り返る。 帰路でドキュメントに控えたイベントの感想は、その滞在時間とは裏腹にとても膨大になった。 トークイベント 津村記久子さんのイベント後は『すんごい幸せでう
「独身記念日」(11) 火曜日 二十二時 ツルタは床に平たいクッションを敷いただけのローテーブルとソファの間のスペースで座るのに、いつも通りお尻の一部がぴりぴりと感じ始め、文章を書き進める為の自問の応えにも、もったりとした時間を要するようになってきていた。卓上鏡やメイク道具、文庫本などが無造作に散らばるローテーブルで、遠慮がちに微かに稼働音を出している熱くなったノートパソコンの画面を目を細めて眺めては、次に行う動作は何にしようかと考えている。というより決まるのを待ってい
八月の猛暑日の昼間に歩いて五分ちょっとの本屋まで行って、汗だくだくのまま見つけて買った本。本当は、詩をたくさん読んでみたくて宮沢賢治の詩集を買いに行ったのに、本のカバーデザインが激似の銀河鉄道の夜を手に取ってセルフレジしてしまった。それで店を出た時にすぐ気付いたけれども、店までの道中に聴いていた銀杏BOYZの「銀河鉄道の夜」の影響もあって、これも改めて読みたくなってしまい、結局そのまま持ち帰ることに。こちらも詩的な文章がたくさん出てきたので、結果的によかったということとした
最近、オアシスのアルバムを、和訳を見たりインタビュー記事を見たりしながら一曲一曲聞き返している。そういう鑑賞の仕方は、いつからかしなくなっていたなぁと思いながら。今、まるで若いときに聴いていた以上に、心行くまま感心したり感動したりしている。 オアシス解散と同時にスタートしていた社会人生活で削られるように失われてしまっていたところから、その衝動を今、取り戻しているかのようにも思えてくる。 集めてた洋楽のほとんどのCDは、二度の引越しを機に手放してしまっていたから、近頃買
自主的な事柄だけれども、やることが一時的に多い。来週から続けて三週連続でイベントの予定が入っている上に、音楽鑑賞量も読書量も普段より上がっているからだ。一週目は義理父の誕生日でホームパーティ、二週目は母宅に二泊で泊まり、三週目は、ファンである津村記久子さんトーク&サイン会で京都に行くことになっている。 毎日思っていることだが出来るだけ執筆を進めるのに時間を割きたい一方で、敬老もしたいし、大好きな作家さんにも一目会いたい。しかも、京都の観光地ど真ん中での開催ときたので、もう
「独身記念日」⑽ 「俺今度のスタジオに、ウクレレ持って行こうかなぁ」 四杯目のレモンサワーを一口で一気にジョッキの四分の一程飲み込んだ酒井さんは、いつものようにもの柔らかに言った。お酒を飲むと特に陽気になるが、飲んでいなくとも普段から明朗な人で、気分を害するものなどこの人の生活の中で一つも無いんじゃないかと話していると想像してしまう。 「酒井ちゃん、買ったって言ってたやつ?いいじゃん!」 「うん。音出すだけでほんと癒されるの」 「なんかウクレレで曲やりたいの?」 「やれた