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BGMはそのままで


GWも終盤、カレンダー通りのスケジュールと一足早い夏風邪でベットに包まれていた。

「ゴールデンウィークって言ってもね…」

紫乃は不貞腐れている。

「体調はイマイチだし、Twitterも変わらずnoteを書くのも読むのも…」

肝心の連れは、男の更年期かは知らないが、お酒が入ると昔話をひっぱり出しては腹を立てるから、こんな夜は一緒にいない方がいい。

「隠れ家的なワインbarがあるんだ、2人からしか入れない。GWの〆に一緒に行こう。」

何かを察したのか、こんな時だけ勘がいいのか

それに付いていく私も私だ。

-癪に触らぬよう、今日を終わらせよう。抱かれようなんて考えるから失敗する-

「関係者以外の立ち入り禁止」を抜けると、そこには不思議なJUKEBOXが見えた。


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店内に入るとbossa novaが包んでくれた。ワインが美味しいらしい。

有名な銘柄やそのヒストリーを語られても私にはわからない。

ただ…グラスに注がれたRossoとこのBGMがあればそれだけで十分だった。

テーブル席からカウンターを見ると、知っている顔がいる。そしてその連れている女性も私は良く知っている。


「沙璃さんと砂…」

向こうのカップルはこちらには気がついていない。

それもそうだ、2人と顔を合わせる時には戦闘モードの帰り、そしてこのお店のように隠れ家でしか会わないから。

今日のように他所行きの借りてきた猫の私には気がつく事はないだろう。


「ふーん…そっかそっか、色々あるよね。みんな色々…」

独り言のように息が漏れる。

私の連れはお酒に酔っているのか、馴染みの薄い店にきた自分に酔っているのか、なにかをずっと喋っている。

適当な相槌でいい。こんな所まできてBGMを濁したくはない。

人の会話を聞くなんて野暮だと思う。

しかし、チューニングが合ってしまったのだ、


「2年半ぶりにこれで良かったです。マスターも私の事、覚えててくれてワインも美味しいですね」

「かかっている曲もいいですよね、ジャケットをみただけでわかりました。スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのコラボ、アントニオ・カルロス・ジョビンのWAVE、」

「…さんは、GWはお仕事だったみたいですね。」

「僕、若い時から人が休みの時に働く仕事に就いてましたから、むしろ人が休んでる時に働いて、周りが働いている時に休むのが好きなんです。道も町も空いてるし…なにより沙璃さんとこうして、カウンターに並んでお酒を飲めるなんて、最高のご褒美です。」

「私もよ、お店閉めた所で退屈だし、みんながみんな連休とも限らないし、それに、…さんとこうして一緒にお酒を飲めたんですもの」

「…さんは、いえ、やめときますね。

「なんですか…??」

「ううん、お互いに色々ありますね。って思って」

「そうですね、色々ですね、ま、大した事じゃないんですけどね」


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「2人とも大人だね…」

「紫乃なにか言った?」

「いいえ、ちょっとまだ体調が万全じゃないみたい、あまり飲めなくて」

「ぼちぼち帰るか、また落ち着いた時にこよう。今日はウチに来るかい?」

「風邪をうつしても大変だから今日は帰るね」

「俺は大丈夫だよ、まだ体調悪いのか。」

「大変よ、治ってはいるけど。ぶり返しては行けないから」

「そうか…」

(残念ね、泊まっても良かったけど。なんだか今日はそんな気分じゃないの)


目立たぬように席を立った。


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沙璃さんと目が合った、きっとあの人は最初から分かっていたんだろう。

「(お疲れ様…)」

お互いに言葉にはせずとも会話した。


最後まで、思春期のような顔をした連れと分かれて家につく。


「今年のGWはなんだか、つまんなかったな。でも…最後の最後に、あの人の、あんな表情みれたし。」


みんな色々あるよね…


目玉焼きは半熟がいい、私の意中の人は今日もどこかでビールを飲んでる事だろう。


母の日か…


カーネーション、また売ってるかな。


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沖縄は梅雨入り


こんな生温い空気の夜は

冷えたグラスにbossa novaを注いで

1人、雨のBGMを聴くのも悪くない…


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夢なら醒めなきゃいいのに…


etc.







フィクションです!

私も隠れ家的なお店ほしぃ〜なぁ〜

砂男さん私もまた秘密のデートに誘ってほしぃなぁ〜

verdeさん2人でデートしましょうね〜♡