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歴史小説苦手でもハマった!最高の歴史物語、ビジネス書、恋愛小説だった。

歴史小説は、なんとなく苦手意識があってほとんど読んだことがない。登場人物が誰が誰だかわからなくなってしまう。

でも私の今年の読書目標は「ジャンル問わず手あたり次第読む」。なんとなく後回しにしていたベストセラーや歴史小説、ノンフィクションも読むと決めた。

未知のジャンルの本からは新しい発見が期待できるし、ベストセラーには人を惹きつける文章の書き方のヒントが詰まっているはず。

ということで今日の本題、【村上海賊の娘】を読んでの感想文。これぞ、ベストセラーだし歴史小説だし目標達成にピッタリ。

文庫本にして全4巻。最初は試しに1巻だけ買ってみて、すぐにハマって全巻揃えた。(写真に1巻がないのは貸出中)

①歴史小説として
まず何にハマったかというと、主人公の村上海賊の娘、景(きょう)がとにかく強い!人として強いというより、純粋に腕力が強い!

私、とにかく私強い女が大好きでして。
小さな頃は戦隊もののピンクレンジャーになりたくて、その後もターミネーターのサラ・コナーとかチャーリーズエンジェルの方々とか、そういうザ・強い女に憧れております。

そういう意味で主人公の景は間違いなく強い。
一人で敵船に乗っ取りをかけるシーンや、バタバタと敵を切り倒すシーンはシビれるほどカッコよくて、ゾクゾク身震い。

本書のストーリーとしては、織田信長の大阪本願寺攻めで籠城を余儀なくされている本願寺側が、海路からの兵糧入れを実現させるために、毛利家を通じて瀬戸内の村上海賊に支援を頼むところから始まり、毛利側の村上海賊と織田側の泉州真鍋海賊の木津川合戦での死闘までを描いている。

歴史には詳しくないけど、この木津川合戦の描写自体がアクションとしてめちゃくちゃ面白いので、それだけで先が気になって読み進められた。

乱世に生きる登場人物それぞれの気持ちの繊細な描写も素晴らしく、好きな人物に自身を投影しながら、あるいは登場人物一人一人の姿を想像しながら、小説の世界に入り込んで楽しく読み進められた。

登場人物の特徴もわかりやすいので、歴史小説初心者にもおススメ。

②ビジネス書として
景の強さもさながら、この海賊同士の激闘がすごい。そして何より私は船戦の戦略というものを考えたことが全く無かったのだけど、この戦略のかけひきが実に見事!!

各武将の頭の回転の速さがこれまたカッコイイ。
歴史小説は最高のビジネス書とよく聞くけど、その意味が一気に理解できた気がする。

船の陣形による攻撃の型の違い、その陣形を直前まで隠しながら敵を欺く策略、自分の兵力を大きく見せるための策略、いかにうまく船を操るかの技術合戦、状況を見極めて柔軟に方針を変えるしなやかさ、強い海賊には強い理由がある。
カッコイイーーーー。

戦だけでなく、他にも見事な駆け引きがあちこちにある。

1巻の最初で本願寺側が毛利家を通じて村上海賊に支援を頼みに行く場面では、村上海賊が毛利に付くべきか織田に付くべきかと思案するシーンがある。判断を間違えると自家の存続に関わりかねない。

毛利家は武田信玄が味方に付くと言っている、武田軍が付くなら勝率が格段に上がる、でも武田軍の動きは今のところない、判断期日は迫っている、どうする村上海賊。というシチュエーションだけでドキドキする。

こういう場面が本書全体にあって、そのたびに各人が自分の立ち位置を理解し、それぞれの判断を下していくわけなのだけど、その考え方は現代のビジネスにおいても本当に役立つことが多いと感じた。

また、このような軍略の展開の中にも感情が垣間見えるところが、個人的には好きポイント。戦略には個人の感情を持ち込むべきではないとは理解しているけど、なんだかんだ人って感情じゃん?と思う自分もおりまして。

戦もビジネスも感情ではなく様々な仮説立てをして戦略を考え実行するわけだけれど、「面白いからやる」「楽しいからやる」という感情面を一概に排除する必要はないと思っているので、素晴らしい戦いの中で見える個々の人間らしさはすごく良かった。

③恋愛小説として
本書で恋愛は注目ポイントではないかもしれないけど、私の中ではグッとくる恋愛小説でもあった。

本書の一番最初のストーリーでは、主人公の景と毛利元就の輿入れを条件に、村上海賊が本願寺の兵糧入れに協力してもいいよという流れだった。

景は使者としてやってきた毛利元就を素敵だと思っていたが、景は当時は醜女とされる面立ち(現代なら相当美人だと思う)だったので、元就はめちゃくちゃ嫌だったけど本願寺を助けるためにしぶしぶ承諾するという、なんかまぁ女性の私としては何とも言えない苦笑いの展開・・・

が、色々あって縁談は反故となり、景はもっといい男がいるとの希望を胸に大阪泉州に男探しに行き、そこでのちの死闘の相手、泉州海賊真鍋家の若き当主である七五三兵衛(しめのひょうえ)と出会う。

豪快な景を面白い女と見定め一度は想いを寄せる七五三兵衛。初めて自分をいい女として讃えてくれた七五三兵衛とやっぱりイケメン!の毛利元就の間で複雑な女心の景。共に過ごす中で女として戦人として徐々に景に惹かれていく毛利元就。

3人の恋愛模様が特段小説の中で描かれているわけはないのだけど、この景・七五三兵衛・毛利元就の3者を取り巻く感情が、もうたまらなく切ない!!!

しかも一度は惚れた女を殺す、一度は惚れられた男を殺す、景と七五三兵衛の死闘がもう心震えてしまった。

最後まで切ない、切なすぎる。

ということで、歴史小説に苦手意識がある方にもとても読みやすい本だと思ったので、オススメです。


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