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カンザス州立大訪問記(3/10)Staley School of Leadership Studiesの生成

今回の出張の主な目的はカンザス州立大のStaley School of Leadership Studies(短く言うときは単にLeadership Studies)を訪問して,教育・研究体制を見てくることです.過去にたくさんの大学のリーダーシップ・プログラムを見てきましたが,おそらく組織としても建物としても最も充実したところの一つでしょう. 建物は写真のような瀟洒な二階建てで,内部もかなりオシャレです.この建物のなかにリーダーシップ関係の教室・研究室・事務室が全て収まっていて,関係者は全てここに居ます.私も,一週間とは言え,きれいなオフィスをもらえました 97年の創立当時から居る教員や,博士課程新設ともにやってきた教員に話を聞けました.建物が立ったのは数年前で,プログラムの前身は1990年代に始まったそうです.90年代は全米でリーダーシップ・プログラム設立ラッシュだった時期.そのときに卒業生のStaley夫妻が大型の寄付をしたのも発端で,ユニークなのは,既存の(例えば自分が卒業した)学部や組織に寄付するのではなく,新しい組織(Leadership Studies)を立ち上げるならという条件で寄付したところです.教員の出身としては教育学部とのつながりが当初深く,いまでも教育学博士号の教員が何人かいますが,段々独立性を高めたそうです.他に農学部ともコラボして農家のためのリーダーシップ・プログラム(Ag leadership)も提供しています(農学部が重要なのは地方の州立大学の常です). 現在テニュア教員は3名,テニュア・トラック2名,ほかにinstructorと呼ばれる教員が教えており,一番大きなクラスで200名超.学生は全学から来ていて経営学部生が最大勢力ですが,その割に経営学部教授会とはつながりがあまりないそうです.あとから分かったのですが,ここの経営学部は巨大なのですが,学部学生にリーダーシップを教えなければならないという意識のある人は少なくて,経営学部の学生(つまり経営学のなにかを主専攻にする学生)が,副専攻でLeadership Studiesをとることを(奨励まではしないけれども)問題視はしていないそうです. Leadership Studiesのほうとしても,学生がリーダーシップを主専攻にする課程は提供していません.つまり日本風にいうと学部ではないのです(そのわりにはいつもおおぜいの学生が勉強したり話したりでhang aroundしていますが) leadership second major(第二専攻)とleadership minor(副専攻と普通訳しますが,第二専攻があるここの場合は第三専攻という意味合い)を全学部学生に提供していて(院生対象もあり),他に博士課程が新しくできました.リーダーシップ科目を積み上げてleadership minorを作ることを目指している大学は数多くありますが,minorを持ち,そこからmajor設置をせずに博士課程を乗せているのは他の分野には無いことでしょう. 対象的に,同じカンザス州立でも西隣にあるFort Hays校では,minor, major, MA, PhDと全部揃っています. 創立当時から居たお二人とPhDコース創設に尽力した一人に話を聞くと,他のセクションに既にあるものと競合したり,結果としてそこから何か(例えば学生)を奪うようなことを慎重に避けた結果としてminorとPhDの組み合わせ,それもPhDはコミュニケーション等との学際的な成り立ちにすることが一番学内的に通りやすい体制であろうという判断の結果だったようです.これは大変勉強になりました. 私は立教では戦って勝ち取ることを主にやってきたため,今でも突破するには戦いだ,競争だ,という発想になりがちで,敵も多く作ってきたような気がします. (次回に続く)

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