競走馬の血統の見方

日本で競走馬に使われるのは、ばんえい競馬を除いて軽種馬、特にサラブレッドが使われる(サラ系は規則上使用可能だがまず見ないし、アングロアラブ、アラブ、アラ系は地方競馬では規則上使用可能な場所もあるが現役競走馬はいない)。

すでによくわからん用語があると思うので簡単に解説しよう。

馬の品種分類

馬の種類は昭和12年農林省告示第269号「馬ノ種類称呼」にて規定されている。

  1. 軽種

    1. アラブ

    2. サラブレッド

    3. アングロアラブ

    4. アラブ系種

    5. サラブレッド系種

  2. 中間種

    1. アングロノルマン

    2. アングロノルマン系種

    3. 軽半血種

    4. 中半血種

    5. 重半血種

  3. 重種

    1. ペルシュロン

    2. ペルシュロン系種

    3. 重系種

  4. 在来種

    1. 和種

当時の馬の生産は、軍馬の選定も兼ねていたので、アラブのほうが上に来ている。この告示は今も有効である。

なお、ここでは呼称以外定義しておらず、それぞれの品種に関しては何も定義していなかった。

なお、軽種のことを熱血種、中間種のことを温血種、重種のことを冷血種とも呼ぶ。これは英語を直訳したものである。

なんかごちゃごちゃしていてわかりづらいが、基本は軽種に軽種を交配したものは軽種であると覚えればよい。

サラブレッドの定義

この中で、サラブレッドの定義は以下の通り。

  1. 両親が国際的な血統書管理によって登録されたサラブレッドである

  2. サラブレッド系種に8代続けてサラブレッドを交配した馬で、サラブレッドと同等の能力を持つことが認証された馬である

この国際的な血統書管理は各国の団体で行っているが、日本ではジャパン・スタッドブック・インターナショナルが担っている。

まあ端的に言えば、「両親がサラブレッドならサラブレッド」と思ってもらえばOKである。サラブレッドという用語が出てきたのは1821年なので、それより前の馬に関してはとりあえず登録されていて血統書たどれればOKと思ってもらっていい。

血統表の読み方

例えば、某ゲームでなじみがある、スペシャルウィークの血統表を見てみよう。netkeiba.comで馬を検索し「血統」タブを開くと、以下のような表が出てくる。これが血統表である。

まず、一番左の列がこの馬自身の父・母である。父は上のほうに、母は下のほうに書く。

次に、代をさかのぼるときは右へ書く。その際、左の馬についてそれぞれ2分割し、上に父、下に母を書く。

スペシャルウィークであれば父はサンデーサイレンス、母はキャンペンガールである。そして父の父はHalo、父の母はWishing Well、母の父はマルゼンスキー、母の母はレディーシラオキである。あとは同様に読んでいく。

父のところにHalo系、母のところにFNo.[3-l]とあるがこれに関しては後述する。

今回、5代前までこの表にはあるので、この表のことを5代血統表と呼ぶ。これが7代前までなら7代血統表と呼ぶ。

サイアーライン

このスペシャルウィークから父を順にたどっていくと、このようになる。

スペシャルウィーク→サンデーサイレンス→Halo→Hail to Reason→Turn-to→Royal Charger→Nearco→Pharos→Phalaris→Polymelus→Cyllene→Bona Vista→Bend Or→Doncaster→Stockwell→The Baron→Birdcatcher→Sir Hercules→Whalebone→Waxy→Potoooooooo(Pot-8-Os)→Eclipse→Marske→Squirt→Bartlet's Childers→Darley Arabian

最後のDarley Arabianはジェネラルスタッドブック第1巻に定義された、102頭いる始祖種牡馬の1頭であり、これ以上父をさかのぼることはできない(さかのぼれないから始祖である)。

この一連のラインのことをサイアーラインと呼ぶ。このサイアーラインを特定の範囲でグループしたものが、先ほどの○○系の正体である。上記のHalo系というのは、このHaloにサイアーラインをたどることで到達することができる馬の集合である。

大雑把に言うと、このHalo系はさらにいくつかに細分化可能である。

  • Devil's Bag

    • Devil His Due

      • ロージズインメイ

        • ドリームバレンチノ

    • タイキシャトル

      • メイショウボーラー

        • ニシケンモノフ

  • サザンヘイロー

    • More Than Ready

  • サンデーサイレンス

    • フジキセキ

      • カネヒキリ

      • キンシャサノキセキ

      • イスラボニータ

    • ステイゴールド

      • ドリームジャーニー

      • オルフェーヴル

      • ゴールドシップ

    • スペシャルウィーク

      • リーチウザクラウン

      • トーホウジャッカル

    • アグネスゴールド

    • アグネスタキオン

      • ディープスカイ

        • サウンドスカイ

    • マンハッタンカフェ

      • ジョーカプチーノ

      • ヒルノダムール

    • ゴールドアリュール

      • エスポワールシチー

      • スマートファルコン

      • コパノリッキー

    • ゼンノロブロイ

      • ペルーサ

    • ネオユニヴァース

      • ロジユニヴァース

      • ヴィクトワールピサ

    • ダイワメジャー

      • カレンブラックヒル

    • ハーツクライ

      • ジャスタウェイ

      • シュヴァルグラン

      • スワーヴリチャード

    • ブラックタイド

      • キタサンブラック

    • ディープインパクト

      • リアルインパクト

      • キズナ

      • ミッキーアイル

      • サトノダイヤモンド

      • コントレイル

サンデーサイレンス以下が非常にでかいため、サンデーサイレンスより下をサンデーサイレンス系とまとめることも多い。さらにその中でステイゴールド系、ゴールドアリュール系、ディープインパクト系をまとめることもある。

ついでに言うと、このHalo系はHail to Reason系の一部である。ここではRoberto系が合流してくる(Roberto系にはSilver Hawk→グラスワンダー→スクリーンヒーロー→モーリスのラインや、Kris S.→シンボリクリスエス→エピファネイアのラインなどが含まれる)。

基本的に、非常に巨大な系統だと競走馬を解析するのに不便だし、特定種牡馬単位だと応用が利かないという都合があるため、この手のグルーピングは非常に有用である。

例えばビッグアーサーという種牡馬は父サクラバクシンオーであり、サクラバクシンオー自身も、その産駒も、その産駒の中で種牡馬になった馬の産駒も短距離馬が多いことから、おそらく短距離用種牡馬だろいうという感覚が強いだろうし、実際、産駒のトウシンマカオは京阪杯(芝1200mのGIII)を制している。

ただし、もちろん例外があることを忘れてはならない。例えばナランフレグ。父ゴールドアリュールはダートを走っていた馬であり、産駒も主にダートで好成績を出してきた(エスポワールシチーやスマートファルコンを考えれば明らかだろう)。だが、高松宮記念は芝・短距離でありこれらの産駒とは全く傾向が合わない。母方の影響が強く出ているのだろう。

ファミリーライン

今度は逆に、母を順にたどっていくと、このようになる。

スペシャルウィーク→キャンペンガール→レディーシラオキ→ミスアヤシガワ→シラオキ→第弐スターカツプ→スターカツプ→フロリスト→第四フロリースカツプ→フロリースカツプ→(7代略)→Mayonaise→Pic-nic→(4代略)→Pot8o's Mare→Editha→(3代略)→Sister One to True Blue→Dam of the Two True Blues

途中、大量に世代を略したが、これは長くなるのを避けるためである。父系と違って必ずしも重要な馬が多いわけでもないし。

このライン全体を3号族と呼ぶ。ただ、これは非常に大きいので、Pot8o's Mare(意味はPotoooooooo産駒の牝馬という、もはや名前自体まともに定義されてない)より下をファミリーナンバー3-iとしてさらに区分する。また、その中でもMayonaiseより下をファミリーナンバー3-lと区分することになっている。

で、省略前最後のフロリースカツプというのは、小岩井農場が1907年に馬産を始めるにあたり輸入した繁殖牝馬20頭のうちの1頭である。わかりやすく言うと、「日本競馬の始祖」の1頭である。

あと、シラオキという名前は、某コンテンツをやっていれば聞いたことがあるだろうが、彼女自身も皐月賞5着、ダービー2着、オークス3着などの実績があり、競走馬として十分一流だったのだが、牝系が非常に栄えている。コダマやシンツバメは彼女の産駒だし、4代下にはシスタートウショウやスペシャルウィーク、5代下にはマチカネフクキタル、6代下にはウオッカがいるのだから。

母父の影響

競走馬の一部には、母父の影響を受けたと思われるものもいるため、そのあたりを見ることも多い。

ただ、それを見てもどうやっても想像がつかない馬が出てくるのもこの競馬の難しさである。例えばキタサンブラック。

何が問題なのだろうか。まず父ブラックタイド。基本的には芝の1600mから1800mを主戦場としている馬であった。母父であるサクラバクシンオーは言うまでもないが1400m以下のレースでは負けたのは1度だけ、1600m以上では全く勝ててない生粋のスプリンターであった。

じゃあこれを見たら普通は芝の短距離・マイル向けの馬だろうと考えるだろう。だが、キタサンブラックは菊花賞・天皇賞(春)・ジャパンカップ・大阪杯・天皇賞(秋)・有馬記念と中長距離のGIを制した馬である。全く適性が父とも母父とも似てないではないか。

母のシュガーハートは不出走なので母母のオトメゴコロを見るが、勝ってるのは芝1200、ダート1000。中長距離要素はどこにもない。

このように、全く読めない馬が出てくると、適性通りに走らせるのは一苦労である。まあ、そういう可能性を発掘するために変な距離走らせて全くうまくいかずにもがいた挙句、地方から出戻りしてようやく適性に合った距離で実績を出す馬もいるわけだが。

父ロードカナロア、母父サクラバクシンオー。これ見ただけで短距離だと普通確信するだろう。だが、デビュー戦は芝2400m…おいおい長すぎるだろ。結論から言えばどうにもならなかった。距離をマイルあたりに短縮して走らせていたが勝ち切れず、未勝利戦がなくなって門別送りにされている。その後3勝して中央へ復帰し、その後は適性に合った距離で活躍している(去年のCBC賞を勝ってるし、今年のセントウルステークスでも2着になっている)。

まとめ

父や母、母父を見ることで、なんとなく馬の適性が見えてくることもある。特に血統と調教データしかない新馬戦などでは、この血統のデータがとても重要になってくるので、覚えておいて損はないだろう。

ただ、ここに書いてあるのは本当に初歩の初歩なので、詳しいことはほかの人に聞いたほうがいい(そもそもここに書いてあることも怪しいこと多いだろうし)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?