2023年以降の競馬制度改革について
2023年以降、様々な制度の変更が行われることが中央競馬、地方競馬から発表済みである。それについてみていこうと思う。
中央競馬での負担重量見直し
要約すると以下の通りである。
全般的に負担重量を1kg増やす(ただしすでに基本負担重量58kgのものはそのまま)
3歳馬の平地の距離による減量を短距離(1400m未満)で引き下げる(現在の4歳1月から1か月の短縮)。同様に南半球産馬に関しても1か月短縮し4歳5月までとする
従来の賞金別定について、重賞では廃止する(リステッド競走以下では存続)
負担重量の見直しは、原則2023年からの適用であるが、例外として3歳限定戦は2024年からの適用となる。
中央競馬での出走の優先順位見直し
簡単に言うと、以下の通りである。
平地3(4)歳以上リステッド競走および障害競走の特別競走は、完全に出走馬決定賞金のみに依存して決めるようにする
平地3(4)歳以上オープン競走に関しては、3勝クラスに近い出走順位になる(違いとして、前走3着以内の優先出走権が4週間ではなく8週間であるという点がある)
これにより、除外による優先出走権が付与されるのは、障害競走平場オープン・2(3)歳1勝クラス・新馬戦に限られることになる(その他競馬番組で特に定められた競走が何を指すかは不明)。
この変更は、2023年から適用される。
ダート路線の整備
いろいろと変わる箇所があるので順に説明していくと、
3歳三冠路線の整備
2・3歳短距離路線の整備
3歳牝馬路線の整備
古馬路線の整備
中央芝路線との分離
ダートグレード競走の国際化
といったところである。
3歳三冠路線の整備
3歳三冠路線として羽田盃・東京ダービーを新たに交流重賞とし、JpnIに格付けする。ジャパンダートダービーはジャパンダートクラシックに名前を変更し、10月上旬に移動する。これらの競走は3歳牡・牝指定され、騙馬の出走は不可である。
それに向けて、ブルーバードカップ・雲鳥賞・京浜盃を新たに交流重賞に指定(ブルーバードカップ・雲鳥賞はJpnIII、京浜盃はJpnII)し、これらを羽田盃の前哨戦とする。また、ユニコーンステークス(GIII)は6月の東京ダービーの前哨戦とするため、現在の6月中旬から開催時期を前倒しする。最後に、ダービーグランプリと不来方賞を統合し、交流重賞不来方賞(JpnII)とし、ジャパンダートクラシックの前哨戦とする。
2・3歳短距離路線の整備
兵庫チャンピオンシップ(JpnII)を頂点とするレース体系にする。それに合わせ、出走馬の充実を図るため、エーデルワイス賞(JpnIII)の時期を10月中旬から11月上旬に後ろ倒しする。
また、古馬が圧倒しているスプリント路線への参入をしやすくするため、北海道スプリントカップ(JpnIII)を3歳戦に変更、時期も6月上旬から8月中旬に後ろ倒しする。
合わせて、兵庫チャンピオンシップ向けの前哨戦として、地方デビュー馬限定のネクストスター競走を12個整備する(2歳戦8個、3歳戦4個)。
3歳牝馬路線の整備
関東オークスをもって目標が消滅する状況を解消するため、マリーンカップ(JpnIII)を従来の3歳以上戦から3歳戦に変更、時期も4月上旬から9月下旬に変更し、負担重量もグレード別定から定量に変更する。
古馬路線の整備
まず短距離路線から。秋の大目標としてJBCスプリントが存在するが、春の大目標が存在しない。このため、さきたま杯をJpnIに格上げするとともに時期を6月中旬に後ろ倒し(これに合わせ4歳以上→3歳以上に変更)、これにともないかきつばた記念(JpnIII)を5月上旬から3月上旬に前倒し、ハンデ戦からグレード別定戦に変更する。
次に中距離路線。11月から1月までびっしり詰まっている(JBCクラシック→チャンピオンズカップ→東京大賞典→川崎記念)ため、スケジュールなどを変更する。まず川崎記念(JpnI)は1月下旬から4月上旬に変更、ダイオライト記念は3月上旬で変更はないが定量からグレード別定に変更、名古屋グランプリ(JpnII)は12月上旬から5月上旬に後ろ倒し(これに伴い3歳以上→4歳以上に変更)、逆に名古屋大賞典(JpnIII)は3月上旬→12月下旬に前倒し(これに伴い4歳以上→3歳以上に変更)しグレード別定戦からハンデ戦に変更する。
最後に牝馬路線。秋の大目標としてJBCレディスクラシックが存在するが、春の大目標が存在しない。このため、エンプレス杯(JpnII)を従来のグレード別定戦から定量戦に変更し、時期も3月上旬から5月上旬に変更する。これに伴いTCK女王盃(JpnIII)は園田競馬場に移動し兵庫女王盃に変更、時期も1月中旬から4月上旬に後ろ倒しとなる。クイーン賞(JpnIII)も12月上旬から2月上旬に後ろ倒し(これに伴い3歳以上→4歳以上に変更)となる。また、ブリーダーズゴールドカップは従来8月中旬だったものが、9月上旬に変更となる。
路線整備の適用時期
これらの路線整備は、
2歳戦は2023年から
3歳戦・古馬戦は2024年から
適用される。なお、当初は中央馬に蹂躙されることを防ぐため、中央馬の出走枠を少し少なめに設定する。
中央芝路線との分離
中央競馬では2(3)歳オープン競走(重賞含む)は収得賞金で出走順位を決定する。これを3歳春季GI競走(桜花賞・皐月賞・NHKマイルカップ・優駿牝馬・東京優駿)に限り、2025年から、新たなルールとして芝コースで行う中央のオープンクラス・1勝クラスおよびパートI国の外国競走の収得賞金のみを参照することに改めることになった。ただし、トライアル競走の優先出走権は有効である。
要するに、ダートで稼いだ収得賞金は無効であり、きちんと芝で実績を示してからこれらの競走に参加せよ、ということである。実際のところ、ダート路線から芝路線に殴り込んで好走している馬は、春季に関してはほとんどいないため、これは妥当なところである(秋季に関してはダート路線からの殴り込みはOKである。秋華賞で関東オークスからの転戦組が好走している事例があることから、規制するほうが無粋である)。
まあ、今年の桜花賞や皐月賞のように、400万円抽選ラインになってしまう場合、芝収得賞金は0なわけで(新馬・未勝利戦は計算対象外)、ダート路線組でも抽選に参加できるわけなのだが。
ダートグレード競走の国際化
現在、ダートグレード競走は、JRAで行っている競走と、大井競馬場の東京大賞典を除き、すべて独自格付けのJpnである。このうち全日本2歳優駿は国際競走だが、それ以外は国際競走ですらないため、LR(制限付きリステッド競走)であり、全日本2歳優駿もレーティングが足りておらずL(リステッド競走)である。
これをレーティングを上げていき、2028年以降、海外出走馬の受け入れ体制を整え、順次国際競走化を進め、Jpn格をG格に変更していく。
まとめ
これまで、競馬では大きな変更がたびたびおこなわれてきた。
1971年6月 活馬輸入自由化、外国産馬のクラシックや天皇賞の出走を制限
1981年 第1回ジャパンカップ、パートII国に位置づけされる
1984年 グレード制導入、持込馬は外国産馬と扱われなくなる
1992年 ジャパンカップが初めてパートI競走として扱われる(GI)
以後、2005年までにGI5つ、GII6つ、GIII3つがパートI競走となる
2007年 日本がパートI国に昇格、これに合わせ多くの競走が国際競走となり、パートIのG格となるが、この段階でGになれない競走に関してはJpn格となる(ダートグレード競走や2・3歳の世代戦など)
2010年 すべての中央競馬の重賞が(新設重賞や地方競馬由来の競走(南部杯(2011年)やJBC(2018年))を除き)G格となる
2011年 東京大賞典が国際競走になり、同時にGIに
今回の変更のうち、ダートグレード競走周りの変更は、2007年の変更から取り残された、地方競馬の部分の改革である。
まず、2007年当時の地方競馬はかなり危機的であった。
ホッカイドウ競馬 - 2007年時点で門別・札幌・旭川のみに集約、2008年をもって旭川廃止、2009年をもって札幌休止(札幌は以後中央のみに)
上山競馬 - 2003年廃止
北関東3競馬 - 2003年から2005年にかけて廃止
新潟県競馬 - 2002年廃止(新潟は以後中央のみに)
名古屋競馬 - 2002年に中京休止(中京は以後中央のみに)
益田競馬 - 2002年廃止
福山競馬 - 2013年廃止
荒尾競馬 - 2011年廃止
中津競馬 - 2001年廃止
廃止・縮小だけでもこんな感じである。各地で賞金削減なども行われ、文字通り危機的な状況であった(ハルウララは、高知にとってまさにこの危機的な状況を打開する救世主であったわけだ(まあその前後にも名馬がいたからこそ維持できて、立ち直れているわけだが))。
こんな状況で国際化など夢のまた夢だし、質を上げる以前の問題であった。それが様々な施策により改善したこともあり、このような積極的な改革に打って出ることができるようになったというわけだ。
中央競馬の今回のダート路線以外の改革は、それに比べたら小さな話である。負担重量の見直しは騎手の無茶な減量の抑制が目的であるが、ダート路線の改革から見たらだいぶ些末な話だし、出走条件の見直しも競走体系の見直しに比べたらインパクトは小さい。
芝路線とダート路線の分離というのは、今後の日本の競馬を大きく変えていくきっかけになるだろう。
芝に比べてダートが劣っているというのは、もはや過去の話なのだ。
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