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二次創作作品 アークナイツTRPGにおける生成AI利用の考えと対応方針について

日頃、アークナイツの二次創作作品であるアークナイツTRPG(以下アークナイTRPG)を遊んでいただきありがとうございます。アークナイツTRPGは、公式より公表されている二次創作ガイドラインに則り、制作運営を行なっております。
私たちの主な活動はDiscordのコミュニティーサーバーで基本的に無償で行われており、誰でも遊ぶことができ、誰もがアークナイツTRPGの発展や開発に参加することができます。
また、ルールブックやシナリオ等を紙媒体で頒布する際は有償で活動しております。

さて、今回アークナイツTRPGに関して

・生成AIをルールブックやシナリオ集の表紙・挿絵に使用していること
・生成AIをDiscordコミュニティーサーバーでユーザーが使用していること

上記2点に関するお問い合わせを多数いただきました。また、一部ユーザーから生成AIを利用することについて不安の声をいただいております。

そこで今回、アークナイツTRPGでAIを利用することに関して、制作としての考えを表明いたします。アークナイツTRPGでAIを利用することに関する制作としての考えと、今後の対応は以下の通りです。

  1. AIを利用することは基本的に好意的に捉えている

  2. 今後もアークナイツTRPGではシナリオやオペレーターの立ち絵をAIを利用していく

  3. しかし特定の個人や団体の経済的利益や名誉を損なう行為は看過できない

  4. 今後アークナイツTRPGで使用されている、あるいは使用される画像や絵に関して、著作権侵害など何かしらのトラブルがあった場合、下記メールアドレスまでお問い合わせください。使用した画像の削除等の対応を取らせていただきます。arknightstrpg.hikousiki@gmail.com

  5. AIの利用を理由とよる誹謗中傷はおやめ下さい。またAIに限らず誹謗中傷に対しては、場合により情報開示請求や損害賠償請求をはじめとする法的手段を取ります。

1・2・3に関しては、制作したdapto個人の考えをNoteにて
後述させていただきます。
また特に5に関しましては
、AIの利用に対する考えの賛成・反対を問わず、
決して他者に対して誹謗中傷は行わないよう重ねてお願い申し上げます。

2024年1月18日追記
現行法上アークナイツTRPGが著作権を侵害していない根拠について、
maru氏より意見を頂きました。ご本人より許可を頂き、対応方針の補遺としてmaru氏の意見を全文掲載しました

これらの方針は、アークナイツTRPGを制作したdaptoリタの考えであり、ユーザーにAIの使用を強制するものではありません。またこの方針は、他のゲームやコンテンツに強要するものでもありません。

なお、上記のアークナイツTRPGとしてのAI利用に関する考えと対応方針は、
2024年1月15日時点のものであり、今後方針が変わる可能性もあります。
あらかじめご了承ください。


補遺

以下、maru氏によるアークナイツTRPGにおける生成AIの利用と著作権侵害についての意見です。


『「アークナイツ」二次創作・ゲーム実況配信及び動画投稿に関するガイドライン』では以下の行為が禁止事項とされているため、AIによって表紙又は挿絵若しくは立ち絵を作成する行為がこれに該当するかについて付言しておく。

他者の権利を侵害する、または侵害のおそれがある内容

「アークナイツ」二次創作・ゲーム実況配信及び動画投稿に関するガイドライン 二次創作活動の禁止事項について

生成AIの利用に当たって生成物が著作権侵害となるかは、当該生成物が既存の特定の著作物について著作権侵害の要件を満たさなくてはならない。

なお生成AIと著作権の問題は①学習段階と②生成段階の2段階に分けて考えなくてはならず、そしてAIの学習段階における著作物の利用は著作権法30条の4により原則として認められている。

この点AIの学習段階で著作物を無断で利用することが認められていいのかという問題は当然存在するが、現行法上このような規定となっている以上は権利侵害又はそのおそれがあるかについても現行法上どう判断されるかで判断されなくてはならないため、ここでは学習段階での著作物の無断利用が是認されるかという問題は取り扱わない。

生成AIにより生成物を作成し、当該生成物を利用する段階において既存の著作物に係る著作権を侵害するかの判断について、文化庁は、従前の人間がAIを使わずに行う創作活動の際の著作権侵害の要件と同様に考える必要があるとの判断を示したため、これに従い検討する。

生成AIにより生成物を出力し、その生成物を利用する段階(以下、「生成・利用段階」という。)では、生成物の生成行為(著作権法における複製等)と、生成物のインターネットを介した送信などの利用行為(著作権法における複製、公衆送信等)について、既存の著作物の著作権侵害となる可能性があり、この場合においては、従前の人間がAIを使わずに行う創作活動の際の著作権侵害の要件と同様に考える必要がある。

AIと著作権に関する考え方について(素案)令和6年1月15日時点版(溶け込み)

著作権侵害の有無の判断は①依拠性、②類似性、③法定利用行為の3要件を満たすか、そして④権利制限規定の適用があるかによって判断する。この点①については文化庁の出した見解によれば生成AIを用いている場合、通常はこれを認めると考えられており、また③④についてはあまり問題とならないと思われるので割愛する。

②の類似性とは既存著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるか否かで判断するのが通説・判例である。類似性は単に画風が似ているといった表現ではない部分に共通する点があるからといって肯定されず、またいくつかの要素が似通っているからといっても肯定されず、全体として比較した場合に既存著作物の表現上の本質的特徴が直接感得できるかで判断される。

アークナイツTRPGではシナリオ集及びルールブックの表紙といくつかの挿絵に生成AIによって生成したイラストを用いている。いずれのイラストについても調べられる範囲ではあるが、その大部分が共通するイラストや明らかに学習元データをそのまま出力したと思われるイラストは発見できていないため、既存著作物に係る著作権侵害があるとは考えていない。

アークナイツの二次創作ガイドラインでは「侵害するおそれがある」場合も二次創作の禁止事項としている。一般的抽象的な可能性としてアークナイツTRPGが用いている生成イラストが他者の著作権を侵害するおそれがないと断言することはできない。

しかし著作権法は著作権の発生要件として特許権等と異なり登録を必要としておらず、著作物が創作された時点で自動的に著作権が発生するとしており、事実上ありとあらゆる著作物との間で著作権侵害がないかを調査することは不可能である。

著作権法の目的が著作権者の保護と共に著作物の利用を一定の範囲で認めることで文化の発展に寄与することにもある以上、このような一般的抽象的な著作権侵害のおそれがあるからといってすべて禁止されると解するのは、生成AIの使用の有無に関わらずおおよそ全ての二次創作を禁止することとなり妥当でない。

したがって、ここにいう「侵害するおそれがある」とは著作権侵害の高度の蓋然性がある場合に限定して解するべきであり、上述したようにそのような高度の蓋然性はなく、ガイドラインに違反していないと考える。




以下はdapto個人の考えです。

AIを利用することについて

私、daptoのAI利用に関する考えは、基本的には好意的に捉えています。
その理由は下記2点にまとめられます。

  • 絵や図形あるいは文章を扱うのが苦手な人でも、自分の好みや伝えたいと考えている表現を※ある程度のクオリティーで入手できる

  • 自分の頭の中にあるイメージや考えを他の誰かに伝える際のサポートとして使える

※ここでいう『ある程度のクオリティー』とは、 コンテンツの種類を問わず、
つぎはぎされたコラージュの域を出ないと考えています。

この1〜2年で民間でも利用できるレベルにまでAIが発展してきたことに私自身は喜んでいます。
TRPGに関しては、特に画像生成AIの出現により、遊ぶ上で高いハードルの1つとなっていた、キャラクターの立ち絵の準備や、シーン描写をわかりやすくするための画像や絵の準備にかける労力が減りました。

また、まだ臨床段階やエビデンスの獲得のレベルには至っていませんが、画像生成AIや文章生成AIを利用した、子どもたちの教育や発育発達はすでに行われています。
例えば下記URLは昨年7月、ユニセフが公開した子どもに生成AIを利用することのリスクと機会に関する記事があります。

https://www.unicef.org/globalinsight/media/3061/file

その他、大学においてもAIを介して論文の参考文献を収集することで、論文執筆に必要な労力を論文検索ではなく、事件や収集したデータの分析、論文そのものの執筆に割けるようにもなってきています。

AIも科学技術でありそれを活用しない手はない、このような意味で私は好意的に捉えています。

生成AIが持つ問題とそれに対する考え

一方で、特に生成AIが孕んでいる問題点も認識しています。
画像生成AIの例であれば、AIに喰われるという表現に代表されるように、AIが学習段階で使用した著作物利用の問題や、AIの利用段階で生じる著作権侵害の可能性は未だ解決されていないでしょう。
またNovelAIを始めとした文章生成AIの登場でシナリオライターでもAIの台頭を、海賊版の流布以上に著作権侵害の脅威だと捉える人もいます。

ただ、私個人の考えとしては生成AIの利用に関する問題は

  • AIを利用して特定のクリエイターの経済的利益が損なわれる場合

  • 特定の個人の名誉を著しく傷つける場合

このような害を与える行為を行った個人に対して、倫理的・法的な問題が問われるものだと考えています。

画像生成AIであれば、例えば特定の絵描きさんの画像のみで学習させたAIによる商売や、学習元の絵描きに対して著作権侵害を訴える行為。また、有名人や公人のヌード写真を始めとしたフェイク画像の流布などは明らかに問題です。これらの問題に対して警察をはじめとした行政機関が介入するラインが明確になっていく必要があると考えています。

また生成AIにまつわる諸問題は、あくまで生成AIを利用する一部の人が、著作権者に対し害意をもって利用していることで生じている問題であり、生成AIを利用している全ての人が問題を引き起こしているわけではありません。
一部の人による悪質な行為が、生成AIを利用している人全員が行っていると捉えることは妥当ではありません。同様に、生成AIを利用する全員が、善人であるわけでもありません。あくまで、生成AIを利用する個々によって生じる問題です。このことはAIの利用に賛同する人も、反対する人も理解すべきだと考えます。

AIを利用した活動について

その上で、AIを利用したクリエイティブな活動や、それによる金銭的な利益まで規制すべきだとは現状は思いません。その理由は冒頭に書いた好意的に捉えている2点のように、AIによって今まで表現できなかった人も他者に表現する手助けができるからです。

実際、アークナイツTRPGで遊ぶにはオリジナルのオペレーターを作る必要がありますが、立ち絵やシーン描写のための画像を用意するハードルは極めて高いです。それでもコミュニティーサーバーがここまで発展したのは、画像生成AIを利用することで誰でも頭の中にあるイメージを誰かと共有できるようになったからだと考えています。

TRPGは誰かと話すことで成り立つゲームのため、本来立ち絵もシーン描写の画像も必要ありません。しかし、絵が描ける人は立ち絵があって書けない人は何も用意できない環境は、絵が用意できない人にとって面白味は無くなります。そういったTRPGを遊ぶ敷居が下がったという意味でも、AIの利用を制限、規制すべきだとは思いません。

ただし、生成AIのみを用いた作品は、自分の考えを表現するためのサポートとして利用したクリエイティブな活動とは思えませんし、生成AIのみを用いた作品で金銭的な利益を得ようとするのはいかがなものかと思います。
自分の得意な表現方法で自分の頭の中を他者と共有できるものを作り、それでも他者に伝えるには不足しているものを補う手段の1つに生成AIがあると考えます。

また、AIを利用することでクリエイターに還元されない問題も指摘されています。このことに関しては、アークナイツTRPGにおける取り組みとしては、昨年12月まで頒布していたシナリオ集の収益は、Discordのコミュニティーサーバーにて、アークナイツTRPGで使用する背景画像やサンプルキャラクターなどをクリエイターに依頼していく予定です。
これはシナリオ集に寄稿したシナリオ制作者には事前に説明しており、今後サーバー内でどのような素材が欲しいか広く募集していく予定です。

最後に

私のAIに対する考えを改めてまとめます。

  • 自分以外の他者に何かを伝える際のサポートとして有効活用できる科学技術である

  • しかし生成AIに関しては法的、倫理的問題があることを認識している。

  • 特に特定の個人に対する著作権侵害や名誉毀損は看過できない問題

  • 生成AI“だけ“を利用した作品はどうかと思う。しかし生成AIをクリエイティブな活動に使ってはいけないまでとは思わない。

また、昨年12月に頒布したシナリオ集の利益は何かしらの形でクリエイターに依頼をかけて還元していく予定です。

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