鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ

「学者」が書いた本と言われれば、ちょっと身構えてしまう。
きっと世間一般では同じように思う人も多いと思います。

「学者」と言えばどういったイメージを持つでしょうか?
暗そう・パソコンカタカタしてそう・研究室に引きこもってそうなどといった研究室の主を想像するかもしれないし、フィールドワークをするんでしょといったシャバでの活動を挙げるかもしれない。どちらにせよちょっと世間様の生活とは乖離した、「変人」的なイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

この本が変人な学者の書いた活動報告書を超えて鳥を中心としたエッセイとして成り立っているのは、話の端々に出てくる極々一般的な感性、例えば英語が喋れなくてめっちゃ困るだとか、出張先でおやつのカールが売ってなくて困るだとかそういった世間と何ら変わらないスケールで話を展開して、学者の肩書に身構えた我々の警戒を解いたところで小笠原諸島のヒヨドリの話を始め最後には島中のカールを食べつくしたことを懺悔したり、赤い鳥の話が出れば次の行で赤い彗星の話を持ち出しザクやズゴックについて語り始める、そういった身近なユーモラスさがなせる技だといえます。

文庫本の背面概要には「生き物を愛する人にも、そうでない人にも、絶対に楽しめる、汗と笑いの自然科学エッセイ」とありますが、この本は楽しんだだけでは終われません。読めばきっと空を見上げたくなるし、飛ぶ鳥の行く末を知りたくなる、読んだ後も楽しめる一冊です。


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